｢今日はこの辺りで休もう。｣
｢うん、そうしよっか。｣

ミアとクラピカはそう言って川の近くに荷物を下ろした。

｢大分歩いたね、ちょっと疲れちゃった。｣
そう言いながら、ミアは地面に座り込む。

｢あぁ、急いでいる訳でもないし、休息も大事だからな。｣
クラピカは水筒を傾けながら、ふうと息をついた。

ちょうど日は沈みかけ、辺りはオレンジ色に染まっている。
｢この川には魚がいるようだ。今日の夕食にできるかもしれないぞ。｣
川をのぞき込みながら、彼は嬉しそうな声を上げる。
｢ほんと！？やったー！｣
ここ数日間食料が底を尽きてしまい、私たちは水だけで何とかしのいできた。
それも遂に限界を迎えはじめていたので、思わずごくりと喉が鳴る。

｢じゃあ私ちょっとたき火の木を拾ってくる！｣
何日ぶりかのご飯のために、私は嬉々として森へ飛び込んだ。

ーーーー
｢いただきまーす！！｣
ミアとクラピカは火を囲みながら、大きな魚にかぶりついた。
｢お…、おいしい…、おいしいよう…！｣
｢そうだな…、こんなに美味い魚ははじめてだ…。｣
はふはふと頬張りながら、感動に目を輝かせる。

二人はそれからしばらく、夢中になって食事を楽しんだ。

ーーー…
寝床の準備を済ませ、その上にミアとクラピカは寝っ転がり、夜空を仰いだ。

まるで太陽の光をうけた海の水面のように、空には満天の星がキラキラと輝いていた。

｢きれいだね…。｣
｢あぁ…、そうだな…。｣

そう言うと二人の間にはしばらく無言の時間が流れた。

｢なんか海の中にいるみたいだね。｣
空を見つめながら、ふいにミアは呟いた。

｢海？なぜだ？｣
聞き返すクラピカに、ミアは続ける。

｢何となくだけどね、海の中にはこんなキラキラがあった気がするの。｣
｢キラキラ…？｣
｢うん、雪みたいにキラキラしたものが。｣
ミアの横顔はどこか遠くを見ているようであった。

｢…確か、そんな現象を本で読んだことがある。暗い海の中を照らすと、水中に雪のようなものが浮かんで見える、それをマリンスノーと言うらしい。｣
｢マリン、スノー…。｣
響きを確かめるように呟く。

｢ミアは海に行ったことがあるのか？ましてそんな深い所まで潜ったなど…。｣
問いかけるクラピカの方へ、ごろんと体を向ける。
｢ううん、夢でみただけ。すっごくキラキラして綺麗だったからつい。｣
えへへ、と笑うとクラピカもこちらに体を向け、そっと頭を撫でる。
｢そうか。しかし、あながち夢ではないかもしれないぞ？｣
｢？　どうして？｣
不思議そうに彼を見上げると、クスッと笑いながら
｢ミアの瞳は、海のように綺麗だからさ。｣
と囁き、頭を撫でていた手はそのまま目の縁をつつ、となぞる。

ミアの片目は夜空の星を鮮やかに写し、まるでその輝きを閉じ込めたように綺麗だった。

照れ恥ずかしい気持ちでミアは頬を赤らめながら微笑む。

夜空には満天の星がきらめいていた。