プロローグ
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『…我ながら惚れ惚れする出来栄えよ』
薄暗い闇の中、不気味に発光する液体の入ったビンを片手に女は微笑んだ。
女の表情は慈愛に満ちていて愛おしそうにビンを見つめる。
一頻り見つめるとビンを棚に置き棚を閉めようと扉に手を伸ばした。
その時ーー
「プリシラ!プリシラ!!助けてくれ!!」
部屋に滑り込むように入って来た少年は女、プリシラの後ろへと身を隠した。
『あら、エミーゼル。どうかしたの?』
「フーカのヤツが!!」
「おねえさま!エミーゼルさんを発見したデス!」
「出来したデスコ!アンタもいい加減アタシの豪速球を受けなさい!」
エミーゼル、デスコとフーカの登場により静かだった部屋はたちまち賑やかになる。
二人の登場によりガタガタと震えながらプリシラの服を掴んで離さないエミーゼルは更に身を縮こませた。
どうやらフーカから逃げて来たらしい。
『状況は理解したわ。エミーゼル……服が、伸びるのだけれど』
「あっ!ごめん」
プリシラの言葉にエミーゼルは素直に手を離す。
「ちょっとーープリシラ部屋暗過ぎじゃない?電気ぐらいつけなさいよ、今以上に性格悪くなると行けないし」
『本当に失礼な子だわ』
フーカの言葉にプリシラは大きく息を吐くと、棚から離れ部屋の灯りをつけた。
そうして四人の姿がハッキリとわかるようになる。
「チャンス!!」
「うわぁぁっ!!」
するとその機会を待ってました!と、言わんばかりにフーカはエミーゼル目掛けてボールを投げつけた。
エミーゼルは思わず背後に後ずさる、体が棚にあたり同時にガチャン!!と大きな音が響く。
それ以上下がる事が出来ず、来たる衝撃に備え目を瞑り歯を食いしばるが、いつまで経っても来ない痛みにエミーゼルは恐る恐る目を開ける。
エミーゼルの目の前には闇を司るような黒い手があり、そしてその手にはフーカの投げつけたであろうボールが握られていた。
その手の持ち主は静かな声でフーカに言葉をかける。
『ここはわたくしの部屋よ……遊ぶなら他の場所になさい』
パンっ!!と音をたてて黒い手により握り潰されたボールが弾け飛ぶ。
「ぎゃーー!!プリシラが怒ってる!!行くわよ!デスコ!!」
「プリシラさん!ごめんなさいデス!!」
静かながら殺気の含んだ声にフーカとデスコは嵐の如くとその場を後にした。
「助かった…プリシラありがとな」
『あら、何のことかしら?わたくしはわたくしの部屋を荒らす者を追い払っただけよ。
ここは薬があって危ないわ、エミーゼル』
「…そっか、ごめんプリシラ」
『謝る必要はなくてよエミーゼル。それよりもわたくし手が空きましたので部屋を片付けてたらお茶でもどうかしら?』
「!!…ならボクも片付け手伝うよ!二人の方が早く終わるだろ?」
『ええ、そうね。ならお願いしようかしら』
「さっさと終わらせ、ああっ!!」
言葉の途中で大声を上げたエミーゼルが指差した先の棚を見た瞬間、プリシラは本能的にソレに手を伸ばした。
先程エミーゼルがぶつかった拍子に薬品を入れていたビンなどが倒れたのであろう、棚の中で混じり合った薬品は閉めていなかった扉を伝ってポタポタと下に垂れて机を汚している。
薬品で机が汚れるだけなら特に問題は無いのだが、その机の上にはプリシラの大切な物が置いてあったのだ。
それを取ろうと手を伸ばした時、ソレは突如二人の目の前から消えた。
『っ!?』
「き、消えたぁぁ!?」
突然の出来事に言葉が出ずフリーズしていたプリシラであったが、我に返ると消えた場所を指でなぞり手に付いた薬品を眺める。
徐に引き出しからビンを複数取り出すと薬品を回収していく。
「おっ、おい!!危ないぞっ!!」
その様子にエミーゼルはおろおろと慌て手に付着した薬品を拭き取れるような物を探しはじめる。
『心配ないわ。それよりエミーゼル、ヴァル様に言伝を。
“心配はご無用ですわ、わたくしは必ずあなた様の元に”と…あと“わたくしの部屋は危ないので立ち入らないように”と皆様に』
「えっ!?う、うん…?」
『それでは…ごきげんよう』
素早く散乱した棚を片付けた終えエミーゼルの頭を撫で静かに微笑むとタイミングを見計らったかのように会釈をし、プリシラの姿が消える。
「ええっーーー!!プリシラーーー!?ヴァルバトーゼ!!プリシラがプリシラが!!」
目の前で消えたプリシラにエミーゼルは驚き泣きそうな声を出しつつも目の前で起こった事を伝えなければとヴァルバトーゼの元へと走って行く。
エミーゼルが走り出し、主人が消えた部屋では不気味に発光する液体の入ったビンが残されていた。
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