はじまりの宝物
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「ルル見て見て〜〜シャルから貰ったんだよ!」
シャルナークを見送り再びベットに戻ったルージュは寝転びながら大切なサプライズプレゼントを友達《ルル》に見せびらかす。
その行為は無機物なプラスチック製の瞳に緑色の光がキラキラと反射し、まるでその縫いぐるみが本当に生きている様にすら感じられた。
「シャルは凄いね、ルージュの欲しい物分かるんだよ?」
シャルナークさえ居てくれれば他の物は必要無かった。
テレビでこの宝石を見た瞬間、脳裏にシャルナークの顔が浮かんだ。
決して口にはしなかったが初めて宝飾品を自らの意思で欲しがり、そしてその宝飾品は今自身の手の中にある。
シャルナークの瞳を連想させるこの宝石をシャルナークが与えてくれたその喜びがルージュの心を駆け巡る。
(ああ、こんな素敵な気持ちをシャルにも感じて欲しい)
ふとそんな事を願った。
「……ねぇルル……シャルは何が欲しいのかな?」
無論ルルからの返答は無い。
仰向けになり天井を見つめて思考を巡らす。
相手の欲しがる物を渡したい。
今までシャルナークから与えられた物を享受し生きて来たルージュにとって初めての感情。
しかし、ルージュには何をサプライズプレゼントとしたら良いのか皆目見当がつかない。
ルージュ自身が欲しい物は一貫してシャルナークであるが、シャルナーク本人にシャルナークをプレゼントする事が出来ないのは流石に理解が出来る。
どうしたら良いか分からずゴロゴロとベットの上で転げ回っていた時、ベット脇に備え付けられたサイドテーブル、電話機が目に入った。
皆んななら分かるかも知れない。
受話器を手に取り番号を入力する。
一度目の呼び出し音で受話器を置き直ぐに同じ番号に掛け直す。
〈ーールージュ、どうしたんだい?〉
「マチあのねあのね聞きたいことがあって」
〈聞きたい事……ルルの補修の事?〉
「ルルは大丈夫元気だよ!シャルのこと!」
〈……アンタの方が詳しいと思うけどね。何が聞きたいの?〉
「シャルは何を貰ったら嬉しいのかな?ルージュね、シャルにサプライズプレゼント貰ったんだ〜〜
でねルージュもシャルにサプライズプレゼントしたいんだけど……シャルの欲しい物が全然思いつかないの」
〈アイツならアンタから貰える物なら何だって喜ぶと思うけど……やっぱりあたしにはその手の話は力になれない。
団長辺りに聞いた方が確実ね〉
「うーーん、そっか。ありがとマチ」
〈ま、頑張りな〉
ルージュは受話器を置き今度は暫し考え込む。
自身から貰える物なら嬉しいのだろうか、もしもそうなら嬉しいと思うものの果たしてそれはサプライズプレゼントの喜びと同等の物なのか。
再び受話器を取りマチに言われた通りに今度は団長へと電話を掛ける。
〈ーールージュか何かあったのか?〉
「シャルの事でクロロに聞きたい事があるの」
〈シャルのーーああ、ルージュが食われかけた事か?〉
「うーーん?シャルは人間食べないよ?」
〈……そうか、変な事を聞いて悪かったな。
で、オレに聞きたい事は?〉
「ルージュね、シャルにサプライズプレゼント貰ったの!
でねルージュもシャルにサプライズプレゼントしたいんだけどねシャルの欲しい物が思い浮かばないの……マチはねルージュから貰える物なら喜んでくれるって!
でもそれだとサプライズプレゼントにならない気がする……ルージュと違ってシャルは欲しいものは自分で盗ってくるから……どうしたらいいのかな?
クロロに聞いた方が確実だってマチが言ってたの」
〈ルージュはシャルから何を貰った?〉
「シャルの目にそっくりな緑色の宝石!クロロ聞いて聞いてシャル凄いんだよ!
ルージュ何も言ってないのにルージュの欲しい物が分かるんだ〜〜でも……ルージュにはシャルの欲しい物が分からないの……どうしたらいいのかな?」
〈そうだな……もう一度シャルの言動を思い出してみるといい。
シャルは普段何をしてる?何を食べる?何を使っている?何を身につけている?〉
「うーーん」
〈思い出した記憶の中で必ず引っかかる物がある。それがルージュの求める答えだ〉
「ーーあっ!!ルージュ分かったかも!!」
〈そうか〉
「ありがとクロロ!!」
〈何気にするな、シャルに対するせめてもの罪滅ぼしだ。
ルージュのサプライズプレゼントが成功することを願っている〉
「うんルージュ頑張る!」
クロロとの通話を終えルージュは早々と身支度を始める。
ルージュの悩みを物の数分で解決してしまうクロロ、流石は皆の団長であった。
シャルナークから貰ったサプライズプレゼントを身につけルルを抱き上げると部屋を後にしようとするルージュは何かを思い出した様にまた電話機の前に立つと受話器を手に取り番号を押したのだった。
「くっそーー結構時間掛かった」
旅団の仕事を終えルージュの待つホテルに帰って来たシャルナークは大きな溜息をつく、仕事が嫌なわけでは無いただ少しタイミングが悪かっただけの話だ。
今度こそルージュをベタベタに甘やかしてシャルナークという自身の存在を更に深く植え付けたい。
エレベーターに乗りボタンを押す上昇するエレベーターの中でシャルナークは珍しく金を出して買ってきたケーキの箱に目線を合わせる。
これを見たらきっと喜んでくれる事だろう。
(早く戻ってあの可愛らしい生き物に癒されたい)
エレベーターを降り、逸る気持ちを抑えシャルナークはルージュが待つ部屋へと足を運ぶ。
「ただいま〜〜あれ?
……ルージュ?」
出迎えがない……思いの外長引いてしまった事もあり流石に疲れて寝てしまっているのだろか。
可愛らしい寝顔を眺めるのも悪くは無いとシャルナークはルージュに気づかれない様に《絶》を使いベットルームに向かう。
「……ルージュ?」
可愛らしい寝顔で寝息をたているであろうと思っていた。
その広々としたベットを見るまでは。
「ルージュ!!」
《円》を使い部屋の隅々を確認しルージュがいない事を理解した瞬間にシャルナークは扉を蹴り破る勢いで廊下へと飛び出した。
(いない!どうして!!こんな事は一度も無かった!!)
エレベーターがこの階に到着するには少し時間がかかる。
今は一時を争う事態待ってなどいられ無い、非常階段に向かい飛び降りる様に階段を降って行く。
(誰がっ!誰がオレの宝物を奪った!!)
「お客様!?いかがなされーー」
フロントに向かう途中ですれ違った従業員にアンテナを突き刺し操る。
先ずは監視カメラを確認しルージュを奪った犯人を見つけ出す。
(オレの物に手をだしたんだ……楽には殺さない!!)
シャルナークの瞳には未だ見ぬ犯人への憎悪が有り有りと浮かび上がっている。
その憎悪の強さは携帯電話の操作に反映されている様で高速で打ち込むその速さは異常であった。