クラピカは怒りと憎しみに染まった目で私を見る。

命をも捨ててやり遂げると告げる彼を前に、自分の不甲斐なさを反省した。

いつまでも泣いてはいられない。

私は何をするべきか。

そんなこと、明白だ。

｢…私も…私も！クラピカと一緒に行く。この命を捨てても、復讐をやり遂げる！｣

涙を拭い、まっすぐクラピカに向き合う。
クラピカは目を見開いて、肩を掴む。
｢だめだ！ミアにはそんなことさせられない！これ以上…、大切な人を…失いたくないんだ…。｣
肩を掴む手に私の手を重ね、震える手をそっと包み込む。

｢私ね、もう何もできないなんて嫌なの。目の前で大切な人を失うなんて、二度と。だから、お願い。｣

ーそう、もう失わない。
ー何も。

ー奴らから全部奪い取ってやる。
ーそれが、みんなへの償いになるのだから。

クラピカを安心させるように微笑む。
彼は一瞬驚いた表情を浮かべ、俯いた。

｢………｣｣

しかし少し経って顔を上げると、先ほどまでの躊躇いはなく、

｢わかった。共に戦おう。だが…、ミアを死なせたりしない。｣
｢私だって、クラピカを死なせたりしないよ。｣
そう言って、同胞たちの復讐だけではなく、お互いにたった一人の仲間を守り抜くと誓ったのだった。

ーーーー
それから、みんなの遺体を埋葬した。
できるだけ家族同士近くになるように努力した。

｢ちょっと出かけてくるね。すぐ戻ってくるから。｣
私はクラピカにそう告げ、この場を離れた。

少し落ち着いたと言えども、色々な事が起こりすぎた。
みんなと過ごした時間が長いクラピカは、私よりもっと深い傷を負っただろう。
一人になって、整理する時間が必要だと思ったのだ。

私はあの場所へ向かって歩いた。

この瞳に映る景色に、以前のような輝きはなかった。

ーーーー
ミアがいなくなって、一人ぽつんと立ち尽くした。

正直まだ受け入れられない気持ちの方が大きい。
大地に盛り上がった小さな山、その冷たい土の下には仲間が眠っている。

ーー……

………

（クラピカー！一緒に遊ぼー！）
（眠れないの？お母さんがいるから大丈夫よ。ゆっくりおやすみ。）
（だっこ？まったくしょうがないなあ。ほーらっ。）
（ねえねえクラピカ…）
（クラピカ…）
（………）

ポロリと涙が伝う。
一度こぼれると、堰を切ったように溢れ出す。

｢うッ・・・うわあああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーッ｣

心の中にくすぶっていた思いが一気にあふれ出した。

すると空からもポツリポツリと雨が降り、すぐに土砂降りになった。

雨で後悔は洗い流せない。
けれど、無力な自分の情けない泣き声を、激しい雨音にかき消してほしいと思った。