ライラックが散るまで:2
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「お!金田一君!久しぶり。元気だったか?」
「お~!元気元気!この通り!」
「警視庁」と書かれた、一般人はよほどの用事が無ければ入らないであろう建物に物怖じせず入る金田一。入り口で出会った男性以外にも金田一の顔を見て挨拶する人が多く、彼が如何にこの場所に来慣れているのかがわかる。
後ろについていく美雪も金田一ほどリラックスはしていないが、慣れたような様子だ。一般人である春葉にとってここは、警察官という少し怖いような職業の人間の巣窟だ。こんなところまでただ「ペンを返しにきた」ことがとても恥ずかしいことに思えて仕方なかったが、今更戻ることはできないし、不安を口にすることも出来ない。クラスメイト2人の背中がただ頼りだった。
金田一は案内など無くとも、廊下をずんずんと進んでいく。
ある部屋の扉の前で金田一が立ち止まり、扉をノックする。中にいるのは明智かと思い、いつまでたっても準備ができていない心に多量の汗が流れだす。しかし、どうやら部屋の中から聞こえた声は記憶の中の声よりも随分年のいった男性のようだった。それでも中には明智がいるかもしれないという思いで覚悟を決める。
いないよりはいたほうがいいのだ。その為にここまで来たのだから。
徐々に広がる扉の奥の景色は何とも心臓に悪く、指先が微かに震えている。嬉しいはずなのに、自分から来ているはずなのに。矛盾した思いが気持ち悪い。
「よ~おっさん。」
「お~金田一!悪かったな!急に呼び出して…。」
仕事場…というよりは応接室に近いような部屋。壁際の本棚は資料なども目立つが、来客用のような大きめのテーブルセットが置いてある。
中に居たのは中年の男性一人だけだった。
「なんだなんだ。今日は可愛い女の子を2人も連れて歩いて。お前も意外に隅に置けないんだなぁ。」
「美雪は今更そんなこと言うような女子じゃないだろ。こっちも俺目当てじゃないし。」
ぶすっとした声で答える金田一。彼の発言は遠慮がなく、直球であるが故に冷や冷やさせられる。
「確かに初めて見る顔だなぁ。不動高校の制服…金田一たちの同級生か?」
中年の男性が座っていた椅子から立ち上がり、金田一や美雪の陰に隠れていた春葉の前へと来る。不躾な視線に思わず一歩後ろへ下がってしまうが、悪い人間ではないだろうと信じて向き直った。
しっかりと男性の目を見て、丁寧に腰を折る。たっぷりと時間をかけて礼をすると、目の前の男性も目を見張りこちらを見ている。大袈裟な動きに見えるからだろう。しかし、言葉というコミュケーションツールを持たない春葉には所作とは蔑ろにできない。大袈裟に振る舞うくらいが丁度良いのだと思っていた。
春葉はゆっくりと顔をあげると、ポケットから取り出したメモ帳に自分のペンでさらさらと文字を書いた。
『佐倉春葉と言います。金田一君と美雪ちゃんのクラスメイトです。』
「ん?」
「春葉ちゃんは声が出ないんです。でも耳は聞こえますよ。」
「お、おぅ…そうなのか…。」
普通の高校生だと思っていた男性には驚きだったのだろう。今度は遠慮がちに春葉のことを見ると、こほんとひとつ咳払いをした。
「そ、そうだったのか…。お、俺は剣持って言うんだ。金田一には色々と世話になっててな。勿論七瀬くんにも。」
恐らく二周り以上も年が離れているであろう春葉に対して、剣持は粗野な態度はとらなかった。口端をあげてにこやかに挨拶され、春葉の中にあった緊張も溶けた。
「お!金田一君!久しぶり。元気だったか?」
「お~!元気元気!この通り!」
「警視庁」と書かれた、一般人はよほどの用事が無ければ入らないであろう建物に物怖じせず入る金田一。入り口で出会った男性以外にも金田一の顔を見て挨拶する人が多く、彼が如何にこの場所に来慣れているのかがわかる。
後ろについていく美雪も金田一ほどリラックスはしていないが、慣れたような様子だ。一般人である春葉にとってここは、警察官という少し怖いような職業の人間の巣窟だ。こんなところまでただ「ペンを返しにきた」ことがとても恥ずかしいことに思えて仕方なかったが、今更戻ることはできないし、不安を口にすることも出来ない。クラスメイト2人の背中がただ頼りだった。
金田一は案内など無くとも、廊下をずんずんと進んでいく。
ある部屋の扉の前で金田一が立ち止まり、扉をノックする。中にいるのは明智かと思い、いつまでたっても準備ができていない心に多量の汗が流れだす。しかし、どうやら部屋の中から聞こえた声は記憶の中の声よりも随分年のいった男性のようだった。それでも中には明智がいるかもしれないという思いで覚悟を決める。
いないよりはいたほうがいいのだ。その為にここまで来たのだから。
徐々に広がる扉の奥の景色は何とも心臓に悪く、指先が微かに震えている。嬉しいはずなのに、自分から来ているはずなのに。矛盾した思いが気持ち悪い。
「よ~おっさん。」
「お~金田一!悪かったな!急に呼び出して…。」
仕事場…というよりは応接室に近いような部屋。壁際の本棚は資料なども目立つが、来客用のような大きめのテーブルセットが置いてある。
中に居たのは中年の男性一人だけだった。
「なんだなんだ。今日は可愛い女の子を2人も連れて歩いて。お前も意外に隅に置けないんだなぁ。」
「美雪は今更そんなこと言うような女子じゃないだろ。こっちも俺目当てじゃないし。」
ぶすっとした声で答える金田一。彼の発言は遠慮がなく、直球であるが故に冷や冷やさせられる。
「確かに初めて見る顔だなぁ。不動高校の制服…金田一たちの同級生か?」
中年の男性が座っていた椅子から立ち上がり、金田一や美雪の陰に隠れていた春葉の前へと来る。不躾な視線に思わず一歩後ろへ下がってしまうが、悪い人間ではないだろうと信じて向き直った。
しっかりと男性の目を見て、丁寧に腰を折る。たっぷりと時間をかけて礼をすると、目の前の男性も目を見張りこちらを見ている。大袈裟な動きに見えるからだろう。しかし、言葉というコミュケーションツールを持たない春葉には所作とは蔑ろにできない。大袈裟に振る舞うくらいが丁度良いのだと思っていた。
春葉はゆっくりと顔をあげると、ポケットから取り出したメモ帳に自分のペンでさらさらと文字を書いた。
『佐倉春葉と言います。金田一君と美雪ちゃんのクラスメイトです。』
「ん?」
「春葉ちゃんは声が出ないんです。でも耳は聞こえますよ。」
「お、おぅ…そうなのか…。」
普通の高校生だと思っていた男性には驚きだったのだろう。今度は遠慮がちに春葉のことを見ると、こほんとひとつ咳払いをした。
「そ、そうだったのか…。お、俺は剣持って言うんだ。金田一には色々と世話になっててな。勿論七瀬くんにも。」
恐らく二周り以上も年が離れているであろう春葉に対して、剣持は粗野な態度はとらなかった。口端をあげてにこやかに挨拶され、春葉の中にあった緊張も溶けた。