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ラギー先輩の話だと、レオナ寮長は以前から授業をサボりがちだったのが最近は殆ど教室に顔を出さなくなっているらしい
寮長は授業をサボると何処かで昼寝をしている事が多く、その場所はまちまちで探すのに毎度苦労するッス…とのことだった
私が心当たりあるのなんて植物園くらいだけど…
『あ…』
緑が生い茂った中にゴロリと寝転がっている人がいる
きっとレオナ寮長だ
どうしよう、緊張する…
遠巻きにレオナ寮長の寝転がった背中を見ながら呼吸を整えていると、寮長の耳がぴくッと動いた
「何しに来た」
『…!』
こちらを見ずに発した言葉はどこか冷たい
『あの、こないだは言い過ぎました。ごめんなさい』
「…ハッ、人間てのはな怒った時に素が出るんだ
アレがお前の本心だろ?どうせラギーあたりにお願いされて来たんだろうが余計な事すんな」
『あれは売り言葉に買い言葉っていうか…腹が立って咄嗟に口から出ちゃっただけで』
「だからそれがお前の本心てことだろ」
『違いますってば!私はただ無理やりキスされてレオナ寮長が悪びれない様子だったのが許せなかっただけで…!!』
「あー分かった分かった…俺が悪いって言いてぇんだろ」
『そんなこと言ってません!いや、キスに関してはそうだけど…』
「もういいだろ、放っとけ」
ムッカァ…とまた胃が熱くなってきた
ずかずかと寮長が寝転がっている芝まで土足で踏み込んで行く
『いい加減にしてください!』
バコッーー
思いっきり頭を平手打ちした
「痛ぇ!てめぇ…っ!」
『怒った時が素だって言うなら!レオナ寮長は今、一方的に決めつけて話も聞かない拗ねたガキで!
それが貴方の素だってことですよ!?』
「なんだと…!?」
『ラギー先輩に聞きました!お兄さんと比べられたり努力しても認めて貰えない環境だったって』
「あの野郎…余計な事をペラペラと」
『余計じゃないです!本当にどうでも良かったらラギー先輩だって心配しません。荒れてようが放っておきますよ
わざわざ私の所に来て仲直りして欲しいってお願いしませんよ
私だって…レオナ寮長のことどうでも良かったらわざわざ探して謝りに来ません!』
「…!」
『過去にどんな辛いことがあったのか詳しくは知りません
でもレオナ寮長にちゃんと向き合ってる人を勝手に決めつけて背を向けないでください』
「……お前、ほんとにお節介だな」
『はい』
寮長はバツが悪そうに頭を掻いて顔を逸らした
話を聞いてくれた寮長にホッとしてなんだか笑みが溢れる
私はゆっくり寮長の横に腰を下ろす
『レオナ寮長のことよく知りもしないでジェイド先輩と比べるようなこと言ってごめんなさい』
「…もう気にしてねぇよ」
『ねぇ、寮長…』
「寮長寮長って…俺はお前の寮長じゃねぇだろ」
『あ、確かにそうですね…じゃあレオナさん』
「レオナでいい」
『えっ!?でも…呼び捨ては…』
「俺がいいって言ってんだ、なんか文句あんのか」
『ふふ…いえ、ないですよ』
「何笑ってやがる」
寮長の腕が伸びてきて頭をぐしゃっと乱された
『いつものレオナりょ…』
「……」
『いつものレオナだなと思って』
「フンッ…」
『あっそうだ!レオナも謝って下さいよ!!』
「あ?何の事だ」
『しらばっくれる気ですか!?』
「まぁ…無理矢理奪ったのは悪かった」
『なんだ、言えるじゃないですか』
「馬鹿にしてんのか」
『馬鹿にはしてませんけど、あんまりありがとうとかごめんなさいを言わない人だなって思ってます。
ラギー先輩も心配してたから謝った方がいいですよ』
「…あぁ!?なんで俺が」
『ほら!言えないんだ』
「言えないんじゃねぇ、言わないんだ」
『屁理屈ばっかり…じゃあちゃんと謝れたらまた膝枕してあげますよ』
「草食動物のくせに交換条件なんか出しやがって」
『私基本的な挨拶が出来ない人って嫌いなんで、しないって言うならレオナとは友達になれません…』
「は?」
『えっ……え!?私と友達になるの嫌ですか!?』
「嫌に決まってんだろ」
『えええ…そんな面と向かって言われると流石にショック…』
ようやくちょっと打ち解けたと思ってたのに
そんなハッキリ嫌だと言われるなんて思わなかった…
「"友達"かよ…」
『?…なんか言いました?』
「チッ…なんも言ってねぇよ!」
『もう、すぐ怒る…』
「…なぁ、お前が怒ったのは初めてだったからか?それとも相手が俺だったからか」
『えっ』
突然何…
どういう意味…?
「言い方を変える、お前アイツが好きだから俺にキスされて怒ったのか」
『アイツってジェイド先輩のこと言ってます…?』
「他に誰がいんだよ。…お前はアイツが好きなのか」
翡翠色の瞳がジッ…と私の目を真っすぐ見つめる
私はこの目に弱い
『えっ…?ええと、恋愛の好き…かどうかは前も言ったけど私まだそういうのよく分からなくて…さておき…
でも凄く優しくしてくれて良い人だなって思ってます』
「ハァ…そんなもんお前に気があるから優しくしてるだけだろ」
『そ、そう言われても…やっぱり優しくされて嬉しくない人は居ないと思います』
「なら…」
レオナ寮長の褐色の大きな掌が私の頬から耳へかけてゆっくり優しく伸びてきて、髪の間へ入っていく
指で髪を梳いてまた頬へと手が戻ってきた時
寮長の顔が吐息が当たるほど近づいていた
「俺が優しくしたら、お前はどう思う?」
『えっ……』
フッ…と笑ってレオナが離れた
「キスされると思ったか?」
『……っ!……は……はい』
「ククッ…お前のそういう馬鹿正直なとこ嫌いじゃねぇな」
『褒めてます?』
「…して欲しかったか?」
『え!?』
「冗談だ」
そう言って珍しく穏やかに笑いながら立ち上がるレオナを目で追いながらも
私はなんだか心臓が変にバクバクと鼓動していて座り込んだまま暫く立てなかった