｢よし、この分ならミアの出発に間に合うだろう。｣
用事が思ったより早く終わったので、宿舎で仮眠を長くとれた。
深夜に街を発てば、明朝に十分間に合うはずだ。

クラピカはピコに乗り、拠点へ急いだ。

ーーーー
道中、クラピカはミアについて考えていた。
半年ぶりに会った彼女はこれまでと変わらず、大切な友人だった。
しかしそれが変わったのだ。この一週間で。

きっかけは単純なことだった。

初めてあの場所に訪れたとき、咲き誇る花を見てミアのようだと感じた。
彼女の深く透き通った青い瞳、淡雪のように白い髪と同じ色、風に揺られ小さく揺れる可憐さ、そして太陽の光による宝石のような輝き。

ー何を考えているんだ、私は…

なんともキザなことを考えた自分に恥じつつ、3人でこの場所を思い思いに楽しんだ。
ふとパイロと花を集めるミアに目を向けると、こちらに気付いたのか、柔らかな笑みを浮かべて私を見る。

どきり、と胸が鳴る。

なぜだろう。
今までだってこんな風に笑いかけてくれていたはずなのに、見とれてしまう。
もう一度、その顔を向けてほしい。
私だけに見せてほしい。

おもちゃを独り占めしたい子どものような、わがままな気持ち。
こんなことを考える自分に戸惑いながら、気を紛らわせるように小鳥の観察をする。

そうしていると、ミアとパイロは私のそばに来て、ひなたぼっこをはじめ、いつの間にか眠ってしまった。
彼女の寝顔を見ていると、ふとここの花で花冠を作ろうと思い立った。

ミアにきっとよく似合う。

昔母親に教わった方法を思い出しながら、
花を見繕って、組み合わせていく。

ーーー……
｢よし、できたぞ！｣
ふう、と一息ついてミアに目をやる。
花に囲まれて眠る彼女を見ると、なぜか二度と目を覚まさないような気がした。
ここにいて欲しくて、ここにいることを確かめたくて、そっと彼女の頭を撫でた。

｢私のそばにいてくれないか、ミア。｣

小さな声で願うように呟き、愛おしげにミアを見つめた。

ミアは家族であり、よき友だ。
それは今も昔も変わらない。
だけどそれだけでは表せない感情が自分に芽生えたことを知った。

これはなんなのだろう。

穏やかな風に吹かれながら、はじめての感情に思いを巡らせた。