｢こっちこっち！｣
一刻も早く連れて行きたいのか、駆け足で進むパイロは時折目を輝かせながらこちらを振り返る。
その姿はまるで弟のようだった。
父以外に家族のいない私にとって、それは胸を熱くするものであり、眩しい宝物に見えた。
パイロだけではなく、このクルタ族の皆は私に家族のように接してくれる。いつか私も本当の家族になれる日がくるかも…、なんてくだらないことを考えていると、横からふふっと笑い声が聞こえた。
｢クラピカ？ どうしたの？｣
｢ミアは本当に面白いな。｣
と愛おしげな目でこちらを見つめる。
｢わかる！ミアって泣いたり笑ったり、見てて飽きないよね！｣
屈託のない笑顔を向けるパイロとクラピカに見つめられ、
｢私は私で色々考えてるんだもん！｣
とミアは恥ずかしさを振り払うように声を上げる。
まあまあと二人になだめられ歩いていくと、パイロは｢こっちだよ！｣と言って道の横にある茂みへと入っていく。
（本当にこの先に良い場所なんてあるの？）
そんな疑問を抱きつつ、パイロの後についていく。

ーーーー
しばらく歩くと木でできたトンネルが目の前に現れた。
｢これは…｣
｢すごいでしょ！たまたま見つけたんだー！｣
｢パイロ隊長！！大発見ですね！｣
冒険話が好きなパイロにそう言うと腰に手を当てふふん、と誇らしげな表情をみせた。
すると奥はもっと凄いんだ、と言ってまた私たちを案内する。
森のトンネルを抜けると、そこには清らかなせせらぎや普段見ないような花に溢れた場所だった。
小鳥のさえずりが響き、穏やかな景色はまるで…
｢天国みたい…｣
その表現がぴったりな場所であった。

ーーーー
見慣れない花にすっかり興味津々の私とパイロは、花を集めてブーケを作ったり、花びらを集めて瓶に詰めたり、小鳥を観察したりと思う存分に満喫していた。
クラピカは
｢見たことのない花や鳥がこんなにいるとは。帰ったら調べてみよう。｣
と手帳に記録したりと何やら楽しそうだ。
熱心に観察する彼をよそ目に、私とパイロは花畑に寝転び、木々の隙間から漏れる光を浴びていた。

ん…、あったかくてきもちい…

ーー…

お花の良い匂いとお日様の暖かい光でいつの間にか眠ってしまった。