短編“未満”小説『正義の味方は悲しみ溢れる元被害者の自己救済を否定するか?』

「イジメが……虐めが悪い事なのは、勿論だと思う。満も苦しんでたって言うのも、少しは分かったと思う。でも……やっぱり、だからってDirty Bloodに入ったり、復讐っていって殺す気持ちは、正直、理解しきれない。」
「うん……そうだね……。」
「やっぱり人殺しは悪い事だし、俺は満にそんな悪い事をしてほしくなんかないって思うから……満がこれからも誰かを殺すなら、戦わなきゃいけないんだと思う。」
「うん……。」

拙い解決方法しか思い付く事の出来ない自分の弱音にも似た言葉に対し、反論や異論を差し挟む事無く耳を傾けてくれるロックマンの存在を心強く思いながら、熱斗はしばし沈黙して、絡まってしまった糸を丁寧に解くように思考を巡らせる。
先程述べた通り、熱斗にとって、復讐をする気持ちや殺人を犯す気持ちは到底理解の及ばないものだ。
正直な事を言えば、虐められる辛さに関しても、教科書やテレビのドキュメンタリー上で見える表面上のレベルでしか理解できないものだろう。
そのような自分には、満の苦しみや怒りへ完全に共感し、寄り添う事はできないのだろう、という事も容易に想像が付く。
だが――、

「……でもさ、だからこそ、俺は満を救いたい。昔の満にはもう何もできなくても、今の……これから先の満には、俺の手が届くはずだって、俺は信じたいんだ。悪い事はそりゃあ否定するけどさ、満自身の事は……肯定して、応援したいから。」

そう言い切った熱斗の微笑はやはりどこか寂しげに曇っている様に見えない事も無かったが、熱斗の最大の理解者であるロックマンは、その曇った表情の中でも茶色の両目だけは確かに未来を見据えて透き通っている事をひしひしと感じていた。
熱斗の決意を感じ取ったロックマンの顔にも、未来への希望と言える明るさが少しずつ戻り始める。
そして、

「うん……そうだね、満さんの事、僕達で絶対助けようね!」

ロックマンがそう言って明るく微笑むと、熱斗も漸く元気を取り戻し始めたのか、さっきよりももう少し明るい笑顔を浮かべながら、一度だけ大きく頷いた。
その直後、警察とネット警察への連絡を終えたらしいSearchが黄土色のコートに付着した砂埃を払いながら、熱斗に呼びかける。

「熱斗、総監達が直接報告を聴きたいらしい。ネット警察のビルに急ぐぞ。」

その声を聴いた熱斗とロックマンは顔を見合わせ、二人でいつも通りの明るく力強く、しかし優しい笑顔を浮かべ合ってから、ハツラツとした声で返事をする。

「あぁ、分かったぜ!」
「これから頑張らなくちゃね!」

そのような二人の様子を不思議そうな顔で見るSearchを追い抜いて、熱斗はネット警察のビル向かって走り出した。


End.
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