Re_そして僕らは嘘を突き通す
「ガスー!! ロールちゃぁぁあん!!」
その焦り様に、ロックマンの右腕に抱きついたままのロールと、基本的には発言せず事態を静観しているだけのブルースとグライドと、先ほどガッツマンにツッコミを入れたアイスマンは、そうか、ガッツマンはロックマンが他の誰かと付き合っていれば自分にロールと付き合うチャンスが来ると考えていたのか、と気付き、その目論見が脆くも崩れ去ってしまったらしいガッツマンの、今にも泣き出しそうな顔を見て笑った。
普段は滅多に笑う事が無いブルースさえ声を出して笑っていて、サーチマンもブルース程ではないとはいえ小さく肩を上下させて笑っている。
ロールとアイスマンはガッツマンの反応を面白がるように笑い、グライドは若干笑う事に抵抗がありそうだったが、それでも顔は笑いを隠し切れていない。
そんな中で、先ほどから誰もいない天井にツンと視線を向けたままのロックマンだけが何処か難しい顔をしていて、笑い声とは遠い所にいた。
ロックマンは、天井に向けていた視線をふと床に落とし、それから少し無理矢理に笑顔を作ってから正面を向くと、
「ねぇ。」
と、ロール達に声をかける。
ロックマンの声に気付いたロール達の笑い声が収まり、全ての視線が今度はロックマンに向けられた。
それを目だけを動かして確認したロックマンは、作り笑顔のままで皆に問いかける。
「じゃあさ、もしも僕とサーチマンが本当にカップルだったら、君達はどう思う?」
ロール達の目が僅かに見開かれ、ロックマンの笑顔がある種の意味を持って深くなる、そしてサーチマンの表情が若干固くなる。
ロールはロックマンの腕から離れてロックマンとサーチマンを交互に見詰め、グライドとブルース、ガッツマンとアイスマンはお互い顔を見合わせた後にロックマンとサーチマンへ視線を向けた。
視線を向けられた二人の内、サーチマンはロール達と同じように――いや厳密には少し違う焦りを含んで、困惑した様な顔をしていたが、ロックマンは不気味なほど綺麗に、ニコニコという擬音が付きそうな笑顔を浮かべている。
そんな対照的な様子の二人をじっと見た後、もう一度、今度は五人で顔を見合わせたロール達は、やがて口々に率直な感想を述べはじめた。
一番に、ロールが口を開く。
「んー……なんだか嫌ね、それ。」
率直なロールの言葉がロックマンの胸を刺した。
ロックマンは傷の見えない痛みを堪える。
そこへロールの言葉に賛同するかのように、ガッツマンも口を開く。
「本当にカップルだったら、変でガッツ。」
大衆の意見とも言えるガッツマンの言葉が、ロックマンの頭を殴りつけた。
眩暈のような揺れを感じそうになりながらも、ロックマンはそこから少しも動かずに笑顔を作りつづける。
さて次は誰が何を言ってくれるんだ? 僕をどう傷付けてくれるんだ? と考えていると、今度はアイスマンが口を開く。
「ありえないですー。」
無邪気なアイスマンの言葉がロックマンを凍えさせた。
確かにそれが普通で、アイスマンは別に間違った事は言っていないなんて事はロックマンもよく知っている、知っているが故に、体が冷えた気がした。
子供というのは時に残酷だ、単純すぎて素直すぎるんだ、と思っていると、ロックマンより年上として作られているであろう二人の内、ブルースが軽く吐き捨てるように言う。
「正直、気持ち悪いな。」
歯に衣着せぬブルースの言葉がロックマンの全身を斬りつけた。
自分はナビで、この身体には血は巡っていない、それを知っていても尚、ロックマンは全身にできた切り傷から血液が噴き出すような感覚を覚えずにはいられなくなる。
そうか、それが普通である皆の意見なのか、と思うと、息もできなくなってしまいそうな痛みが全身を襲った気がした。
そうしてもはや、満身創痍となった心にグライドが最後の一押しを。
「そうですね……お二人が本気なら認めざるをえませんが、少し、疑いたくなりますね。」
一見丁寧に見えても結局は非難に近いグライドの言葉がロックマンに高所から地面へ突き落とされるような衝撃を与えた。
嗚呼、結局、誰一人として“それ”を認めてくれる仲間はいなかった、その事実を突き付けられたロックマンは、絶望にも似た悲しみが身体の中心に染み込んで、同時に嫌悪にも似た怒りが身体の中心から湧きあがってくるのを感じた。
皆が“それ”を認めない事が理不尽に思えて仕方が無い、どうして異性ならよくて同性は駄目なのかが自分には分からない、どちらも恋に、そして愛には変わりがないのではないかと叫びたい。
そう感じたロックマンは、今此処で、先ほど皆に投げかけた質問の本当の意味を明かしてしまおうかと思い、ロールに掴まれなかった左手で、隣に立つサーチマンの右手を掴もうとした。
しかし、ロックマンのその動作はサーチマンの予想の範囲内だったのか、ロックマンの左手はサーチマンの右手に一瞬触れる事ができはしたが、その手に相手の手を握るという力を込める前に、簡単に振り払われてしまった。
手を振り払われたロックマンは、どうして!? という思いを込めてサーチマンに振り向く。
するとサーチマンはロックマンとはまた別の何処か難しく真剣な表情をして、顔は正面を向いたまま視線だけをロックマンに向けてきた。
それはどう考えても、それは言うな、という合図に他ならず、ロックマンはしばしサーチマンを見詰めた後、心苦しそうに視線を床に落とした。
ロール達の、何か不思議な物を見るような視線がロックマンに突き刺さる。
どうしよう、自分は何かとんでもない間違いを犯してしまったのではないだろうか、と感じたロックマンがその身の内だけで酷く焦っていると、それをフォローするかのようにサーチマンが口を開く。
「まぁ、単なる例え話だ。そうだな、これを更に例えて言うなら、ロールとメディが付き合い始めたら、と訊くようなものか。」
「ちょっとサーチマン! それは絶対に無いわよ!」
サーチマンの口から出た冗談めいた例え話に、ロールが何故か本気で怒りだした。
おそらくロールの中では、自分とメディが付き合う事は、サーチマンとロックマンが付き合う以上にあり得ない事で、冗談でもそれを言われるのは気分が悪いのだろう。
語気を荒らげて反発するロールを見て、確かにロールとメディが付き合う日など来ないのかもしれないが、そんなに激しく否定しなくてもいいのではないだろうか? そんなに勢いをつけて反発されると、自分が責められているようで苦しい、と感じたロックマンは少し寂しげな視線でロールを見詰めた。
しかしロールはロックマンのそんな視線には気付かずに、不機嫌そうな顔でサーチマンの方を向いている。
そしてサーチマンは念を押すように、
「そうだな、絶対に無いな。だから単なる例え話だと言っているだろう?」
と言った。
それはロールとメディが付き合う事が絶対に無いと言っているだけでなく、ロックマンとサーチマンが付き合う事も絶対に無いと言っているようで、ロックマンは心臓に相当するプログラムが軋むのを感じた。
分かっている、そう言わなければいけない理由は分かっているのだが、こうもハッキリとサーチマンの口からそう言われてしまうと辛い。
そんな思いが隠し切れていない苦い表情のロックマンを置いてけぼりにして、ブルース達は、未だ不機嫌そうにサーチマンを睨んでいるロールを見て笑っている。
ロックマンはそっと視線をロールからサーチマンへ移した。
視線の先のサーチマンは、ブルース達と同じように楽しげに笑っている、それがどうしようもなく悔しくて、ロックマンは密かに、爪が手の平に食い込むほどの強さで両手を握りしめた。
その焦り様に、ロックマンの右腕に抱きついたままのロールと、基本的には発言せず事態を静観しているだけのブルースとグライドと、先ほどガッツマンにツッコミを入れたアイスマンは、そうか、ガッツマンはロックマンが他の誰かと付き合っていれば自分にロールと付き合うチャンスが来ると考えていたのか、と気付き、その目論見が脆くも崩れ去ってしまったらしいガッツマンの、今にも泣き出しそうな顔を見て笑った。
普段は滅多に笑う事が無いブルースさえ声を出して笑っていて、サーチマンもブルース程ではないとはいえ小さく肩を上下させて笑っている。
ロールとアイスマンはガッツマンの反応を面白がるように笑い、グライドは若干笑う事に抵抗がありそうだったが、それでも顔は笑いを隠し切れていない。
そんな中で、先ほどから誰もいない天井にツンと視線を向けたままのロックマンだけが何処か難しい顔をしていて、笑い声とは遠い所にいた。
ロックマンは、天井に向けていた視線をふと床に落とし、それから少し無理矢理に笑顔を作ってから正面を向くと、
「ねぇ。」
と、ロール達に声をかける。
ロックマンの声に気付いたロール達の笑い声が収まり、全ての視線が今度はロックマンに向けられた。
それを目だけを動かして確認したロックマンは、作り笑顔のままで皆に問いかける。
「じゃあさ、もしも僕とサーチマンが本当にカップルだったら、君達はどう思う?」
ロール達の目が僅かに見開かれ、ロックマンの笑顔がある種の意味を持って深くなる、そしてサーチマンの表情が若干固くなる。
ロールはロックマンの腕から離れてロックマンとサーチマンを交互に見詰め、グライドとブルース、ガッツマンとアイスマンはお互い顔を見合わせた後にロックマンとサーチマンへ視線を向けた。
視線を向けられた二人の内、サーチマンはロール達と同じように――いや厳密には少し違う焦りを含んで、困惑した様な顔をしていたが、ロックマンは不気味なほど綺麗に、ニコニコという擬音が付きそうな笑顔を浮かべている。
そんな対照的な様子の二人をじっと見た後、もう一度、今度は五人で顔を見合わせたロール達は、やがて口々に率直な感想を述べはじめた。
一番に、ロールが口を開く。
「んー……なんだか嫌ね、それ。」
率直なロールの言葉がロックマンの胸を刺した。
ロックマンは傷の見えない痛みを堪える。
そこへロールの言葉に賛同するかのように、ガッツマンも口を開く。
「本当にカップルだったら、変でガッツ。」
大衆の意見とも言えるガッツマンの言葉が、ロックマンの頭を殴りつけた。
眩暈のような揺れを感じそうになりながらも、ロックマンはそこから少しも動かずに笑顔を作りつづける。
さて次は誰が何を言ってくれるんだ? 僕をどう傷付けてくれるんだ? と考えていると、今度はアイスマンが口を開く。
「ありえないですー。」
無邪気なアイスマンの言葉がロックマンを凍えさせた。
確かにそれが普通で、アイスマンは別に間違った事は言っていないなんて事はロックマンもよく知っている、知っているが故に、体が冷えた気がした。
子供というのは時に残酷だ、単純すぎて素直すぎるんだ、と思っていると、ロックマンより年上として作られているであろう二人の内、ブルースが軽く吐き捨てるように言う。
「正直、気持ち悪いな。」
歯に衣着せぬブルースの言葉がロックマンの全身を斬りつけた。
自分はナビで、この身体には血は巡っていない、それを知っていても尚、ロックマンは全身にできた切り傷から血液が噴き出すような感覚を覚えずにはいられなくなる。
そうか、それが普通である皆の意見なのか、と思うと、息もできなくなってしまいそうな痛みが全身を襲った気がした。
そうしてもはや、満身創痍となった心にグライドが最後の一押しを。
「そうですね……お二人が本気なら認めざるをえませんが、少し、疑いたくなりますね。」
一見丁寧に見えても結局は非難に近いグライドの言葉がロックマンに高所から地面へ突き落とされるような衝撃を与えた。
嗚呼、結局、誰一人として“それ”を認めてくれる仲間はいなかった、その事実を突き付けられたロックマンは、絶望にも似た悲しみが身体の中心に染み込んで、同時に嫌悪にも似た怒りが身体の中心から湧きあがってくるのを感じた。
皆が“それ”を認めない事が理不尽に思えて仕方が無い、どうして異性ならよくて同性は駄目なのかが自分には分からない、どちらも恋に、そして愛には変わりがないのではないかと叫びたい。
そう感じたロックマンは、今此処で、先ほど皆に投げかけた質問の本当の意味を明かしてしまおうかと思い、ロールに掴まれなかった左手で、隣に立つサーチマンの右手を掴もうとした。
しかし、ロックマンのその動作はサーチマンの予想の範囲内だったのか、ロックマンの左手はサーチマンの右手に一瞬触れる事ができはしたが、その手に相手の手を握るという力を込める前に、簡単に振り払われてしまった。
手を振り払われたロックマンは、どうして!? という思いを込めてサーチマンに振り向く。
するとサーチマンはロックマンとはまた別の何処か難しく真剣な表情をして、顔は正面を向いたまま視線だけをロックマンに向けてきた。
それはどう考えても、それは言うな、という合図に他ならず、ロックマンはしばしサーチマンを見詰めた後、心苦しそうに視線を床に落とした。
ロール達の、何か不思議な物を見るような視線がロックマンに突き刺さる。
どうしよう、自分は何かとんでもない間違いを犯してしまったのではないだろうか、と感じたロックマンがその身の内だけで酷く焦っていると、それをフォローするかのようにサーチマンが口を開く。
「まぁ、単なる例え話だ。そうだな、これを更に例えて言うなら、ロールとメディが付き合い始めたら、と訊くようなものか。」
「ちょっとサーチマン! それは絶対に無いわよ!」
サーチマンの口から出た冗談めいた例え話に、ロールが何故か本気で怒りだした。
おそらくロールの中では、自分とメディが付き合う事は、サーチマンとロックマンが付き合う以上にあり得ない事で、冗談でもそれを言われるのは気分が悪いのだろう。
語気を荒らげて反発するロールを見て、確かにロールとメディが付き合う日など来ないのかもしれないが、そんなに激しく否定しなくてもいいのではないだろうか? そんなに勢いをつけて反発されると、自分が責められているようで苦しい、と感じたロックマンは少し寂しげな視線でロールを見詰めた。
しかしロールはロックマンのそんな視線には気付かずに、不機嫌そうな顔でサーチマンの方を向いている。
そしてサーチマンは念を押すように、
「そうだな、絶対に無いな。だから単なる例え話だと言っているだろう?」
と言った。
それはロールとメディが付き合う事が絶対に無いと言っているだけでなく、ロックマンとサーチマンが付き合う事も絶対に無いと言っているようで、ロックマンは心臓に相当するプログラムが軋むのを感じた。
分かっている、そう言わなければいけない理由は分かっているのだが、こうもハッキリとサーチマンの口からそう言われてしまうと辛い。
そんな思いが隠し切れていない苦い表情のロックマンを置いてけぼりにして、ブルース達は、未だ不機嫌そうにサーチマンを睨んでいるロールを見て笑っている。
ロックマンはそっと視線をロールからサーチマンへ移した。
視線の先のサーチマンは、ブルース達と同じように楽しげに笑っている、それがどうしようもなく悔しくて、ロックマンは密かに、爪が手の平に食い込むほどの強さで両手を握りしめた。