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先輩達とのお茶会を終えオンボロ寮へ戻ろうと歩いていた帰路の途中
メインストリートに小さな男の子がキョロキョロと辺りを見渡しながら歩いているのが目に入った
こ、子ども…?
まさかナイトレイブンカレッジの生徒では無いよね
『今日は』
「! …こ、こんにちは」
声を掛けるとビクッと驚かせてしまったようだが、おどおどしながらも返事を返してくれた
『お名前は?』
「チェカ」
『チェカくん、良い名前だね!
お父さんやお母さんは?』
「おうちにいる」
お家に…
じゃあ1人でここに来たって事?
迷子になったのかな
『えっと…ここにお兄ちゃんが居るのかな?』
「おじたんがいる!おじたんに会いに来たの」
おじたん…?
叔父さんって事かな…もしかして誰か先生の甥っ子さんなのかなぁ
『そっか、その叔父さんの名前わかる?』
「レオナおじたん」
『れっ!?』
レオナ寮長の甥っ子!!?
えええ、あの人あの若さでもう叔父さんなんだ…
てっきり先生かと思ったけど
そういえばあの人王族なんだっけ
確かに王族なら結婚とかも早そうなイメージだな…
てことは、この子もしかしたら王子!?
「お姉ちゃん…?」
ああ、いけない!
びっくりしすぎて一人で百面相しちゃった
とにかく案内してあげなきゃ
『あ、ごめんね。レオナ寮長なら知ってるから連れて行ってあげるね』
「本当!?ありがとうお姉ちゃん!」
先程まで警戒されてかビクビクしてたけど、
ぱぁっと晴れた笑顔
ああ、可愛い~~~…!
チェカくんと手を繋いで2度目になるサバナクロー寮にやってきた
レオナ寮長の自室は確かこっちだよね
ラギー先輩の背中を全速力で追いかけた道を進んでいった
部屋に着くと、ベッドの上で寛いでいる寮長を見てチェカくんが大声で駆け寄った
「おじたーーーん!!!」
がばっと抱きつかれた瞬間にみぞおちにチェカくんの足が入ったのか、ウッと小さく声を上げながら驚き倒れ込んだ
「チェカ!?」
『メインストリートで迷子になってたので連れてきてあげましたよ、お・じ・た・ん♡』
「ユウ!?てめぇ、おじたんって呼ぶな!」
『ぷふーーっ!!いやぁまさかレオナおじたんにこんなに可愛い甥っ子さんが居るなんて知りませんでしたよ』
「てめぇ…」
「おじたんおじたん!!会いたかった!
ねぇねぇ!何して遊ぶ!?」
「チェカ、お前また勝手に1人で抜け出してきたな」
「だっておじたん全然帰って来ないから」
「冬休みには帰るって言ったろーが」
「だってだって!いっつもそう言って帰って来ない!」
「あー耳元でキャンキャンうるせぇな」
『凄い懐かれてますね』
正直意外だ
子ども好きには見えないし、実際子どもだからと普段より優しく接してあげてるわけでもなくいつも通りのレオナ寮長だ
「嬉しくねぇよ」
『じゃあ、送り届けたので私そろそろ…』
自分の寮に戻ろうとした瞬間、太ももをぎゅっと何かに掴まれた
「お姉ちゃんも一緒に遊ぼ!」
見るとチェカくんが私の太ももに抱き着いている
『か…可愛い~~~!!こんなに可愛い子がほんとにおじたんの甥っ子ですか』
「次言ったら覚えとけよ」
『怖いっ!そんな愛想無いのになんでこんな懐かれてるんですか…
いいよ~!一緒に遊ぼっか!』
「やったー!」
はぁ…面倒臭ぇ、と溜息を吐きながら遊んであげようとはしてる
なんだかんだ面倒見いいのかな
「ねぇねぇ、お姉ちゃんのお名前は?」
『あっそっか…言ってなかったね!ユウだよ』
「ユウお姉ちゃんはおじたんのお嫁さん」
『ええっ!?』
「ㇵッ、誰がこんな鈍くさい奴。百歩譲って家来なら考えてやってもいいが」
『くぁ~~腹立つ!私だってこんな威張り散らしてる乱暴者お断りですよ!』
「へぇ、言うじゃねぇか」
「やだ!お姉ちゃんがお嫁さん役!」
え…役?
「おじたんがお婿さん役でぇ、僕が2人の赤ちゃんね!」
え…えええっ
ごっこ遊びの役決めだったの!?
勘違いして恥ずかしい!
″おじたんのお嫁さんなの?″って聞かれたのかと思ってしまった…
「またごっこ遊びかよ」
き、気付かれてない
良かった…
今絶対顔真っ赤だ
「フッ…何顔赤くしてんだよ」
『! し、してませんよ!!』
嘘、やだ!
バレてた…!!
からかうように私の顔を覗き込んで来る
ち、近い…!
「俺様のお嫁さんになりたいってか?」
『だ、誰が…!』
褐色の肌に映える綺麗な瞳で見つめられてますます顔が紅潮していくのが分かる
「ちゅー?」
『! ちぇ、チェカくん!?』
「僕のパパとママもいつもしてるよ!おじたんとお姉ちゃんも行ってらっしゃいのちゅーする?」
こ、子どもの純粋さって怖い!
レオナ寮長は私をからかって顔が近いだけで…ごっこ遊びでキスするなんてそんな…!!
「……」
レオナ寮長をチラッと見ると、からかうような笑みを浮かべているかと思いきやいつになく真剣な目をしていた
えーーー?
「いいぜ」
『えっ…』
チュッ
唇が重なったかと思うと、
後頭部と腰を大きな掌でグッと持たれ引き寄せられる
口の中に何か動く熱い物が入ってきて、自分の舌に絡められた瞬間
レオナ寮長の舌だと理解した
『な…んんっ…!!んーっ!』
振り解こうと踠いてみるが力が強くてびくともしない
い…息が出来ない…!
「わっ…おじたんのえっち!」
ぷはっーー
はぁはぁ…と肩で息を取り込む
な、何…?
なんで突然…
何が起きたの?
「どうだ?」
『…!』
ニヤリと楽し気に笑うレオナ寮長にお腹の底が熱くなる程何かが込み上げてきた
バシッー
気付いたら身体が勝手に動いて寮長の頬を引っ叩いていた
『何するんですか!!』
「…はぁ?たかがキスくらいでそんな怒るなよ
お前だって初めてってわけじゃないだろ」
『……』
「……マジかよ」
『は、初めてでしたけど何か!!
酷すぎます…貴方みたいな傲慢でキスしまくりの人には分からないんでしょうけどねぇ!女の子にとって初キスはロマンチックな感じで好きな人と…みたいな憧れがあったりするんですからね!
それを…何が"どうだ"だ!!この馬鹿ライオン!!!』
近くに転がってるクッションを拾い上げて、バシバシと力の限り寮長に叩きつける
「うるせぇな…じゃあお前、俺の女にしてやるよ」
『な、な、何言ってんですかー!!』
今度は顔面向かってクッションを思いっきり叩きつける
「…っ!痛ってぇな!」
『俺の奴隷になれって言ったり、女になれって言ったり!本当何考えてるんですか!』
「奴隷は取消だ、傍に置いてやるよ」
『〜〜何様ですか!!御生憎ですけど私は傍に置いて欲しいと思ってませんので!』
「この俺の女になるのが何が不服だ」
こ、この人…!
マジで言ってる
そりゃこの見た目に強さに王族らしいし噂じゃ勉強も実技も難なくこなすらしいから…それはもうおモテになるんでしょうけど!!
は、腹立つ…!!!
『傲慢で乱暴で自分勝手な寮長と付き合うくらいなら!
優しくて礼儀正しくて私の好きな物とか把握してエスコートまでしてくれるジェイド先輩と付き合います!』
「! この俺がオクタヴィネルのウツボより劣るって言いてぇのか…」
『ええ!ジェイド先輩と比べたら…』
「もういい、出ていけ」
言いかけた途中で遮られ、寮長を見ると急に静かになっていた
でも何処か怒ってるような怖い雰囲気
な、何…?
なんでそっちが怒ってるの
怒りたいのはこっちなのに
「早く行け!」
『……失礼します』
「おじたん…お姉ちゃん行っちゃったよ?」
「…ああ」
「喧嘩してもいいけど仲直りしないとダメなんだよ」
「うるせぇな…」
「チェカ様ーーーー!!!
やはりこちらにいらしてたのですね!王が心配しております、帰りましょう!」
「やだーーー!!おじたーーん!!!」
チェカはレオナにぐっと掴むが、従者に引っぺがされる
「はぁ、やっと来たか…」
「おじたん…お姉ちゃんと仲直りしてね
あと冬休み絶対帰って来てね!」
「おい、早く連れてけ」
「はっ、失礼します」
「おじたん約束だよー!!」
騒がしかった部屋が一瞬で静かになった
はぁ…と一つ溜息を吐いて足元を見ると先程叩きつけられたクッションが落ちている
先程言われた言葉を思い出し怒りがこみ上げてきて拾い上げたクッションをズタズタに引きちぎった
「レオナさーん、今従者の人とすれ違ったんスけど…
レオナさん?」
振り返ったレオナはこれまで見た事が無いくらい怒りを露わに佇んでいた