怪奇譚
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神降由依は雑魚だ。
呪力はまともに練れないし、体術も幼稚園児のケンカかってぐらいにヘボい。
口喧嘩でも勝つところを見たことがなく、同期である一年生の七海と灰原にさえ格段に遅れをとっている。
雑魚の中の雑魚、ベストオブ雑魚だ。
グラウンドにて体術の授業中、いまも神降が夏油を相手に、数撃ちゃ当たるなパンチを繰り出しているが、どれもこれも相手へ届く前にぺちぺちといなされている。
まだ蚊のほうが死角を突くのが上手いくらいだ。
「お前さぁ、才能ないんだから、とっとと術師辞めれば?俺も傑も暇じゃないし、いつまでも幼稚園児の面倒なんてみてらんねーよ」
「五条先輩・・・」
草原の傾斜に腰かけて二人の組手を眺めていた五条が、思ったことをそのまま口にしてやれば、神降は泣きそうなのを誤魔化すように眉尻を下げて、へにゃりと笑った。
そこへすぐさま夏油が、幼稚園児は言いすぎだよ、と五条を窘めにかかったが、そのあとで「せめて小学生にしな」と付け足したものだから台無しだった。
「・・・・・・夏油先輩、今日も組手の相手をしてくださって、ありがとうございました。あとは・・・灰原くん達に頼んでみます」
「そうだね。組手を始めてから休憩を挟んでいないし、続きはちゃんと涼んでからにするんだよ」
「・・・はい」
オブラートという言葉を胎に忘れてきた男と、天然な男による悪気のないフォローというダブルパンチを喰らい、見るからに肩を落とした後輩には夏油も頷くしかなかった。
「さっき悟が言ったことは気にしなくていい。私でよければ、いつでも声をかけてくれていいからね」
「あ、と・・・・・・ありがとう、ございます・・・」
「過保護かよ」
「悟、やめな」
「事実だろ」
「はあ・・・・・・少しは後輩を可愛がる気持ちを持ったらどうだ」
背を丸めて重い空気を背負い、グラウンドから遠ざかっていく神降の姿が鳥居の向こうへ消えたのを見送った夏油は、空き缶片手に寛ぐ五条に近寄った。
「彼女、術式は受け継いでいるんだろう?」
「この眼で視た限りは。でも完全に宝の持ち腐れ」
「だからといって、あまり苛めてやるもんじゃない。今後もし、神降が術式をモノにしたら、いくら君でもタダでは済まないかもしれないんじゃなかったかい」
「ずぇーったいに、あり得ないね。呪霊を前に腰抜かすようなヘタレが今さら開花なんてするかよ」
五条の手のひらでスチール製の空き缶が、まるで紙屑でも丸めるように、くしゃりと音を立てて圧縮された。
「それに万が一、開花することがあったとして、俺が負けるわけあるかよ」
摘まめるサイズにまで体積を減らしたソレを指先で弄びながら、五条はここにいない後輩に向けて呟いた。
――翌日。
神降由依は術式の発動に成功すると同時に、呪術高専から姿を消した。
呪力はまともに練れないし、体術も幼稚園児のケンカかってぐらいにヘボい。
口喧嘩でも勝つところを見たことがなく、同期である一年生の七海と灰原にさえ格段に遅れをとっている。
雑魚の中の雑魚、ベストオブ雑魚だ。
グラウンドにて体術の授業中、いまも神降が夏油を相手に、数撃ちゃ当たるなパンチを繰り出しているが、どれもこれも相手へ届く前にぺちぺちといなされている。
まだ蚊のほうが死角を突くのが上手いくらいだ。
「お前さぁ、才能ないんだから、とっとと術師辞めれば?俺も傑も暇じゃないし、いつまでも幼稚園児の面倒なんてみてらんねーよ」
「五条先輩・・・」
草原の傾斜に腰かけて二人の組手を眺めていた五条が、思ったことをそのまま口にしてやれば、神降は泣きそうなのを誤魔化すように眉尻を下げて、へにゃりと笑った。
そこへすぐさま夏油が、幼稚園児は言いすぎだよ、と五条を窘めにかかったが、そのあとで「せめて小学生にしな」と付け足したものだから台無しだった。
「・・・・・・夏油先輩、今日も組手の相手をしてくださって、ありがとうございました。あとは・・・灰原くん達に頼んでみます」
「そうだね。組手を始めてから休憩を挟んでいないし、続きはちゃんと涼んでからにするんだよ」
「・・・はい」
オブラートという言葉を胎に忘れてきた男と、天然な男による悪気のないフォローというダブルパンチを喰らい、見るからに肩を落とした後輩には夏油も頷くしかなかった。
「さっき悟が言ったことは気にしなくていい。私でよければ、いつでも声をかけてくれていいからね」
「あ、と・・・・・・ありがとう、ございます・・・」
「過保護かよ」
「悟、やめな」
「事実だろ」
「はあ・・・・・・少しは後輩を可愛がる気持ちを持ったらどうだ」
背を丸めて重い空気を背負い、グラウンドから遠ざかっていく神降の姿が鳥居の向こうへ消えたのを見送った夏油は、空き缶片手に寛ぐ五条に近寄った。
「彼女、術式は受け継いでいるんだろう?」
「この眼で視た限りは。でも完全に宝の持ち腐れ」
「だからといって、あまり苛めてやるもんじゃない。今後もし、神降が術式をモノにしたら、いくら君でもタダでは済まないかもしれないんじゃなかったかい」
「ずぇーったいに、あり得ないね。呪霊を前に腰抜かすようなヘタレが今さら開花なんてするかよ」
五条の手のひらでスチール製の空き缶が、まるで紙屑でも丸めるように、くしゃりと音を立てて圧縮された。
「それに万が一、開花することがあったとして、俺が負けるわけあるかよ」
摘まめるサイズにまで体積を減らしたソレを指先で弄びながら、五条はここにいない後輩に向けて呟いた。
――翌日。
神降由依は術式の発動に成功すると同時に、呪術高専から姿を消した。