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いかにも応接室といったテーブルを挟んで向かい合わせに置かれた革張りのソファ
奥には書斎用机、そして頑丈そうな鍵のついた金庫まである
ここ学校内…ていうか寮内なんだよね?
モストロ・ラウンジを経営しているからなんだろうか
守る程の金目の物が一切ないオンボロ寮の住人からしたら金庫があることに驚いてしまう
「さて立ち話もなんですから、どうぞ座ってください」
『失礼します』
ソファに腰掛けると、コンコンッー
ノックの後ドアが開きフロイド先輩が顔を出した
「アズール、お客様~」
「どうぞどうぞ、こちらに」
入ってきたのは他寮の生徒だ
制服からしてサバナクロー寮の生徒と思われる
寮長は甲斐甲斐しく反対のソファへ案内した
『あの、私席を外した方が…』
「いえ、貴女に見て頂きたいのです。
すみませんがご理解頂けますか?」
「ああ…」
他寮生はどこかソワソワしている
私に見て欲しいものって…?
これから何が始まるんだろう
「確認しますが…貴方が欲しいのは"魔法薬学の追試で絶対合格できる僕の作ったこの対策ノート"ですね」
「そうだ」
追試…?
「代わりに貴方が僕に差し出すのは"貴方のユニーク魔法、風を起こす能力"…間違いないですか?」
「ああ、だがその後モストロ・ラウンジで2週間問題なくタダ働きすれば能力は返してくれるんだよな」
「勿論ですとも!ではご納得頂けたならこの契約書にサインを」
「…分かった」
な、何…?
なんだか危ない取引のようなものを見せられてる気がするんだけど
他寮生がアズール寮長の出した金色に輝く契約書と呼ばれた紙にサインをすると、パァッ…と一瞬辺りが光った
「これで契約完了です。どうぞ、こちらがご所望のノートです」
「……」
他寮生はノートを受け取ると無言で部屋を出て行った
『……』
「先程の話ですが、如何でしょう?」
パッと笑顔で振り返って問われる
『え!?えーっと…』
如何でしょうと言われても…
アズール寮長が私に向かって掌を向ける
『?』
瞬間、ぶわっーーと
寮長の掌から強風が巻き起こり、浅く腰かけていたソファに背が付く
『!! これ、もしかしてさっきの…』
「ええ、ご覧頂いたように契約を交わせばどんな能力も与える事が出来るのが僕のユニーク魔法でして
これは先程の彼から頂いた能力です」
頂いた…?
さっきの話だとあの人に返す能力なんだよね
「普段は契約時に第三者を立ち会わせることなどしないのですが…ユウさんは魔法が使えないとお聞きしたものですから、こうでもしないと信じて貰えない可能性があるかと」
確かにこんなの言葉だけだったら信じられなかったかも
魔法にも色んな種類があるんだ
「ジェイドから貴女を好きだと報告を受けました」
『!』
報告って…
なんだか寮長の言葉の端々が気になる
「誰を好きになろうとジェイドの自由ですが、最近のジェイドは少しぼんやりすることが増えまして」
『…そうですか?』
そんな風には見えないけど…
「彼は元から私の要求以上のことをこなします、ぼんやりしていても通常の人間より何倍も優秀です…しかし」
一拍置いてアズール寮長はこちらを見た
「それじゃ困るんですよ、気分屋のフロイドで既に手を焼いているのに」
『あの、何のお話でしょうか…』
「貴女にジェイドから手を引いて頂きたいのです」
『!』
「貴女が望むならそうですね…見た目を男らしくすることも、声をもっと低くすることも、身体を男性に変えてしまうことだって私なら出来ます!」
『ええっ!?』
望むかどうかはさておき…そんな事ができるの…?
魔法のことはよく分からないけどそんな強力そうな魔法を使えるなんてこの人一体…
でも…
『お断りします』
「……なんですって?」
『ジェイド先輩のことまだ好きなのか自分でもよく分かりません
でも告白してくれて、真剣に話をしたら理解してくれました…そんなジェイド先輩の気持ちを無視した事出来ません』
「…男のようになる以外にも美しい歌声とか、貴女にはない魔法能力を授けることだって出来るのですよ」
『別に要りません!
凄い魔法が使えなくたってオンボロ寮の何もない庭でたまにジェイド先輩とお茶出来る方が嬉しいです」
ざわざわとドアの外が騒がしい
「ジェイドさん!今は誰も入らないようにと…」
寮生が制止する声が聞こえたかと思うとガンッー
とドアが蹴破られた
『ジェイド先輩!?』
「アズール!カウンターに居ないと思ったら…まさか」
見たことのない険しい顔で寮長を睨みつけている
「ハァ…してませんよ、お手上げです」
寮長は書斎の椅子にドンッと持たれ掛かり両手を広げて上げ潔白を示した
「…何かにサインしましたか!?」
それでもジェイド先輩は寮長の言葉を疑い私に駆け寄った
『し、してません』
「はぁ…」
ジェイド先輩は心底安心したように深く息を吐いた
ざわざわとオクタヴィネル寮生達はVIPルームの入口付近で中の様子を伺っていた
「…何をしているんです、ドアの修復を行う業者を呼んでさっさと仕事に戻りなさい」
「は、はい!」
「はい寮長!」
「…アズール」
ギロリと再び鋭い目付きで先輩は寮長を睨み付けた
「勝手ながら試させて頂きました」
「本当に身勝手ですね」
「彼女にその気が無いのなら早い内に手を打った方が貴方の為だと思ったんですよ」
「私をこき使うのは構いませんが…彼女に手出ししようと言うなら例えアズールでも手加減しませんよ」
「そう怒らずとも良いでしょう、彼女は貴方の気持ちを無視出来ないと…
どんな能力より貴方とお茶する時間の方が大事だとこの私に啖呵を切りましたよ」
「ユウさん…」
『あっその…ええっと…』
えっちょっと…
それ本人の前で言う!?
ボボボッと顔が赤くなる
『分からない事だらけの世界での…私の楽しみなので…』
恥ずかしさで目が泳ぎながらもそう言うと、
ぎゅっー
と力強くジェイド先輩に抱き締められた
「ユウさん…好きです」
『じぇ、ジェイド先輩……!』
「ジェイド!せめてドアが直ってからにしなさい!!」
そう言いながら寮長はジェイド先輩に蹴破られたドアの部分に立って中が見えないようにしていた
奥には書斎用机、そして頑丈そうな鍵のついた金庫まである
ここ学校内…ていうか寮内なんだよね?
モストロ・ラウンジを経営しているからなんだろうか
守る程の金目の物が一切ないオンボロ寮の住人からしたら金庫があることに驚いてしまう
「さて立ち話もなんですから、どうぞ座ってください」
『失礼します』
ソファに腰掛けると、コンコンッー
ノックの後ドアが開きフロイド先輩が顔を出した
「アズール、お客様~」
「どうぞどうぞ、こちらに」
入ってきたのは他寮の生徒だ
制服からしてサバナクロー寮の生徒と思われる
寮長は甲斐甲斐しく反対のソファへ案内した
『あの、私席を外した方が…』
「いえ、貴女に見て頂きたいのです。
すみませんがご理解頂けますか?」
「ああ…」
他寮生はどこかソワソワしている
私に見て欲しいものって…?
これから何が始まるんだろう
「確認しますが…貴方が欲しいのは"魔法薬学の追試で絶対合格できる僕の作ったこの対策ノート"ですね」
「そうだ」
追試…?
「代わりに貴方が僕に差し出すのは"貴方のユニーク魔法、風を起こす能力"…間違いないですか?」
「ああ、だがその後モストロ・ラウンジで2週間問題なくタダ働きすれば能力は返してくれるんだよな」
「勿論ですとも!ではご納得頂けたならこの契約書にサインを」
「…分かった」
な、何…?
なんだか危ない取引のようなものを見せられてる気がするんだけど
他寮生がアズール寮長の出した金色に輝く契約書と呼ばれた紙にサインをすると、パァッ…と一瞬辺りが光った
「これで契約完了です。どうぞ、こちらがご所望のノートです」
「……」
他寮生はノートを受け取ると無言で部屋を出て行った
『……』
「先程の話ですが、如何でしょう?」
パッと笑顔で振り返って問われる
『え!?えーっと…』
如何でしょうと言われても…
アズール寮長が私に向かって掌を向ける
『?』
瞬間、ぶわっーーと
寮長の掌から強風が巻き起こり、浅く腰かけていたソファに背が付く
『!! これ、もしかしてさっきの…』
「ええ、ご覧頂いたように契約を交わせばどんな能力も与える事が出来るのが僕のユニーク魔法でして
これは先程の彼から頂いた能力です」
頂いた…?
さっきの話だとあの人に返す能力なんだよね
「普段は契約時に第三者を立ち会わせることなどしないのですが…ユウさんは魔法が使えないとお聞きしたものですから、こうでもしないと信じて貰えない可能性があるかと」
確かにこんなの言葉だけだったら信じられなかったかも
魔法にも色んな種類があるんだ
「ジェイドから貴女を好きだと報告を受けました」
『!』
報告って…
なんだか寮長の言葉の端々が気になる
「誰を好きになろうとジェイドの自由ですが、最近のジェイドは少しぼんやりすることが増えまして」
『…そうですか?』
そんな風には見えないけど…
「彼は元から私の要求以上のことをこなします、ぼんやりしていても通常の人間より何倍も優秀です…しかし」
一拍置いてアズール寮長はこちらを見た
「それじゃ困るんですよ、気分屋のフロイドで既に手を焼いているのに」
『あの、何のお話でしょうか…』
「貴女にジェイドから手を引いて頂きたいのです」
『!』
「貴女が望むならそうですね…見た目を男らしくすることも、声をもっと低くすることも、身体を男性に変えてしまうことだって私なら出来ます!」
『ええっ!?』
望むかどうかはさておき…そんな事ができるの…?
魔法のことはよく分からないけどそんな強力そうな魔法を使えるなんてこの人一体…
でも…
『お断りします』
「……なんですって?」
『ジェイド先輩のことまだ好きなのか自分でもよく分かりません
でも告白してくれて、真剣に話をしたら理解してくれました…そんなジェイド先輩の気持ちを無視した事出来ません』
「…男のようになる以外にも美しい歌声とか、貴女にはない魔法能力を授けることだって出来るのですよ」
『別に要りません!
凄い魔法が使えなくたってオンボロ寮の何もない庭でたまにジェイド先輩とお茶出来る方が嬉しいです」
ざわざわとドアの外が騒がしい
「ジェイドさん!今は誰も入らないようにと…」
寮生が制止する声が聞こえたかと思うとガンッー
とドアが蹴破られた
『ジェイド先輩!?』
「アズール!カウンターに居ないと思ったら…まさか」
見たことのない険しい顔で寮長を睨みつけている
「ハァ…してませんよ、お手上げです」
寮長は書斎の椅子にドンッと持たれ掛かり両手を広げて上げ潔白を示した
「…何かにサインしましたか!?」
それでもジェイド先輩は寮長の言葉を疑い私に駆け寄った
『し、してません』
「はぁ…」
ジェイド先輩は心底安心したように深く息を吐いた
ざわざわとオクタヴィネル寮生達はVIPルームの入口付近で中の様子を伺っていた
「…何をしているんです、ドアの修復を行う業者を呼んでさっさと仕事に戻りなさい」
「は、はい!」
「はい寮長!」
「…アズール」
ギロリと再び鋭い目付きで先輩は寮長を睨み付けた
「勝手ながら試させて頂きました」
「本当に身勝手ですね」
「彼女にその気が無いのなら早い内に手を打った方が貴方の為だと思ったんですよ」
「私をこき使うのは構いませんが…彼女に手出ししようと言うなら例えアズールでも手加減しませんよ」
「そう怒らずとも良いでしょう、彼女は貴方の気持ちを無視出来ないと…
どんな能力より貴方とお茶する時間の方が大事だとこの私に啖呵を切りましたよ」
「ユウさん…」
『あっその…ええっと…』
えっちょっと…
それ本人の前で言う!?
ボボボッと顔が赤くなる
『分からない事だらけの世界での…私の楽しみなので…』
恥ずかしさで目が泳ぎながらもそう言うと、
ぎゅっー
と力強くジェイド先輩に抱き締められた
「ユウさん…好きです」
『じぇ、ジェイド先輩……!』
「ジェイド!せめてドアが直ってからにしなさい!!」
そう言いながら寮長はジェイド先輩に蹴破られたドアの部分に立って中が見えないようにしていた