Murder on D Street
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「な、ななななんてことだぁ」
太宰君は遺体を見ると、
目を飛び出そうなほどに開いて
どこから出しているのかと疑うほど、
地を這うような低い声を出して
汗をダラダラ流している。
「華麗なるご婦人が、
若き命を散らすとはぁぁ。
悲嘆でこの胸が破れそうだよぉ。
どうせなら私と心中してくれれば良かったのにぃ」
ここは何かの舞台かと思うほど、
太宰君は悲劇のヒーローを演じている。
「誰なんだあいつは」
「探偵社の同僚で、まあ、ああいう男だ」
最初は名探偵の乱歩さんをいいように思っていなかった箕浦さんだが、
今はそれ以上におかしな人がいるため、
冷静になっているようだ。
箕浦さんが問うと、乱歩さんが答えた。
「しかし安心したまえ御麗人!
稀代の名探偵が必ずや君の無念を晴らすだろう!
ねっ、乱歩さん!」
太宰君は両手を上げながらこちらを振り向いた。
「あれ?葉月ではないか」
あっ、そうだった。
太宰君にまだ挨拶していないことを忘れていた。
「えっお知り合いですか?」
人虎君は驚いたように私に尋ねる。
表情がくるくる変わって可愛い!
「はい、そんなところです。ねっ太宰君!」
「そうなのだよ。
こんなに美しい人と知り合いだなんて、
羨ましいだろう、敦君」
お互いに素性をバラされたくないため、
友人という設定にしておく。
それなのに、太宰君は私の方へ来て
腰を引き寄せた。
敦君はそれを見て、顔を赤らめながら
「そ、そうなんですね」
と言って、顔を逸らす。
「ふーん、君太宰と知り合いだったんだ」
隣でそう呟いた乱歩さん。
「ところで、太宰。
僕は未だに依頼を受けてはいないのだ」
「えっどういうことです?」
「この人に聞いてー」
太宰君はまだ私の腰に手を回したまま、乱歩さんと話している。
乱歩さんが指さしたのは箕浦さん。
「探偵などに用はない。
実際俺の部下は私立探偵などより、
よほど優秀だ。」
箕浦さんはピシャリと言ってのける。
乱歩さん怒ってないかな?と
顔色をうかがおうとすると、
「おおー!君名前は?」
乱歩さんは特に怒っている様子はなく、
若い警察官に話しかけた。
「自分は杉本巡査であります!
殺されたこの山際助手の後輩であります!」
乱歩さんは、
中々フレッシュな感じでハキハキと答えた杉本さんの肩に手を置いた。
「よし!杉本君。
今から六十秒でこの事件を解決しなさい!」
「えぇ!」
「僕なら一分以内に解決できる。
僕より優秀だと豪語するなら、
できるよねぇ?
それでは杉本君、いってみよう」
何がなんでも無茶じゃないか。
そう思って言おうとするも、太宰君が離してくれないので動けない。
太宰君の顔を見上げても、表情が読めない。
乱歩さんってこんなサディスティックな面があるのか。
それはそれでいいなぁ。
そして始まった六十秒のカウントダウン。
杉本君は頭を抱えて唸っている。
「い、いくらなんでも六十秒ってのは」
「はぁーい。あと五十秒ー」
「ええええ」
時計を片手に杉本君に詰め寄る乱歩さん。
これだと、仮に解決できたとしても、
プレッシャーでパニックに陥ってしまう。
敦君は杉本君に同情するような目で、
その様子を見ている。
「あっそうだ。
最近山際先輩は、政治家の汚職疑惑と、
ポートマフィアの活動を追ってました。
たしか、マフィアの報復の手口に似た殺し方があったはずです。
もしかすると先輩は捜査していたマフィアに殺されて、」
「「違うよ」」
杉本君の話を聞いていた私と太宰君は、
ほぼ同時に彼の言葉を否定した。
思ったより低い声が出てしまった。
「へ?」
「ポートマフィアの報復の手口は身分証と同じで、
細部まで厳密に決められている。」
太宰君は私のことを制しながら言った。
私は言わなくていいということか。
「まず、裏切り者に敷石を噛ませ後頭部を蹴り顎を破壊。
激痛に悶える犠牲者をひっくり返し、
胸に三発」
太宰君が冷静に説明すると、
人虎君は狼狽えた。
「たしかに正確にはそうですが」
杉本君は先ほどのように焦ってはいなかった。
「この手口はマフィアに似ているが、
マフィアじゃない。つまり、」
太宰君は暗い目をしながら、
言い聞かせるように呟いた。
「犯人の偽装工作?」
箕浦さんは言った。
「偽装のためだけに、
以外に二発も撃つなんて、
ひどい」
杉本君は悲しそうに言った。
あれ、でも今何か違和感があったような。
「ぶぅーーー」
「わぁぁぁ」
乱歩さんには今のシリアスな雰囲気は関係ないようで、
「はい、時間切れー」
カウントダウンの終了を告げた。
人虎君も杉本君も驚いて声が出ていない。
「だめだねぇ。
名探偵の僕にはやはり遠く及ばない」
乱歩さんは口角を上げて言った。
「少なくとも君の部下が、
全員僕より優秀というのは間違っていると証明されたねぇー」
乱歩さんは箕浦さんの方を見て言った。
なんかこの人おもしろいかも。
「いい加減にしろ!
さっきから聞いていれば、
やれ推理だのやれ名探偵だの
通俗創作の読みすぎだ。
事件の解明はすなわち、地道な調査、
聞き込み、現場検証だろ」
箕浦さんはついに痺れを切らして乱歩さんにそう言った。
「はぁ?まぁだわかってないのー?
名探偵は調査なんかしなーいの!
僕の能力超推理は、
一目見れば犯人は誰でいつどうやって殺したか
瞬時にわかるんだよ?
のみならずどこに証拠があって、
どうすれば犯人が自白するかも啓示の如く頭に浮かぶ。
僕は異能力者だからね」
そうなの?と太宰君を見上げると、
口元に人差し指を当てた。
そんな異能力があるんだ。
「職業柄異能力者の存在は俺も知っている。
だが、そんな便利な異能力があるなら、
俺たち刑事はいらねぇじゃねぇか」
「まさにその通り!
ようやく理解が追いついたじゃないか」
乱歩さんは煽るのが上手だ。
箕浦さんは青筋を立てている。
「貴様!」
箕浦さんが拳を握りしめたのを見て、
太宰君は二人の間に入る。
乱歩さんがやったことだが、
当の本人はなぜ怒っているのかわからないという顔をして
太宰君と箕浦さんのやり取りを見ている。
きっと乱歩さんは純粋な人なのだろう。
「まあまあ刑事さん。
乱歩さんは終始こんな感じですから」
太宰君は人の良い笑みを浮かべ箕浦さんを宥めている。
「なにしろ僕の座右の銘は、
僕がよければすべて良し!だからな」
乱歩さんはポーズを取って言った。
ああ、この人やっぱり純粋じゃなくて、
わがままなんだな。
人虎君は眉をぴくぴくとさせている。
「やれやれ」
太宰君は包帯で巻かれた首を掻きながら言った。
そういえば、顔の包帯はなくなったんだ。
顔が全部見える。
私は太宰君の顔を見つめていたようだ。
「ん?」
とても優しい顔でそう言われると、
なんだか顔が熱くなってしまう。
「なんでもないよ」
私はすぐに目を逸らした。
「そこまで言うなら見せてもらおうか、
その能力を」
箕浦さんが言った。
「おやぁ?それは依頼かな?
最初から素直に頼めばいいのに」
対する乱歩さんはまた煽り始める。
「ふっ、なんの手かがりもないこの難事件を相手に、
大した自信じゃないか。
六十秒計ってやろうか?」
箕浦さんはどうやら乱歩さんの異能力を信じていないようだ。
私も少し興味がある。
乱歩さんは歯を見せて笑い出す。
「そんなにいらない」
「よく見ていたまえ敦君、葉月。
これが探偵社を支える能力だ」
敵によく見ていろとは随分余裕なことだ。
じゃあ、見せてもらおうか。
探偵社を探偵社と言わしめる能力を。
太宰君は遺体を見ると、
目を飛び出そうなほどに開いて
どこから出しているのかと疑うほど、
地を這うような低い声を出して
汗をダラダラ流している。
「華麗なるご婦人が、
若き命を散らすとはぁぁ。
悲嘆でこの胸が破れそうだよぉ。
どうせなら私と心中してくれれば良かったのにぃ」
ここは何かの舞台かと思うほど、
太宰君は悲劇のヒーローを演じている。
「誰なんだあいつは」
「探偵社の同僚で、まあ、ああいう男だ」
最初は名探偵の乱歩さんをいいように思っていなかった箕浦さんだが、
今はそれ以上におかしな人がいるため、
冷静になっているようだ。
箕浦さんが問うと、乱歩さんが答えた。
「しかし安心したまえ御麗人!
稀代の名探偵が必ずや君の無念を晴らすだろう!
ねっ、乱歩さん!」
太宰君は両手を上げながらこちらを振り向いた。
「あれ?葉月ではないか」
あっ、そうだった。
太宰君にまだ挨拶していないことを忘れていた。
「えっお知り合いですか?」
人虎君は驚いたように私に尋ねる。
表情がくるくる変わって可愛い!
「はい、そんなところです。ねっ太宰君!」
「そうなのだよ。
こんなに美しい人と知り合いだなんて、
羨ましいだろう、敦君」
お互いに素性をバラされたくないため、
友人という設定にしておく。
それなのに、太宰君は私の方へ来て
腰を引き寄せた。
敦君はそれを見て、顔を赤らめながら
「そ、そうなんですね」
と言って、顔を逸らす。
「ふーん、君太宰と知り合いだったんだ」
隣でそう呟いた乱歩さん。
「ところで、太宰。
僕は未だに依頼を受けてはいないのだ」
「えっどういうことです?」
「この人に聞いてー」
太宰君はまだ私の腰に手を回したまま、乱歩さんと話している。
乱歩さんが指さしたのは箕浦さん。
「探偵などに用はない。
実際俺の部下は私立探偵などより、
よほど優秀だ。」
箕浦さんはピシャリと言ってのける。
乱歩さん怒ってないかな?と
顔色をうかがおうとすると、
「おおー!君名前は?」
乱歩さんは特に怒っている様子はなく、
若い警察官に話しかけた。
「自分は杉本巡査であります!
殺されたこの山際助手の後輩であります!」
乱歩さんは、
中々フレッシュな感じでハキハキと答えた杉本さんの肩に手を置いた。
「よし!杉本君。
今から六十秒でこの事件を解決しなさい!」
「えぇ!」
「僕なら一分以内に解決できる。
僕より優秀だと豪語するなら、
できるよねぇ?
それでは杉本君、いってみよう」
何がなんでも無茶じゃないか。
そう思って言おうとするも、太宰君が離してくれないので動けない。
太宰君の顔を見上げても、表情が読めない。
乱歩さんってこんなサディスティックな面があるのか。
それはそれでいいなぁ。
そして始まった六十秒のカウントダウン。
杉本君は頭を抱えて唸っている。
「い、いくらなんでも六十秒ってのは」
「はぁーい。あと五十秒ー」
「ええええ」
時計を片手に杉本君に詰め寄る乱歩さん。
これだと、仮に解決できたとしても、
プレッシャーでパニックに陥ってしまう。
敦君は杉本君に同情するような目で、
その様子を見ている。
「あっそうだ。
最近山際先輩は、政治家の汚職疑惑と、
ポートマフィアの活動を追ってました。
たしか、マフィアの報復の手口に似た殺し方があったはずです。
もしかすると先輩は捜査していたマフィアに殺されて、」
「「違うよ」」
杉本君の話を聞いていた私と太宰君は、
ほぼ同時に彼の言葉を否定した。
思ったより低い声が出てしまった。
「へ?」
「ポートマフィアの報復の手口は身分証と同じで、
細部まで厳密に決められている。」
太宰君は私のことを制しながら言った。
私は言わなくていいということか。
「まず、裏切り者に敷石を噛ませ後頭部を蹴り顎を破壊。
激痛に悶える犠牲者をひっくり返し、
胸に三発」
太宰君が冷静に説明すると、
人虎君は狼狽えた。
「たしかに正確にはそうですが」
杉本君は先ほどのように焦ってはいなかった。
「この手口はマフィアに似ているが、
マフィアじゃない。つまり、」
太宰君は暗い目をしながら、
言い聞かせるように呟いた。
「犯人の偽装工作?」
箕浦さんは言った。
「偽装のためだけに、
以外に二発も撃つなんて、
ひどい」
杉本君は悲しそうに言った。
あれ、でも今何か違和感があったような。
「ぶぅーーー」
「わぁぁぁ」
乱歩さんには今のシリアスな雰囲気は関係ないようで、
「はい、時間切れー」
カウントダウンの終了を告げた。
人虎君も杉本君も驚いて声が出ていない。
「だめだねぇ。
名探偵の僕にはやはり遠く及ばない」
乱歩さんは口角を上げて言った。
「少なくとも君の部下が、
全員僕より優秀というのは間違っていると証明されたねぇー」
乱歩さんは箕浦さんの方を見て言った。
なんかこの人おもしろいかも。
「いい加減にしろ!
さっきから聞いていれば、
やれ推理だのやれ名探偵だの
通俗創作の読みすぎだ。
事件の解明はすなわち、地道な調査、
聞き込み、現場検証だろ」
箕浦さんはついに痺れを切らして乱歩さんにそう言った。
「はぁ?まぁだわかってないのー?
名探偵は調査なんかしなーいの!
僕の能力超推理は、
一目見れば犯人は誰でいつどうやって殺したか
瞬時にわかるんだよ?
のみならずどこに証拠があって、
どうすれば犯人が自白するかも啓示の如く頭に浮かぶ。
僕は異能力者だからね」
そうなの?と太宰君を見上げると、
口元に人差し指を当てた。
そんな異能力があるんだ。
「職業柄異能力者の存在は俺も知っている。
だが、そんな便利な異能力があるなら、
俺たち刑事はいらねぇじゃねぇか」
「まさにその通り!
ようやく理解が追いついたじゃないか」
乱歩さんは煽るのが上手だ。
箕浦さんは青筋を立てている。
「貴様!」
箕浦さんが拳を握りしめたのを見て、
太宰君は二人の間に入る。
乱歩さんがやったことだが、
当の本人はなぜ怒っているのかわからないという顔をして
太宰君と箕浦さんのやり取りを見ている。
きっと乱歩さんは純粋な人なのだろう。
「まあまあ刑事さん。
乱歩さんは終始こんな感じですから」
太宰君は人の良い笑みを浮かべ箕浦さんを宥めている。
「なにしろ僕の座右の銘は、
僕がよければすべて良し!だからな」
乱歩さんはポーズを取って言った。
ああ、この人やっぱり純粋じゃなくて、
わがままなんだな。
人虎君は眉をぴくぴくとさせている。
「やれやれ」
太宰君は包帯で巻かれた首を掻きながら言った。
そういえば、顔の包帯はなくなったんだ。
顔が全部見える。
私は太宰君の顔を見つめていたようだ。
「ん?」
とても優しい顔でそう言われると、
なんだか顔が熱くなってしまう。
「なんでもないよ」
私はすぐに目を逸らした。
「そこまで言うなら見せてもらおうか、
その能力を」
箕浦さんが言った。
「おやぁ?それは依頼かな?
最初から素直に頼めばいいのに」
対する乱歩さんはまた煽り始める。
「ふっ、なんの手かがりもないこの難事件を相手に、
大した自信じゃないか。
六十秒計ってやろうか?」
箕浦さんはどうやら乱歩さんの異能力を信じていないようだ。
私も少し興味がある。
乱歩さんは歯を見せて笑い出す。
「そんなにいらない」
「よく見ていたまえ敦君、葉月。
これが探偵社を支える能力だ」
敵によく見ていろとは随分余裕なことだ。
じゃあ、見せてもらおうか。
探偵社を探偵社と言わしめる能力を。