私の日常
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リビングの扉を開けると、良い匂いがした。
見れば、もう朝食はほとんどテーブルの上に用意されている。
キッチンに行くと、中也君はコップにオレンジジュースを注いでいるところだった。
そのコップも中也君が買ってくれた。
水彩画風のウサギさんの絵が描いてある可愛いコップ。
「葉月、これ持ってけ」
ずいと出されたコップを受け取る。
私は頷いて、両手でコップをしっかり持ちテーブルに向かった。
コップを置いて、椅子に座る。
すぐに中也君も水の入ったコップを二つ持ってやって来た。
中也君が座ったのを見て、手を合わせる。
「いただきます」
「おう」
目の前にあるワンプレート。
パンケーキとフルーツ、サラダ、ベーコンがのっている。
パンケーキはほどよい焼き加減だ。
フルーツをのせて食べると、とてもおいしい。
「中也君の料理は本当においしいよね」
基本ご飯は中也君が作ってくれる。
私は、料理に関して、できるのかできないのかさえわからない。
なぜなら、中也君は私に料理をさせてくれないからだ。
つまりそもそもわからない。
土俵にたっていないのだから仕方ない。
多分中也君は私が怪我することを恐れて、料理させてくれないのだと思う。
私は私で無理にやりたがるわけではない。
中也君が困ることはしたくないから。
そして私は中也君のおいしいご飯を食べさせてもらっている。
中也君は毎朝、私が先にひとくち食べるのを待ってから食べ始めるのだ。
きっと私の口に合うか気にしているのだと思う。
だから、私もちゃんと口にして伝えるようにしている。
「当たり前だろ」
私が言うと、中也君はいつもそう言う。
強気に言いながらも、少し嬉しそうに食べ始めるのだ。
こういうところがなんだか微笑ましい。
ふと先ほど持ってきてくれた水の入ったコップを見る。
随分昔に中也君に言われたことがある。
朝ごはんの時は水がいいって。
食べ終わったらオレンジジュースなりコーヒーなり好きなものを飲め、と。
昔の私には、意味がわからなかった。
でも今はとてもよくわかる。
こんなにおいしい料理を食べている時に、甘いジュースを一緒に飲むのはもったいない。
ジュースの味にかき消されてしまう。
普段は自分で水を入れて持ってくるのだが、今日は忘れてしまった。
でも中也君はそういう時さりげなく水を持ってきてくれるあたり、昔私に言ったことを覚えていてくれているのだろう。
ちょっと嬉しいかも。
「おい、何笑ってんだよ」
「え?」
「今なんか笑ってただろ」
また無意識に笑っていたらしい。
なんて言えばいいのかしばらく考えて、そのまま言おうと決めた。
「中也君のこと考えてたよ」
私が言うと、中也君はナイフとフォークを動かす手をぴたっと止めた。
止める音なんてしないはずなのに、その音が本当に聞こえてしまうかのように、急に動きを止めた。
「ばっ、おい、手前」
そして中也君は何やらどもりながら、椅子から飛び上がる勢いで体を跳ねさせた。
何か気に障ることを言ってしまったのだろうか。
思ったことを言ったつもりだったが。
私は人の気持ちがあまりわからないから、しばしば皆さんを困らせてしまう時がある。
首領にせよ、中也君にせよ、姐様にせよ。
だが、そういう時は皆頭を撫でてくれる。
間違えたら、いっこずつ教えてくれる。
それなのに、今の中也君はいつもとは違う反応をした。
中也君は口元を手で覆っている。
「ごめんね。また変なこと言っちゃってたかもしれない」
私は思ったことを言ってしまったのを少し後悔した。
笑ってなんかないよ、と白を切れば良かったのかな。
頭の中でぐるぐると考えていると、ため息が聞こえた。
中也君が長いため息をついたのだ。
「違ぇよ。手前は悪くねぇ」
そう言って手を伸ばして私の頭の上に置いた。
あ、いつもと同じ。
私は安心して、パンケーキを食べるのを再開した。
私は賢くないから、予測していないことへの対応が難しい。
中也君が動きを止めた時は少し驚いたけれども、頭を撫でてくれたから間違えたわけじゃないとわかった。
「俺の前ではいいけど、」
「ん?」
「思ったこと言うのは俺の前だけにしろ」
いつの間にか食べ終わっている中也君が食器を重ねながら言った。
「なんで?」
「なんでもだ」
いまいちわからないのだが、中也君が言うならそうした方が良いのだろう。
「わかった、そうする」
私が言うと、中也君は満足そうにキッチンに行った。
中也君と過ごしてかなり経ったのに、未だにわからないことだらけな私。
それでも中也君は怒ったり、突き放したりしない。
私は自立しなきゃと思う反面、このままがいいなと思ってしまう。
中也君にいつか見放されてしまう時まで、せめてその時まではここにいさせてほしいと願っている。
「食べ終わったら持ってこいよー」
でも今はまだ甘えてもいいかな。
そう思い、私はパンケーキの最後の一口分を口に入れた。
「ごちそうさま」
手を合わせてから、席を立ちあがった。
そうしてキッチンに向かう。
いつだって彼のいる場所が私の居場所なのだ。
優しく撫でてくれるその手がある限り、私は絶対にここを離れない。
そう誓うのだった。
見れば、もう朝食はほとんどテーブルの上に用意されている。
キッチンに行くと、中也君はコップにオレンジジュースを注いでいるところだった。
そのコップも中也君が買ってくれた。
水彩画風のウサギさんの絵が描いてある可愛いコップ。
「葉月、これ持ってけ」
ずいと出されたコップを受け取る。
私は頷いて、両手でコップをしっかり持ちテーブルに向かった。
コップを置いて、椅子に座る。
すぐに中也君も水の入ったコップを二つ持ってやって来た。
中也君が座ったのを見て、手を合わせる。
「いただきます」
「おう」
目の前にあるワンプレート。
パンケーキとフルーツ、サラダ、ベーコンがのっている。
パンケーキはほどよい焼き加減だ。
フルーツをのせて食べると、とてもおいしい。
「中也君の料理は本当においしいよね」
基本ご飯は中也君が作ってくれる。
私は、料理に関して、できるのかできないのかさえわからない。
なぜなら、中也君は私に料理をさせてくれないからだ。
つまりそもそもわからない。
土俵にたっていないのだから仕方ない。
多分中也君は私が怪我することを恐れて、料理させてくれないのだと思う。
私は私で無理にやりたがるわけではない。
中也君が困ることはしたくないから。
そして私は中也君のおいしいご飯を食べさせてもらっている。
中也君は毎朝、私が先にひとくち食べるのを待ってから食べ始めるのだ。
きっと私の口に合うか気にしているのだと思う。
だから、私もちゃんと口にして伝えるようにしている。
「当たり前だろ」
私が言うと、中也君はいつもそう言う。
強気に言いながらも、少し嬉しそうに食べ始めるのだ。
こういうところがなんだか微笑ましい。
ふと先ほど持ってきてくれた水の入ったコップを見る。
随分昔に中也君に言われたことがある。
朝ごはんの時は水がいいって。
食べ終わったらオレンジジュースなりコーヒーなり好きなものを飲め、と。
昔の私には、意味がわからなかった。
でも今はとてもよくわかる。
こんなにおいしい料理を食べている時に、甘いジュースを一緒に飲むのはもったいない。
ジュースの味にかき消されてしまう。
普段は自分で水を入れて持ってくるのだが、今日は忘れてしまった。
でも中也君はそういう時さりげなく水を持ってきてくれるあたり、昔私に言ったことを覚えていてくれているのだろう。
ちょっと嬉しいかも。
「おい、何笑ってんだよ」
「え?」
「今なんか笑ってただろ」
また無意識に笑っていたらしい。
なんて言えばいいのかしばらく考えて、そのまま言おうと決めた。
「中也君のこと考えてたよ」
私が言うと、中也君はナイフとフォークを動かす手をぴたっと止めた。
止める音なんてしないはずなのに、その音が本当に聞こえてしまうかのように、急に動きを止めた。
「ばっ、おい、手前」
そして中也君は何やらどもりながら、椅子から飛び上がる勢いで体を跳ねさせた。
何か気に障ることを言ってしまったのだろうか。
思ったことを言ったつもりだったが。
私は人の気持ちがあまりわからないから、しばしば皆さんを困らせてしまう時がある。
首領にせよ、中也君にせよ、姐様にせよ。
だが、そういう時は皆頭を撫でてくれる。
間違えたら、いっこずつ教えてくれる。
それなのに、今の中也君はいつもとは違う反応をした。
中也君は口元を手で覆っている。
「ごめんね。また変なこと言っちゃってたかもしれない」
私は思ったことを言ってしまったのを少し後悔した。
笑ってなんかないよ、と白を切れば良かったのかな。
頭の中でぐるぐると考えていると、ため息が聞こえた。
中也君が長いため息をついたのだ。
「違ぇよ。手前は悪くねぇ」
そう言って手を伸ばして私の頭の上に置いた。
あ、いつもと同じ。
私は安心して、パンケーキを食べるのを再開した。
私は賢くないから、予測していないことへの対応が難しい。
中也君が動きを止めた時は少し驚いたけれども、頭を撫でてくれたから間違えたわけじゃないとわかった。
「俺の前ではいいけど、」
「ん?」
「思ったこと言うのは俺の前だけにしろ」
いつの間にか食べ終わっている中也君が食器を重ねながら言った。
「なんで?」
「なんでもだ」
いまいちわからないのだが、中也君が言うならそうした方が良いのだろう。
「わかった、そうする」
私が言うと、中也君は満足そうにキッチンに行った。
中也君と過ごしてかなり経ったのに、未だにわからないことだらけな私。
それでも中也君は怒ったり、突き放したりしない。
私は自立しなきゃと思う反面、このままがいいなと思ってしまう。
中也君にいつか見放されてしまう時まで、せめてその時まではここにいさせてほしいと願っている。
「食べ終わったら持ってこいよー」
でも今はまだ甘えてもいいかな。
そう思い、私はパンケーキの最後の一口分を口に入れた。
「ごちそうさま」
手を合わせてから、席を立ちあがった。
そうしてキッチンに向かう。
いつだって彼のいる場所が私の居場所なのだ。
優しく撫でてくれるその手がある限り、私は絶対にここを離れない。
そう誓うのだった。