『パイロットォ？むりむり！俺すぐ酔っちゃうから』



『アトラ可愛くね？好き』



『うがああ！読み書き難しい！』



『戦場には行かず裏方でいいわーモブモブ』

















「三日月は帰んないと」



乗り物酔いがひどかったはずの、その声が聞こえた。

確実に俺のコックピットを狙ってたランスの一撃。
それは突然現れたエイハブウェーブと横からの衝撃で間一髪避ける。


すぐに体当りしてきたMSを確認すれば格納庫にまだ残っていたそれだった。
敵のランスによって、それの左腕は大きく破壊され、肘から先がなくなっていた。


すぐに振り下ろされる次の攻撃。
それは俺が立ち上がるよりも早く振り下ろされ、コックピットを飲み終わったペットボトルを潰すように、ぐしゃり、と潰した。


敵が俺の方へ振り向く、あっけなく終わってしまった仲間を、大切な仲間を、目の前に、心にぽっかり穴が空いてしまったようで動けない。
敵のランスが振り下ろされる。
立ち上がらないと、俺たちはまだ、



刹那。



目の前にいたMSが消え去る。
それに続いて轟音。
音源に目を向ければ、コックピットが潰された中でなお動く大切な仲間、薫のMSがいた。
ああ、薫も阿頼耶識付けてたななんて頭の片隅で思い出す。


敵を押し倒すような形で地面に押し付けた薫は的確にコックピットを潰す。
その瞬間、敵MSから光が消えた。


それを確認したあと、役目は終えたとばかりにのしかかっていたMSは轟音とともに地面へ伏した。




「あとらを、よろしく」




ノイズがかった吐息混じりの通信が聞こえた。
ここで背骨に雷が落ちたみたいな感覚に陥る。
止まっていた感覚が帰ってくる。
即座に立ち上がり薫の機体を仰向けにする。



「オルガ！！オルガ聞こえる？！」


「ああ！聞こえてるぞミカ！」


「かおる！薫が危ない、急いで持ち帰るから準備して！」



はやく、帰ろう。
MSを担ぎ上げ、ブーストを吹かす。
無くしたくない。これを絶対になくしたくない。

操作レバーを握る手に力がこもる。





「いなくなったら、怒るよ」