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空を飛ぶ翼

あの真っ暗な部屋から出されて、手についてた輪っかも外されて、ふかふかのイスに座らせられた。
ふかふかで暖かい椅子。
明るい部屋。
頭の中がふわふわする。

目の前には机があって、その向こうにはさっき部屋から出してくれた人の2人が座ってる。
左側には大きくて、目がきりってしてる猫みたいな人。
右側には、ふっくらふにふに柔らかそうな人。

その奥の部屋の壁沿いにも2人たってる。
髪の毛が金色でキラキラしてる人と、小さい人で目が綺麗な青色な人。

全員ちゃんと顔をよく見てみたけど、私の知ってる人の顔じゃなかった。
この人たちは誰なんだろう。

なんとなく部屋をふらふら見ていたら、猫みたいな人が小さく息をついた。
この人は猫さんで呼ぶようにしよう。
それにしても、疲れているのかな?


「あーなんだ、」

猫さんが口をもごもごさせながら話しはじめた。

「お前、名前は?」

なまえ、名前、なまえ
しきべつばんごーってやつかな?

「4573だよ。」

ちゃんと声出せた。
この部屋はあったかくて、空気もパサパサしてないから喉が痛くないや。

けど、私がそう答えたら前の2人と奥の片方の人が変な顔になった。
あれはなんていう顔なんだろう。
困った顔?かな。

なんでそんな顔をするのか、わからなくて首をかしげてたら、猫さんが片目をつぶって頭を掻き始めた。
かゆいのかな?毛づくろいかな?

「あのね、数字じゃなくて、君の名前を知りたいんだ。」

今度はふっくらしてる人が話した。
声も空気も柔らかい人だなぁ。

えっと、なまえ、そんなのあったかな?
なまえって皆から呼ばれるときの言葉のことだよね。
4573以外に呼ばれたことないや。

「みんなには4573ってよばれてたよ。」

私がそういえばみんなまた、あのおかしな顔になる。
私おかしい事言ってるのかな。

どうしよう。怒られるかな。

あ、でもそんなことより、

「イブリース。」

早く会いたい、どこにいるんだろう。

「…それがおまえの名前か?」

イブリースが?私の名前?
どうなんだろう、そうなのかな。

………。
そうなのかな。
イブリースは私で私はイブリースだから。
うん。

「そうだよ。」

イブリースと私はずっと一緒。


「マルバがお前を連れてくる前のことわかるか?」

マルバ??
マルバはわかんないけど、連れてくるってことは、あの買ってくれた人のことかな。
だとしたら、ずっとイブリースと遊んでた。

「人を殺してたよ。」

イブリースはすぐ加減出来なくなるから皆に怒られたっけ。
懐かしいなぁ。
イブリースと遊びたいな。

「お前の、それはどうした?」

「それは阿頼耶識システムだよね?」


「あらやしきしすてむ?」

背中のこれはイブリースと遊ぶためのものだよ。
みんな付けてるよ。
イブリースとみんな遊ばないとだから。

「これはみんなと遊ぶためのものだよ?」

そう答えたらみんなわかんないって顔してた。
あの綺麗な青い目の人以外。
ずっと、なにか食べてる。
なんだろう。

じーっと見つめてたら、青い目の人はこっちに歩いてきた。
わ、怒らせちゃったかな。

私の真横まで来てその人は止まった。

「ミカ?」

猫さんが目を少し見開いてる。
みか、ミカっていうのかな、この人。
綺麗な青い目。

「ん」

目の前にミカさん?の手が差し出された。
その手にはさっき食べてたもの。

「くれるの?」

そう聞いたら、手をずいっと私に押し出してきた。
くれるんだね。

「ありがとう」

受け取って口にいれる。
不思議なあじ、食べたことないや。
けど、いやじゃない。
梅干しみたいな食感で懐かしい。

あれ?うめぼしってなに??
懐かしいの?これ。


私が受け取ったのを見て、ミカさんは元の場所に戻っていった。


「あー、どうすっかコイツ。」

「僕らじゃ決めようがないよ。」

「マルバはなんでったってこんな子供をあんな部屋に入れてたんだ?」


猫さんとふわふわさんが話してる。
私のことで困ってるのかな。


「戦力として使っちまえばいいんじゃねーか?」

後ろの人がそう言った。
それを聞いて猫さんとふわふわさんが少し困った顔をする。

「お前、ここに来る前は人を殺してたんだろ?」

すこし、言葉が冷たい人。
嫌われてるのかな。

「うん。」


猫さんは私の返事を聞いて、長く息を吐いた。
そのあと、真剣な顔になって、

「鉄華団に入る気はねえか?」

鉄華団。
その言葉をきいたとき、なぜかわからないけど胸がドキドキした。
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