SS 審神者監督生
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「あっ! ボスだ‼︎」
「ボス?」
授業が終わり、食堂に向かう途中でレオナ先輩の姿を見つけた。レオナ先輩もこれから食堂に行くのだろうか、だとしたらタダ飯のチャンスである。
私はいつもの調子でレオナ先輩をボスと呼び手を振った。隣にいたツノ太郎にはボスが誰だかわからないようだ。それもそうだろう、私は基本的に媚を売る時にしかレオナ先輩をボスと呼ばないのだ。
今日はツノ太郎と一緒に授業を受けていた。グリムとは別行動であるが、監視にはくろのすけとフリューゲルが付いているので問題はない。ツノ太郎と一緒に授業に出ると勉強が捗るのだ、この貴重な時間をグリムに邪魔されるわけにはいかない。
魔法の知識なんてない私がこの世界の授業についていくには、頭の良い人に勉強を教えてもらうのが手っ取り早い。幸い私の知り合いには勉強が出来る人が多い。が、好意的に無条件で勉強を教えてくれる知り合いは少ないという現状である。そんな中でツノ太郎は私に勉強を教えてくれる貴重な存在である。
「キャンキャン吠えるな。チッ……トカゲ野郎もいるのかよ」
「キングスカラーか」
「私今腹ぺこでキャンキャン吠えたくもなりますよ。私達これから食堂に行くんですけど、ボスも食堂に行きますか?」
「はっ! お前はこの状態で俺が行くと思うのか?」
レオナ先輩はツノ太郎と仲が悪いのだろうか。不機嫌そうなオーラをヒシヒシと感じる。これではレオナ先輩に奢ってもらうのは無理そうだ。だとしたら触らぬ神に祟りなし、さっさと食堂に行こう。
「えー⁉︎ ボス行かないんですか? せっかく奢ってもらえるチャンスだったのに〜残念です。じゃあ、また次の機会に」
「なんだ、人の子。施しが欲しかったのか? なら、僕が与えてやろう。何が欲しい? 黄金か? それとも——」
「えっ? 黄金とかツノ太郎スケールデカ過ぎ、それにタダで貰うのは悪いしいらない」
ツノ太郎からまさかの金やる発言を頂いてしまった。黄金は大好きだが今欲しいのは食事である。それに今日、私はツノ太郎には勉強を教えてもらったのだ。そのお礼もしないで逆に物を受け取るなど出来るはずもない。なのにツノ太郎は不服そうな顔をする。
「ふっ……気が変わった。ペットの餌を与えるのはご主人様の役割だよな? 行くぞ、愛玩動物」
「えっ? レオナ先輩? えっ? この状況で?」
そんなツノ太郎の様子を見てレオナ先輩は機嫌を良くしたようで、私の頭をぐしゃりと撫でると今度は早く歩けと言わんばかり頭を前に押してきた。レオナ先輩の機嫌が良くなると今度はツノ太郎の機嫌が悪くなるこの状況を私は一体どうすればいいのか、タダ飯に目が眩んだ罰が重過ぎる。思わずレオナ先輩を見上げると凄い意地悪な顔が目に入ったのだった。
それから三人で食堂に向かったのだが、道中が凄かった。不機嫌なツノ太郎と上機嫌なレオナ先輩に挟まれ食堂に向かったのだが、あのNRCの生徒達が道を空けるのだ。私一人だと彼奴ら突っかかってくるくせに。ちゃんと喧嘩を売る相手は見ているらしい。腹立たしい。でも、生徒達の気持ちが解らんでもない。ツノ太郎もレオナ先輩も偉そ——ではなく王者の風格がある。余程の命知らずか馬鹿でない限り、一度に二人の王者に喧嘩を売る奴はいないだろう。
「ほらよ、愛玩動物。俺がお前に恵んでやるよ。好きなもん買ってこい」
「よっしゃ! ボスはいつもので大丈夫ですか?」
「ああ、任せる」
食堂に到着すると、レオナ先輩は早々に座ると財布を投げよこしてきた。レオナ先輩の食事を買いにいけば同時に自分の分の食事も買って頂ける簡単なお仕事である。ありがたい。
「ツノ太郎はどうする? よければ一緒に買ってくるけど」
ツノ太郎も王族なわけだし、自分で食事を取りに行ったりはしないだろう。今はセベクやシルバーがいないのだ、その代わりを私が勤めるとしよう。
「人の子。お前はよくキングスカラーと食事をするのか?」
「ん? まあ、たまにかな。ボスの飯買いにいくついでに私の飯も奢って貰うみたいな感じ」
「キングスカラーからの施しは受け取れて、なぜ僕の施しは受け取れない」
「何でって。ボスはいつも買ってくれるし、今更遠慮する事もないし、そもそもこれは高額バイト的な感じだし」
はっきりいって何故といわれても困るのだ。レオナ先輩と私の関係性はこんな感じである。レオナ先輩にも特に深い意味はないだろう。ただ買いに行くのがめんどくさいので代わりに買ってくればお前の飯代も出してやる、といったところであろう。もしも特別な意味があったとすれば、放し飼いにしてる珍獣にたまには餌を与えてやる、ぐらいのものである。
「……僕も一緒にいくとしよう」
「えっ⁉︎ ツノ太郎が学食買いに行くの⁉︎」
「なんだ。僕が買いに行くのが、そんなにおかしいのか?」
「学生だしおかしくはないんだけどさ。意外かな? んじゃ、ボス買ってきますね! 行こうツノ太郎」
頬杖をついてニヤニヤと意地悪そうにツノ太郎を眺めるレオナ先輩を残し二人で食事を買いに向かう。結構生徒も多い時間だ、少し並ぶ事になりそうだ。学食の列に王族が並ぶ絵面はなんともシュールな光景だろう。もしかしてレオナ先輩はツノ太郎(王族の第一王子)が自ら列に並ぶ様子が見たかったのかもしれない。それを後から小馬鹿にしてからかうつもりかもしれない。ボス、器が小さいッスよ。
「うそ……だろ?」
「どうした、人の子。選ばないのか?」
ツノ太郎パワー恐るべし。あれだけ並んでいた生徒がツノ太郎の姿を確認した瞬間に蜘蛛の子を散らすようにいなくなった。ツノ太郎にとって人から避けられるのはいつものことなのだろうか、動揺している様子はない
でも今はすぐに買えるのだからありがたい。とりあえずツノ太郎を拝み買うものを選ぶ。レオナ先輩の奢りだ、遠慮せず良いものを食べよう。あと自腹でバニラアイスを買う。
ツノ太郎も買い終えたようだ。さすが王族である学食の中でも高いメニューだ。バニラアイスは買っていないようで良かった。
「はい、ツノ太郎」
「? これはなんだ?」
私によってのせられたバニラアイスを見ながらツノ太郎は首を傾げる。
「今日勉強教えてくれたじゃん? だからそのお礼。あ、これちゃんと自腹だからね!」
「僕に?」
「うん。あ、バニラアイス駄目だった? ツノ太郎氷菓子好きだって言ってたからさ〜高い物じゃなくて申し訳ないけど、よかったら食べてよ」
「そうか。人の子からこの僕に……贈り物か」
驚いた様子を見せながらツノ太郎は意味深げに笑う。先ほどまでの不機嫌さは姿を隠したようだ。そんなにバニラアイス好きなのか、今度ツノ太郎がピリピリしてる時はバニラアイスを渡すとしよう。
機嫌の良くなったツノ太郎とレオナ先輩の待つテーブルに戻った時、今度はレオナ先輩の機嫌が悪くなった。この二人は感情がシーソーのようになっているのではないだろうか、バッタンバッタンと入れ替わる機嫌を横目に豪華な食事にありつく。
ツノ太郎もレオナ先輩もオーラが凄い。私に被害が及ぶ事はないのだけれど、周りの生徒達は居心地が悪いはずだ。しかし私には周りへの配慮よりも豪華な食事を頂くのに忙しい。
「ボス、美味しい食事が冷めちゃいますよ〜ツノ太郎もアイス溶けちゃうし早く食べなよ」
子供のような言い争いをしてる二人に声をかける。やっぱり美味しい物は美味しいうちに食べるに限る。