これが私の本丸です。
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私が本丸を離れて、二年が経った。長期間本丸を留守にするなんて、審神者として褒められた行動ではない。
勿論、審神者として与えられた仕事は本丸を留守にしていた間もこなしていたが、二年も私用で本丸を留守にした罰であろうか、今の私は本丸に、物凄く帰り辛い状態なのだ。
その理由は簡単で帰還前に一度本丸へ連絡を入れたところ、通信越しにも伝わる程に彼等は浮き足立ったのだ。それはもうお祭り騒ぎで、そんな彼等を目の前にすると罪悪感や気まずさが一気に押し寄せた。
私は、いったいどんな顔をして彼等に会えばいいのだろうか。帰ると連絡をいれてしまった為に、今更帰らないという選択肢は選ぶ事が出来ない。
自業自得とはいえ私は心の準備も出来ないままに、本丸へと帰還する事になった。
「主、お帰りなさいませ! 貴方のご帰還をこの長谷部、心の底よりお待ちしておりました」
「長谷部……お前、どうしてここに」
目の前で正座をし見上げてくる近侍、へし切長谷部の姿を見て私は驚いた。ここは正門ではなく裏門だ。最後の悪足掻きとして私は裏門を選んだ。
裏門から入り一度自室に戻り、不在中に積まれたであろう書類を捌きつつ一度心を落ち着けて、その後何事も無く彼等の前に現れ彼等を驚かし、長期不在の主帰還式ムードをぶち壊す目論みだった。
「お帰り。まさかあなたが二年も本丸を不在にするなんて……きみは俺達の主としての自覚を」
「まぁまぁ蜂須賀の旦那、今は大将の帰還を喜ぶ事にしようぜ?」
「蜂須賀! 薬研! お前達まで何で此処にいるんだ⁉︎ ふ、ふざけんなよ、ここは裏門だぞ。普通は正門で待つべきだろ」
長谷部だけではなく、初期刀と初期鍛刀の二人にも私の思考は筒抜けだったらしい。気恥ずかしさを誤魔化す為に悪態をつく。
「大将ならこっちから入ってくるだろうからな。お帰り大将、大将が無事ならそれでいい。大将も戻ってきたし本丸も賑やかになるな」
正直、蜂須賀の説教より穏やかに笑う薬研の言葉に罪悪感を覚える。
「まぁ……そうだな。二年もサボってた訳だしな。なんだ、その……長谷部、蜂須賀、薬研、お前達にも迷惑をかけた……ごめん」
「迷惑など! 主の為にこの長谷部はいるのですから、主が気負う必要はありませんよ」
「長谷部、きみは主に甘過ぎるんじゃないかな? でも、そうだね。今回の事は主も反省しているみたいだ、俺からいうことは何もないよ」
「よかったな大将、じゃあ一度部屋に戻るか?」
長谷部が私に甘いのはいつもの事だが、蜂須賀も薬研も私に対して甘過ぎるだろうと、自室に戻るまでの間に心の中で訴る事にした。
大体、この本丸の九十九神様は人間に甘過ぎる。だからこんな駄目主がのさばるのだ。まぁ、彼等が優しいからこそ私は主を続けられているのだが。
「お帰りなさいませ、ぬし様! ささ、ぬし様、思う存分この小狐めの毛並みをご堪能くだされ」
「お帰りなさい、ご主人様! こんなに放置されるなんて、僕は……ありがとうございますご主人様‼︎」
「待っていたぞ、主。荷解きは俺に任せてくれ、主はそこで休んでいるといい」
想定はしていたが自室に戻ると、小狐丸、亀甲貞宗、巴形薙刀の三振りが待っていた。そんな彼等を見て「なぜ貴様らがここにいる⁉︎ 主の不在中に勝手に部屋に入るな‼︎」と長谷部が吠えた。部屋に入るぐらいでどうこういう事でもないだろうと、長谷部をなだめる。
「ただいま〜あー……二年ぶりのモフリ! さすが小狐丸の毛並みだな、たまらないモフモフ感。亀甲、お前は相変わらずだな。二年も『まて』させたしな……私の椅子にでもなるか? 巴ありがとう、任せた!」
「ええ、小狐めはぬし様を想い日々、この毛艶を保っておりました」
「そんな! ご主人様からのご褒美なんて、たまらない‼︎」
「ああ、任せてくれ。すぐに終わらせる」
荷物を巴形に任せ、嬉しそうに四つん這いになり、はぁはぁと息を荒らす亀甲の上に腰を下ろした。擦り寄ってくる小狐丸の毛並みを堪能しながら、長谷部の取り出した審神者にしか扱えない書類を処理し始める。
その様子を見て薬研は笑いながら、蜂須賀は頭を抱えると「みんなにも伝えてくる」と部屋を後にした。
本当にとことん主には甘い刀剣男士達である、これだから主が駄目になるのだ。ありがたい事である。
「じゃあ、さっさと終わらせるとしようか」
溜まった仕事を片付けて彼等に謝りに行こう。そう意気込んで仕事に取り掛かる、この量なら夕食の時間までには終わるだろう。
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