友人期
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曹陽は苛立ちを隠せなかった。
この苛立ちを誰かにぶつけない様に腹の底から湧き出るこの感情をどうにかしなければとあたりを見回す。
自室に籠るのという選択肢もあるが彼女の中でそれは余りにも拗ねた子供のやる事に思えた。
ぐるりと見渡し誰にも見つからず冷静になれる場所を見つけた曹陽は、その場所を目掛けて一目散に駆けていく。
その時、誰かに呼び止められた様な気がしたが今はそれどころではない。
今の彼女にはたどり着きたいその場所にしか眼中が無いのだから。
「曹陽殿?」
曹陽を見かけて声をかけたのは荀彧であった。
彼女を呼び止める為に伸ばされた手を顎に持っていき暫し考え込むと走り去った彼女を追う事にする。
曹陽殿は本日がお見合いであったはず、あのご様子を拝見するに事が上手く進まなかったのだろう。
曹操の力になる事を一番の望みとしている曹陽は何かと縁談話を受けては破綻している様子で、女人として生まれたのであれば婚姻によって家の繋がりを増やす事も大切な事ではあるのだがその才覚は家に囚われる事で死んでしまうと荀彧は考えていた。
乱世を終わらせる為、彼女にはその武を持って殿のお力になって頂かなくてはならないのだから。
そんな思いをいだき荀彧は曹陽の後を追っていくのであった。
「……ん?あれは荀彧…か?」
木の上でに横になり心を落ち着かせていた曹陽の目に留まったのは彼女を追ってきた荀彧の姿だ。
彼とはあまり話したことがない。
最低限の挨拶や戦場での指示ぐらいの付き合いしかないが、真面目で謙虚な人物であると把握している。
そんな人物が木々の生茂るこの場所で何かを探している様子を疑問に思い曹陽は木の上から声をかける事にした。
「荀彧!何か探しているのか?」
「曹陽殿!……はい、貴女を探しに。
先程お見かけしお声がけをしたのですがお気付きになられなかった様でしたので」
「……あの声はお前だったのか」
突然声をかけられた荀彧は驚いた様子であったが、木の上にその姿を見つけると一礼し曹陽を追いかけて来たのだと伝えた。
荀彧を無視した形になった曹陽は気まずそうに頬をかくとすぐさま木を飛び降り彼の隣に並んだ。
「さっきは無視して悪かった……あの時は、ちょっと余裕が無くてな」
「いいえ、構いませんよ。
ですが、何かあったのですか?あの時ご様子がおかしかった様に思えたもので……」
「そうなんだよ!聞いてくれるか荀彧!?」
荀彧の言葉に曹陽の中で一度冷めたはずの苛立ちが再度湧き上がる。
しかし先程までとは違い今度はそれを愚痴る相手が目の前にいた。
その高揚からか曹陽は荀彧の手を両手で包むと瞳を輝かせ彼を見上げる。
「はい、私で宜しければお聞かせください」
そんな様子の曹陽を見ながら荀彧は優しげに微笑むのだった。
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