｢はあっ、はあっ、……っ！｣
暗い森の中、不気味な月に照らされて私は走った。
昼間の雰囲気とは打って変わって、不自然なほどの静寂があたりを包み、飲み込まれてしまうのではないかと恐ろしくなる。

いや、きっと私の考えすぎだ。
夜というだけでこんなに恐れるなんて、クラピカの言うとおりまだ子どもなのかもしれない。

そんなことを考えながら、前に前に進む。
ただ今は首飾りを取り戻すことで頭がいっぱいだった。

はやく！はやく！

懸命に手足を動かし、乱れる呼吸にも構わずに走った。

ーーーー
やっと木のトンネルにたどり着いた。
｢はっ…、はっ…｣
夢中で走った為、喉がヒリヒリと痛む。
呼吸を整えながら中に入り、川の周辺を探す。

真夜中では手元が見えず、手探りで昼間に遊んだ場所を辿る。
｢確かここら辺に置いたはず…｣
必死に探すが中々見つからない。
｢こっちだったかな…？｣
｢このあたりだったかも…｣
思い当たる場所を当たれど一向に見つからない。

どうして…、どうしてないの…？

この状況は彼への想いが軽薄なもので、ただ恋に憧れて形作られた偽物であると、ここの場所から揶揄されているように感じた。

だんだんと焦る気持ちから、首飾りはもう手元に戻ってこないのではないか、クラピカは私を軽蔑するだろうかと悲観的な気持ちになる。
時間はどんどん過ぎていく。
夜の暗さや静寂がまるで私を責めるように深く、深く取り囲む。

どうしよう…、クラピカに初めてもらったプレゼントをなくすなんて…。
お願いっ…、出てきて…、

お願い！

そう願ったとき、一瞬月の明かりが川の一点を照らした。
するとまるで月が示すかのように、あの青いきらめきを照らした。
一瞬の輝きを見逃さず、すかさず川に飛び込む。
暗闇の中の一筋の光を掴むように手を伸ばす。

｢あった…。よかった…っ！よかった…っ！｣

ほっとして視界がぼやけ、ポロリと涙がこぼれた。
私は拾い上げたそれを二度と離さぬよう両手でつつみ、そして首にかけた。

水滴のついた石は、私のひとすじの涙のように青く煌めいていた。