この壁の中は地獄だ。
狭い壁の中へぎゅうぎゅうに押し込められた人類。
その中に少しだけ、人類を”管理する”層がいて、変わらぬ平和に綻びがないか、常に目を光らせている。
彼らは綻びを見つけると、それをしかと結び直すべく動き出す。
そしてその綻びとされた人々は、逃げ場などないまま一方的に命を奪われる。
たとえ命からがら逃げ延びることができたとして、行きつく先は日の当たらない場所だ。
そして二度と陽の光を浴びることは叶わない。
そのことを、まだ年端の行かぬ一部の子供達は理解していた。
理解した上で強く在ろうとした。
彼女も、そんな子供の内の一人だった。
――アリシア・フェリシスタス。
幾多の刃傷沙汰を引き起こし、憲兵にさえ傷を負わせたその人物は、ある年を境に調査兵団へと身柄を引き取られる。