SS 審神者
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「よっしゃ! レアアイテムゲット‼︎ この調子で——あぁぁぁぁ‼︎」
画面に表示されたエラー報告にコントローラーを握りしめて後ろに倒れる。このゲームを始めて何度目のエラー落ちだろうか、多過ぎて回数なんて正直覚えていない。
かなり前のレトロゲームだ。これぐらいは覚悟していたが、理解していてもスムーズにプレイできないのはストレスである。
「あー……。やる気削がれたわー今日はもうやめるか」
度重なるエラー落ちでゲームをしている気分ではなくなり、本体の電源を落として立ち上がる。
まだ十一時前だ。起きてる奴らも多いだろう。気晴らしに話でもして気分を切り替えるとするか。
この本丸で騒げる場所は、各自の個室を除くと大広間が一番騒げる場所である。よって自然と足は大広間に向けて動き出す。
「おや、主」
「どうしたんだい? こんな時間に来るなんて珍しいねぇーげーむは終わったのかい?」
「なんだ、あんたも飲みに来たのか?」
「主! どうかされましたか⁉︎ 今日は部屋から出られないものかと」
「んーちょっと気分転換になー」
大広間には太郎太刀、次郎太刀、日本号、へし切長谷部の四振りが酒盛りをしていた。思ったより人数が少ない。
「ほらぁーアンタも飲んでいきなよ!」
「酒か……得意じゃないんだよなぁ……」
「なんだ、俺達の酒が飲めねぇーって言うのか?」
「貴様ら主に絡むな! 主、部屋まで戻られますか? 気晴らしなら俺が付き合いますよ」
すでに出来上がった次郎と日本号に絡まれていると長谷部に助けられる。長谷部はブーブー文句をいう二振りを無視して、私を部屋まで送ってくれるらしい。
「長谷部、お前も飲んでたんだろ? 今日は休日だしゆっくりしてな——あ! 私も酒飲むわ! ちょっと待ってて‼︎」
休日の長谷部を話に付き合わせるのは申し訳ないと思い断ろうとした時、ふと思い出した。断ったところで長谷部なら酒盛りをやめてついて来てしまうだろうし、長谷部を休ませるのなら一緒に飲むのが手っ取り早い。
長谷部達を大広間に残して部屋に戻ると、部屋に備え付けられた冷蔵庫からキンキンに冷えた缶チューハイを取り出す。推しのコラボ缶が目当てで買ったが、飲む機会がなく冷蔵庫で眠っていた一品である。きっとこの機を逃せば未開封のままになってしまう。
「ぬしさま?」
「小狐、どうかした?」
「眠れなかったものでぬしさまのお側にと思いましたが、何処かに行かれますか?」
「これから大広間に飲み会しにな。小狐丸も来る?」
「はい、お供致します。ぬしさま」
ひっこりと部屋に現れた小狐丸を連れて大広間に戻る。酒のつまみに用意していたかさばる荷物を「お持ち致します」と受け取り運んでくれる小狐丸。缶チューハイが推しのデザインなのに気付いているのだろう。自分で持っていきたいヲタク心を察してくれて、缶チューハイまでは持たないところが高ポイントである。本当に私には勿体ないぐらいによくできた刀剣男士だ。
「お待たせ〜」
「おっそぉーい! どこで油を売ってたんだい?」
「悪りぃー悪りぃーおつまみ持ってきたから許してよ、次郎さん〜」
「お酒のつまみは大歓迎〜次郎さん許しちゃう〜」
「ありがと〜次郎さん〜じゃあパーっと飲みますか〜」
「さんせ〜」
持ってきた荷物をちゃぶ台に置いてもらうと缶チューハイを開ける。プシュと、炭酸の弾ける音が心地よい。
私について来た小狐丸に対して長谷部が「まさか、休日中の主の部屋へ要もなく行ったりしてないだろうな?」と問いただしていた。別に要事がなければ部屋に来てはいけないルールはないのだが、問いただされている小狐丸は涼しげな顔で長谷部を見ていて、特段困った様子はないので黙って見守ることにする。
「意外と美味いな……」
「おーなんだあんたもいける口か?」
「じゃんじゃん飲んじゃえ〜」
一口飲んで飲みやすさに驚く、味もサッパリしていて水を飲むように缶チューハイを空にしてしまった。その様子を長谷部、小狐丸、太郎さんが心配そうに見守っていたがもう飲んでしまったのでどうしようもない。
おつまみを食べながら次郎と日本号と騒いでいたがなんだかボーッとしてきた。酔いが回ってきたのだろうか? ドクドクと脈打つ感覚に体が暖かくなる不思議な感覚だ。
「——でさーその時に、あれ?」
「なんだ、これからだろうに」
「貴様ら‼︎ 主に無理をさせるな!」
「ぬしさま、ぬしさま。ここで眠られてはお体を崩しますよ」
「……」
「どうやら、眠ってしまった様です」
「まったく仕方のない方だ……俺が部屋までお運びする」
「私がぬしさまをお送り致しますのでご心配なく。宴の続きを愉しまれるのが良いでしょう」
「俺が」
「私が」
「なんだい、なんだい、酒の席で喧嘩かい?」
「ここには酒があるんだ。これで白黒つけるんだな」
「じゃあ、飲み比べで勝った方にはあの子を部屋まで連れて行く権利を贈呈〜よーいドン!」
「太郎太刀、主を見なかったかい?」
「そこで眠っています」
「おーい大将、それに旦那方も風邪ひくぞ」
「無理無理〜起きないよ〜勝負は両者泥酔の引き分けで、次郎さんつまんなーい!」
「勝負?」
「どちらかが主を部屋に送り届けかを決める飲み比べをしていました」
「まったく……俺が主を連れて行くよ」
「よろしくお願いします」
「よっろしく〜」
「任せたぜ」
「まったく貴女は何をしているのかと思えば……」
「……」
「この本丸の主は貴女なんだ。もう少し主としての威厳を持って行動して欲しいよ」
「……」
「大将、起きてるんだろ?」
「バレてたか……」
薬研の問いに目を開く。蜂須賀の小言は面倒臭いのでできれば寝たフリをしていたかったが、薬研に問われたのなら起きるしかない。
「やー……実は酔いが覚めて勝負の途中から目を覚ましたんだけど、二人の勝負が白熱してて起きるに起きれなくなっちゃった、まる」
蜂須賀がため息を吐き私を下す「蜂須賀にプリンセスフォールドされるとか特役だったわ〜」と笑いながら一言。呆れ顔の蜂須賀を笑って誤魔化す作戦、面倒なお説教は回避すべし。
「君が倒れたらこの本丸は駄目になるんだよ? 主なら分かっているはずだよ」
「それぐらい分かってますよー。つーか、缶チューハイ一本で騒ぎすぎ」
「大将、普段から飲まないんだから勢いで飲んだりしたら危ないし気をつけてくれよ?」
「……はい」
彼らには私の行動が読まれているらしい。薬研に注意され大人しく返事をする。やっぱり蜂須賀の小言より薬研の心配の方が私に与えるダメージが大きいようだ。
慣れない事はするもんじゃない。もう酒は控えようと心に誓った。
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