審神者、監督生になる。
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ここが鏡の間です」
学園長に案内され、戻ってくる事になった鏡の間。
私が目覚めたあの棺で眠れば、次目が覚めたら本丸で何事もなかったように日々の生活に戻れる。みたいな、特殊機能が付いていないものか……そんな機能、付いてるわけがないよな。
「違いますよ!」
「あ、来た」
おっと、私がくだらない現実逃避をしている間に学園長は何か否定をする為に、鏡の間へ入っていってしまった。学園長の後を追うしか今の私には選択がないようだ。
冷静に考えてみると、入学式の途中から参加するのは非常に目立ってしまうの行動ではなかろうか。
「まったくもう。新入生が一人足りないので探しに行ってたんです。さあ、寮分けがまだなのは君だけですよ。狸くんは私が預かっておきますから、早く闇の鏡の前へ」
「ふぐぐー‼︎」
目立つ。そう思っただけで体が硬直する。謎生物が何か言っていたがそれどころではない。一刻も早くこの状態から解放されべく私は闇の鏡の前に立った。
「汝の名を告げよ」
「翼だ」
「ツバサ……汝の魂のかたちは……」
長い沈黙が続く。こんな状況でなければ鏡との会話も楽しめたであろうが、今は飛び入り参加の入学式途中だ。是非ともこの闇の鏡殿には、早く寮分けをしていただきたいものである。
「わからぬ」
「なんですって?」
「この者からは魔力の波長が一切感じられない……色も、形も、一切の無である。よって、どの寮にもふさわしくない!」
闇の鏡の言葉に騒然とする入学式会場。あるのは霊力で魔力なんてものは私には存在しないのだから、当たり前の結果である。だが、これは人見知り&ビビリの私に対しては公開処刑と等しい扱いではないであろうか。
誘拐され式の途中から飛び入り参加。そして極め付けに、鏡からお前には資格がないと言われるなんてなんて事だ。これでも私は本丸の主だぞ、不敬だ。ツラ貸せ、叩き割ってやる。
「魔法が使えない人間を黒き馬車が迎えに行くなんてありえない! 生徒選定の手違いなどこの100年ただの一度もなかったはず。一体なぜ……」
「知りませんよ。むしろこっちが聞きたいぐらいです」
「だったらその席、俺様に譲るんだゾ!」
「あっ待ちなさい! この狸!」
「そこのニンゲンと違ってオレ様は魔法が使えるんだゾ! だから代わりにオレ様を学校に入れろ! 魔法ならとびっきりのを今見せてやるんだゾ!」
「みんな伏せて!」
学園長に捕まっていた謎生物が抜け出し、魔法といいながら口から青い炎をはいて見せた。私は赤髪の少年の言う通りに伏せその炎をかわした。「うわあ‼︎ あちちちっ! 尻に火が!」とターバンをした青年はどうやら炎を受けてしまったらしい。
「このままは学園が火の海です! 誰かあの狸を捕まえてください!」
「チッ……かったりぃな」
「アラ、狩りはお得意でしょ? まるまる太った絶好のオヤツじゃない」
「なんで俺が。テメェがやれよ」
褐色の男と女性のような美しい男はどうやら動く気がないようだ。なんだろう、学園長の人徳がないのか彼等にやる気がないのか。……両方かもしれない。
「クロウリー先生、おまかせください。いたいけな小動物をいたぶって捕獲するというみなさんが嫌がる役目、この僕が請け負います」
「さすがアズール氏。内申の点数稼ぎキマシタワー」
「なあ、誰かオレのケツの火ぃ消してくれてもよくねえ⁉︎」
「みなさん、私の話聞いてます⁉︎」
点数稼ぎって重要だよな。眼鏡男子の言葉に頷き合うながら、さすがに可愛そうになりターバンの青年のケツの火を消火を手伝う。焼死とかやだよね。火傷とかも痛くてやだ。
それより入学式をタブレットで参加が許されるとか、羨ましすぎる。某もタブレット参加がよかったでござる。
火を消しながら謎生物、グリムを見る。眼鏡男子と赤髪の少年が捕縛に動いている。彼等の手には宝石が付いている黒い枝のような物が握られている。魔法映画に出てくる杖とは違い短く太い印象だ。しかし、映画のようにその黒い物から魔法らしき物が放たれる。そのファンタジーな光景に純粋に感動してしまう。
ターバンの青年の消火を終えと同時に赤髪の少年が「|首をはねろ‼︎《オフ・ウィズ・ユアヘッド》」と唱える。するとグリムの首に枷がはまった。
ターバンの青年がお礼を言っていたが、なんと返せばいいのだろうか当たり障りなく「まるこげにならないで良かったですね」といい学園長の元に戻る。
「ハートの女王の法律・第23条『祭典の場に猫を連れ込んではならない』猫であるキミの乱入は重大な法律《ルール》違反だ。即刻退場してもらおうか」
「オレ様は猫でもねぇ〜っ‼︎ こんな首輪すぐにも燃やして……あ、あれ⁉︎ 炎が出ねぇんだゾ!」
「ふん! ボクがその首輪を外すまでキミは魔法を使えない。ただの猫同然さ」
「にゃ、にゃにー⁉︎ オレ様はペットじゃねーんだゾ!」
「心配しなくてもキミみたいなペットこっちから願い下げだ。ま、学園からつまみ出される頃には外れてるよ」
狸でもなく猫でもないならグリムはなんなのだろうか、犬? 狐? まあ、私には関係ない事ではあるが気にはなるものだ。
赤い少年がグリムにはめた首枷はどうやら魔法を封じるユニーク魔法らしい。眼鏡男子が言っていた。
「どうにかしてください! 貴方の使い魔でしょ⁉︎しっかり躾を」
「私のペットじゃないです」
「え? 貴方のじゃない?」
「さっきも言いました」
「……そ、そうでしたっけ?」
学園長が詰め寄ってくるが、図書室でも言った通りである。所構わず放火する駄犬なんて、頼まれたとしてもペットにはしたくないものである。
「ごほん! では、学園外に放り出しておきましょう。鍋にしたりはしません。私、優しいので。誰かお願いします」
「ぎにゃー! 話すんだゾ! オレ様は……絶対、絶対! 大魔法士になってやるんだゾー……!」
必死に訴えるグリムの抵抗も虚しく、外へ連れ出されて行く。学園長は放り連れ出されたグリム見送ると入学式の閉会を宣言した。各寮長に新入生を連れて戻るように指示をだす。そこで、ディアソムニア寮の寮長が入学式に来ていなかったことが発覚したのだが、それでいいのだろうか。
タブレット参加が認められたり、寮長の不在が最後まで指摘されなかったり、新入生に魔力のない者が誘拐されてきたり、式典が火の海になりかけたり……この学園長にしてこの学校ありといったところだ。この学校、大丈夫ではない。ヤバイ学校だ。
生徒達が鏡の間から出て行く。私と学園長だけがその場に残る。これで帰れるのだろうか……証拠隠滅で消されたりしないか、不安である。
「さて、ツバサさん。大変残念なことですが……貴方には、この学園から出て行ってもらわなければなりません。魔法の力を持たない者をこの学園へ入学させるわけにはいかない。心配はいりません。闇の鏡がすぐに故郷へ送り返してくれるでしょう。さあ、扉の中へ。強く故郷のことを念じて……」
学園長に諭され私は闇の鏡の前へ立つ。これで帰れるらしい。なんとも賑やかな時間だった。きっと朝には自分のベットで目が覚めるんだ。近侍が——長谷部が起こしに来てくれて、私の本丸で私は何気ない一日を過ごす。
二年間本丸を留守にした私だ。これくらいの罰は甘んじて受けよう。この夢が覚めたら本丸の為に仕事を頑張ろうと、私は闇の鏡に触れたのだった。