はじまりの宝物
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少女は一人広々としたベットの上で膝を抱えていた。
「ねえルル……シャル、何時ぐらいに帰って来るかな?」
数分置きに時計を見ては自身の傍にある縫いぐるみに視線を落としか細い声で話し掛けている。
少女にルルと呼ばれた赤い猫の縫いぐるみは当然の事ながら少女の問いには答えはしない。
「ルルはシャルの事好き?ルージュはシャルが大好き!シャル優しくて頭も良いんだよ!それからねーー」
すると少女《ルージュ》は花が綻ばんばかりの笑顔でルルに《シャル》の話を語り始めた。
ルージュは飽きる事なくルルにシャルの事を語り聞かせる。
そして一時間程経った頃だろうか、ルージュは唐突にルルを抱き上げるとベットから立ち上がり外に繋がる扉の前に立った。
扉の前でソワソワと落ち着かない様子で数分が過ぎると鍵が解鍵される音がして扉が開いたのだった。
「シャルおかえり!」
「わっ!ルージュまた扉の前で待ってたの?」
扉を開け入ってきた一人の男性にルージュは勢い良く抱き着いた。
抱き着かれた男性はルージュを受け止めると頭を数回撫で前髪を分けるとルージュの額にキスを贈る。
男性の名はシャルナーク、がルージュ待ち焦がれていた人物であった。
シャルナークは軽々とをルージュ抱き上げると部屋の中へと入って行った。
「ただいまルージュ」
「おかえり!」
「ルージュが円得意なのは知ってるけどさ……流石に疲れるだろ?別に無理しなくていいからさ」
「うーーん?大丈夫!……だってシャルが帰って来たのがすぐ分かるから、全然疲れなんて感じないんだ〜〜」
「んんっ!!……そーなんだ。
それよりオレがいない間変わった事はなかった?」
ルージュの回答はどうやらシャルナークのツボを刺激したらしい。
シャルナークは破顔した表情を誤魔化す為か咳払いをすると、話題を変え自身の留守中の事を尋ねる事にした。
「大丈夫!ルージュルルと一緒に待ってた!」
「そっか良かったよ」
「えへへっシャルはお仕事どうだったの?」
ベットにルージュを降ろすとシャルナークは今日の稼ぎを取り出しルージュの手にソレを置いた。
手のひらに収まるソレは繊細な飾りの彫られた年代物の箱で素人でも判る程に高価な物である。
「ルージュ開けて見て?」
シャルナークに促されルージュはその箱に手を掛ける。
「わぁ!!」
「コレ、ルージュ欲しがってただろ?」
年代物の箱の中身は翡翠色の宝石があしらわれている宝飾品であった。
四、五センチほどの楕円形で薄らと青みがかった緑色をしている。
翡翠色の宝石は楕円形でありながらまるでダイヤモンドの様な光の分散率で輝きを放ちつつも光の屈折率だろうか光の当て方に寄って独特な重厚感が垣間見れた。
名前は分からないが以上の見立てから希少石である事は間違い無いであろう。
「シャル凄い!!どうして、どうしてルージュが欲しいもの分かったの!?」
「ルージュ分かりやすいからすぐ分かるよ」
「うーーん?そうかな?」
「そうだよ」
「そっか〜〜」
ルージュは箱の中の物を手に取り光に翳しながら角度を変え宝石の色調の変化を一頻り眺める事にした。
「サプライズプレゼント気に入ってくれた?」
「うん!!シャルありがと!嬉しい!大切にするね」
シャルナークの問いにルージュは翳していた手を下ろすと今度はソレを胸元で強くも決っして壊れない様に握り締めている。
その姿にシャルナークは胸を揺さぶられた。
根本的にこの少女《ルージュ》はこの男性《シャルナーク》から与えられる物であれば道端に落ちている石ころで有ろうとも喜んで受取る事であろう。
裏を返せば、今少女が手にしている高価な宝石もこの男性から与えられなければ道端の石ころ以下の存在なのである。
《何》を貰ったかが重要なのでは無く、《誰》に貰ったかが重要だった。
こんなに喜ばれると盗んだ甲斐があったと言うもの、しかし同時に疑問がシャルナークの脳裏に浮かんだ。
ルージュは何かを欲しがり強請る事が無い、与えられる物を与えられるだけ受取る事しかしないのだ。
だからこそ今回はルージュの欲しがってた物を与えてあげたかったのだが、何故この装飾品なのだろうかとシャルナークは疑問に思っていた。
自慢ではないが今回の宝飾品以上に高額な物を与えて来た自覚も自信もある。
無論全て喜んでくれて受け取ってくれるのだが、今回の喜び様と比べると違いが歴然であった。
「ねえルージュ、どうしてソレが欲しかったの?」
答えの出ない問題を考えていても仕方ない。
シャルナークは素直に疑問をルージュに尋ねる事にした。
するとルージュはニコニコしながら翡翠色の宝石をシャルナークの目線の高さに持ち上げて見せた。
「うん!やっぱり」
「?」
その行為にシャルナークは首を傾げた、何がやっぱりなのだろうか。
「シャルと一緒にテレビで見た時にね。す〜〜っごく綺麗な色だなぁって思ったの」
「成る程、ルージュの好みだったのか(緑色が好みだったのか、次からはこの手の宝飾品狙うかな)」
「うん!だってシャルの目の色と一緒だもん!!
これがあれば寂しく無いよ?シャルが一緒に居てくれるみたい」
「!!」
ルージュのその言葉にシャルナークは全身の血液が沸騰するのを感じた。
この可愛らしく小さな生き物は緑色の宝飾品が欲しかった訳では無く、自身《オレ》の瞳の色に似ている物が欲しかっただけなのだ。
シャルナークは体が昂っている事を自覚していた、それと同時に心臓が大きく脈打つ音がルージュにも聞こえてしまうのではないかと心配になった。
純真無垢なこの生き物が自身《オレ》の変化に気が付いたのならその疑問を躊躇わずに口にするだろう。
その時に自身《オレ》は……
「ありがとーーシャル大好き」
「……オレも……ルージュ目を閉じて」
「うん!」
あどけない笑顔で目を閉じるルージュの頬に触れシャルナークはゆっくりと輪郭をなぞる様に指を滑らしその行為に満足すると、今度は桜色の小さな唇に指を置き柔らかな弾力を楽しむかの様に指を這わせる。
その行為がくすぐったいのだろうルージュは目を閉じながら身を揺らした。
「ルージュは……」
「シャル?」
「ルージュはどんなオレでも受け止めてくれる?」
「うーーん?ルージュにとってシャルはシャルだよ?」
「……止まらなくなるから」
「うーーん?ルージュよく分からない。
でも、シャルが止めたく無いなら止めなくていいよ?」
その言葉と同時にルージュは自身の唇を弄んでいるシャルナークの指をペロリと舌を這わせたのだった。
ルージュの行動に深い意味はないのだろう動いている指先が気になって反射的に舐めてしまっただけに過ぎない。
しかしルージュの意思はどうあれシャルナークにとっては塞き止めた理性を崩壊される起爆剤である。
熟この生き物は自身《オレ》を煽る事が上手い……。
心の何処かでこのままで居て欲しいと願う気持ちとは裏腹に、今の今まで自身《オレ》が守り続けて来た純粋さを自身《オレ》の手で散らす背徳感は言葉では表せない程の高揚感にと変わっていった。
シャルナークはルージュの方に体重を掛け共にベットに沈み込んだ。
その時ルージュは驚いた声を上げたがシャルナークに言われた通り目は閉じたままである。
「シャル?」
「ルージュ……愛しーー」
Pipipipiーー
「わっーー!?」
シャルナークはその物音に弾かれる様に身を起こす、色々な意味で心拍数が上昇している所である。
「ケータイ鳴ってるよ?」
「……」
Pipipipiーーピッ!
「何だよ!?何か用!?
今オレの人生でかつて無い程、すーーっげーー大切な所だったんだぞ!?」
〈それは悪いな。取り込み中だったのか〉
「未遂だし!!」
〈何だ……まだ手を出して無かったのか〉
「団長のお陰でね!!……で、仕事の話しだろ!何を狙うの!?
……そう……分かった、フィンクスと集合……え?うっさい!?余計なお世話だ!!」
ピッ!
「シャルお仕事?」
「ごめんルージュ……なるべく早く帰ってくるから」
「ルルも居るから大丈夫!
それにシャルがくれたコレもあるからルージュ寂しくないよ?」
「そっか……ルージュ?
くっくっくあははは!!ごめんごめんルージュもう目を開けて良いから!」
「うん!……シャルどうしたの?」
「いや、ちょっとね。
オレの彼女は可愛いな〜〜って再確認しただけだよ」
「うーーん?そっか」
「そーだよ」
「ルージュの彼氏もカッコイイよ?えへへ〜〜再確認した!」
「んんっ!!……そっか(くそっ!!着信さえ来なければ!!)」
「そーだよ〜〜」
「別に……楽しみは後に取っておくだけだから」
「?」
つい漏れるシャルナークの邪な考えをやはりルージュは理解していない様で、首を傾げながらシャルナークを見上げていた。
そんなやり取りをしつつ二人は扉の前に移動して行く。
「ルージュ……何か合ったら直ぐオレに連絡して仕事中とか関係ないからさ
最悪オレに連絡出来ない時は他の団員でも構わないからね」
「うん」
ルージュに目線を合わせる為、腰を下ろすシャルナーク。
二人は暫し見つめ合う。
「じゃあ、行って来るねルージュ」
その言葉を合図にルージュはシャルナークの前髪を掻き分け額にキスを贈る。
「シャル行ってらっしゃい」
シャルナークは二、三度ルージュの頭を撫でると立ち上がり扉の向こう側へと姿を消した。
施錠される扉の音を聞きながらルージュは円を発動させとシャルナークが円の外に出るまでその場に佇んで居るのであった。