君だけ見てる、僕を見て。
近所の道を駆け抜け、大通りを駆け抜け、メトロに乗ってしばらくして、やがて科学省へとたどり着いた熱斗は、受付嬢に軽い挨拶をすますと一目散に祐一朗の居る研究室へと駆けこんだ。
研究室では既に祐一朗が対策に使う大型パソコンを起動して待っていた。
「熱斗、ロックマンを此処へ。」
起動済みの大型パソコンを指差す祐一朗へ頷いて、熱斗は一瞬だけトランスミッション阻止のプログラムを解除し、PETをパソコンへ向けた。
そして、普段の掛け声は無いままロックマンをパソコンの電脳へ送り込む。
するとパソコンのモニターにロックマンの姿が映り、次の瞬間光るコードのような何か紐状のものが画面の端から現れてロックマンの四肢を捕らえた。
「何!? 何なの!?」
驚くロックマンには何の配慮も無く、光るコードは四肢をきつく縛る。
そして次の瞬間、ロックマンの背後に十字型の壁が現れたと思ったら、コードがそこへ引き寄せられ、ロックマンは壁に磔にされてしまった。
これには熱斗も少し驚いたが、今の不安定なロックマンにはそれぐらいしなければ何が起こるか分からない事も事実であり、熱斗は少し罪悪感を感じながらもそれを見届けた。
言うまでも無いが、磔にされたロックマンは状況が飲み込めず再び喚きだす。
「何なのコレ!? ねぇ熱斗くん!! パパ!! 一体何のつもりなのさ!! なんでこんなことするの!? 僕はこんな事される覚えはないよ!?」
それは自分は正常だという主張にも等しく、それを聞いた熱斗はロックマンが自分の異常性、異常な行動に自覚が無いのだと知って愕然とした。
朝早く起こされ過ぎるだけならいい、学校に早く行かされ過ぎるだけならまだいい、しかし最愛のナビに殺意を向けて、それでもなお自分は正しいというなんて、完全にいかれている。
本当に、どうしてロックマンはこんなにも狂ってしまったのか、熱斗はゾッと悪寒が走るような感覚を覚えた。
隣では祐一朗が真剣で悲しげな表情をロックマンに向けている。
その間にもロックマンは喚き続け、自身の狂気を彼女に向けたがる。
「ねぇお願いだよ、ロールちゃんに逢わせてよ!! 話はまだ終わって無かったんだよ!? ねぇ僕を元の場所に帰して!!」
「ロックマン……どうして、そんなに……」
モニターの前で愕然とする熱斗の左肩に、祐一朗が慰めるように右手を置いた。
熱斗が振り返ると、祐一朗も辛そうな顔でモニターを見ている。
おそらく自分と同じで、ロックマンの異変に気付けなかった事を悔やんでいるのだろうと察し、熱斗は此処で自分がくじける訳にはいかないと思った。
だが、だからと言って今の自分に一体何ができるというのだろう? それは熱斗にも祐一朗にも分からない。
「ロールちゃんに逢わせて!! 僕はロールちゃんに逢わなくちゃいけないんだよ!!」
十字に磔にされつつも必死に手足をもがかせて喚くロックマンに、熱斗と祐一朗は悲しげで悔しげな視線を向けることしかできない。
やがて祐一朗はパソコンの前の椅子に座り、ロックマンの身体のスキャンを始めた。
祐一朗もなんとなく解っている、これはウイルスやバグではなく、人と同じ感情というものを持ってしまった故の誤算である事ぐらい、解っているのだが、それでも二人は僅かな可能性――ロックマンがおかしくなったのはバグかウイルスのせいであり、感情のせいではない事にかけたかったのだ。
簡易的なスキャンはすぐに進み、緑色の光がロックマンの身体の上を通り、その身体に異変が無いかを調べていく。
もしもこれで何らかの異常が見つかればそれを取り除く事でロックマンは元に戻る、だからどうか何らかの異常があってくれと思いながら、祐一朗と熱斗はスキャンの結果を見続ける。
しかし、
「異常無し、か……。」
ピーッと軽い音がすると同時に伝えられたスキャンの結果は、祐一朗と熱斗に救いを与えてはくれなかった。
今のロックマンの異常はバグやウイルスなどではなく、感情を持った故の誤算なのだと認めるしか無くなった熱斗は浅くうなだれ、祐一朗は悔しそうに頭を抱える。
と、その時、研究室の扉が開いて誰かが研究室内に足を進めてきた。
その音と気配に気がついて振り向いた熱斗の視界に、ロールのオペレーターである桜井 メイルの姿が映る。
メイルは室内に入るとすぐ口を開く。
「熱斗、ロールから聞いたわ、ロックマンが……」
メイルはその先をどう表現すべきかまだ解らないらしく、そこまでしか言わずに熱斗へ歩み寄った。
そんなメイルへ、熱斗はどうにも複雑そうで、いつもより数段悲しげな重い表情を向け、静かに頭を下げる。
「メイルちゃん、ごめん、ロックマンが無茶やらかして……!」
「え、ううん、大丈夫よ、ロールは無事だから、ね?」
それに驚いたメイルが焦って顔を上げるように言うと、熱斗はゆっくりと顔を上げた。
そして熱斗とメイルは大型パソコンのモニターに向き直り、ロックマンの様子を見る。
するとロックマンも現実世界で人数が増えた事に気付き、瞬時に騒ぎ出した。
「メイルちゃん……メイルちゃん、お願いだ! 僕をロールちゃんに逢わせて! どうしても逢わなくちゃいけないんだ! だって、まだ、終わって……」
まだ終わっていない、そう言いたげなロックマンへ、熱斗が反論する。
「何が終わって無いって言うんだよ! 馬鹿言うな! 今のお前じゃロールには会わせられない!!」
熱斗には何故ロックマンがあんな行動をとったのか、その理由は分からない。
だが、理由は一度置いておくにしても、ロックマンはロールへ確かな殺意を向けていた、そんなロックマンを再びロールに逢わせればどうなるか、それは熱斗にもたやすく想像できる。
ロックマンが再びその限りない怒りと殺意をロールへ向けるであろうことはほぼ確実だ。
熱斗の反論に涙目になりながら、ロックマンは同じ疑問形の言葉を何度も繰り返した。
「なんで、どうして、どうして、どうして……」
どうしてなんてこちらが訊きたい、と言いたげな熱斗、メイル、祐一朗へ、ロックマンは慟哭とも言える叫びをぶつける。
「僕はロールちゃんに僕を見てほしかっただけなのに、どうして許してくれないの!? どうしてこの声は、ロールちゃんに届かないの!?」
その叫びを理解できない熱斗はただただ呆然とモニターを見つめ、その叫びを少しだけなら理解できるメイルはロックマンの必死な姿に自分の薄い影を重ねて胸を痛めた。
そう、ロックマンの抱える願いはそれ自体は特別おかしなものではない、誰しもふとした拍子に抱くようになるようなありふれた感情であり、常軌を逸脱してさえいなければ、こんなふうに拘束されて理解不可能だという顔をされる事も無かっただろう。
だから、ロックマン程激しくはないとはいえ、熱斗に好意を寄せるメイルは、その叫びに僅かな共感を覚えはじめていた。
自分も、もし自分の好きな相手が自分を全く見てくれなくなったら悲しい、メイルはそう思う。
そしてそっとスカートのポケットからPETを取り出す。
「ロール……。」
小さな声でロールの名前を呼びPET画面にロールを呼ぶと、熱斗と祐一朗の視線がメイルへと集まった。
二人の視線を受けながら、メイルは画面に映ったロールへ問いかける。
「ロール、ロックマンと逢う気はない?」
「えっ……」
メイルの提案に、ロールは小さな驚きの声を漏らして固まった。
先ほどの恐怖がまだその身に鮮明に残る中で、その恐怖の元凶と逢えとは少し乱暴なのではないか、そう思った熱斗が止めに入る。
「やめといたほうがいいって、今のロックマン、どうしようもなくおかしいし、拘束してるからって絶対安全とは限らないかもしれないし、何より……」
ロールの精神が心配だ、と言おうとする熱斗に、メイルはそれを察して小さく頷いた。
しかしその後にはすぐに、でも……、と言って言葉をつなげる。
「このまま逢わなくても、きっと同じ事だと思うの。だから、一度逢ってちゃんとけじめをつけないと駄目かなぁって……あ、勿論ロールが嫌なら無理強いはしないけど……。」
僅かに不安そうだが何かを期待しているようにも見えるメイルと明らかに不安げな熱斗に見つめられながら、画面の中のロールは考えた。
確かに熱斗の言う通り、今のロックマンはどうしようもない程におかしく、自分はそれを怖いと思っている。
しかし一方でメイルの言う通り、だからと言って逃げたところでどうにもならない上に、それは自分とロックマンの“終わり”を告げる行為である事も解る。
怖い、けれど、逢わなければ何も始まらない、と考えたロールは心を決めた。
「熱斗さん、心配してくれてありがとう。……私、ロックマンに会うわ。」
「ロール……。」
ロールの言葉に、熱斗は安心する事無く、逆に心配を深めた。
本当にロールをロックマンと逢わせていいのだろうか? 今のロックマンの想いをロールは受け止めきれるのだろうか? 結局、結果は変わらないのではないか?
様々な不安が脳裏を過って、熱斗は苦い表情を見せる。
そして困ったような声で言った。
「ロール……諦めも、視野に入れとけよ……?」
今のロックマンは正気とは言えない、それを誰よりもよく解っているのは、案外熱斗だったのかもしれない。
熱斗はそう言うとメイルのPETの画面から視線を逸らし、大型パソコンのモニターに目を向けた。
モニターに映る拘束されたロックマンは力無くうなだれていて、こちらの話を聴いているのか聴いていないのかは解らない。
メイルはそのモニターの前に立ち、PETをプラグイン端子へ向けた。
「プラグイン! ロール、トランスミッション!」
PETから人の目には見えない赤外線が飛び出して端子へ触れる。
そしてそこからロールはロックマンの居る大型パソコンの電脳へと入っていった。
研究室では既に祐一朗が対策に使う大型パソコンを起動して待っていた。
「熱斗、ロックマンを此処へ。」
起動済みの大型パソコンを指差す祐一朗へ頷いて、熱斗は一瞬だけトランスミッション阻止のプログラムを解除し、PETをパソコンへ向けた。
そして、普段の掛け声は無いままロックマンをパソコンの電脳へ送り込む。
するとパソコンのモニターにロックマンの姿が映り、次の瞬間光るコードのような何か紐状のものが画面の端から現れてロックマンの四肢を捕らえた。
「何!? 何なの!?」
驚くロックマンには何の配慮も無く、光るコードは四肢をきつく縛る。
そして次の瞬間、ロックマンの背後に十字型の壁が現れたと思ったら、コードがそこへ引き寄せられ、ロックマンは壁に磔にされてしまった。
これには熱斗も少し驚いたが、今の不安定なロックマンにはそれぐらいしなければ何が起こるか分からない事も事実であり、熱斗は少し罪悪感を感じながらもそれを見届けた。
言うまでも無いが、磔にされたロックマンは状況が飲み込めず再び喚きだす。
「何なのコレ!? ねぇ熱斗くん!! パパ!! 一体何のつもりなのさ!! なんでこんなことするの!? 僕はこんな事される覚えはないよ!?」
それは自分は正常だという主張にも等しく、それを聞いた熱斗はロックマンが自分の異常性、異常な行動に自覚が無いのだと知って愕然とした。
朝早く起こされ過ぎるだけならいい、学校に早く行かされ過ぎるだけならまだいい、しかし最愛のナビに殺意を向けて、それでもなお自分は正しいというなんて、完全にいかれている。
本当に、どうしてロックマンはこんなにも狂ってしまったのか、熱斗はゾッと悪寒が走るような感覚を覚えた。
隣では祐一朗が真剣で悲しげな表情をロックマンに向けている。
その間にもロックマンは喚き続け、自身の狂気を彼女に向けたがる。
「ねぇお願いだよ、ロールちゃんに逢わせてよ!! 話はまだ終わって無かったんだよ!? ねぇ僕を元の場所に帰して!!」
「ロックマン……どうして、そんなに……」
モニターの前で愕然とする熱斗の左肩に、祐一朗が慰めるように右手を置いた。
熱斗が振り返ると、祐一朗も辛そうな顔でモニターを見ている。
おそらく自分と同じで、ロックマンの異変に気付けなかった事を悔やんでいるのだろうと察し、熱斗は此処で自分がくじける訳にはいかないと思った。
だが、だからと言って今の自分に一体何ができるというのだろう? それは熱斗にも祐一朗にも分からない。
「ロールちゃんに逢わせて!! 僕はロールちゃんに逢わなくちゃいけないんだよ!!」
十字に磔にされつつも必死に手足をもがかせて喚くロックマンに、熱斗と祐一朗は悲しげで悔しげな視線を向けることしかできない。
やがて祐一朗はパソコンの前の椅子に座り、ロックマンの身体のスキャンを始めた。
祐一朗もなんとなく解っている、これはウイルスやバグではなく、人と同じ感情というものを持ってしまった故の誤算である事ぐらい、解っているのだが、それでも二人は僅かな可能性――ロックマンがおかしくなったのはバグかウイルスのせいであり、感情のせいではない事にかけたかったのだ。
簡易的なスキャンはすぐに進み、緑色の光がロックマンの身体の上を通り、その身体に異変が無いかを調べていく。
もしもこれで何らかの異常が見つかればそれを取り除く事でロックマンは元に戻る、だからどうか何らかの異常があってくれと思いながら、祐一朗と熱斗はスキャンの結果を見続ける。
しかし、
「異常無し、か……。」
ピーッと軽い音がすると同時に伝えられたスキャンの結果は、祐一朗と熱斗に救いを与えてはくれなかった。
今のロックマンの異常はバグやウイルスなどではなく、感情を持った故の誤算なのだと認めるしか無くなった熱斗は浅くうなだれ、祐一朗は悔しそうに頭を抱える。
と、その時、研究室の扉が開いて誰かが研究室内に足を進めてきた。
その音と気配に気がついて振り向いた熱斗の視界に、ロールのオペレーターである桜井 メイルの姿が映る。
メイルは室内に入るとすぐ口を開く。
「熱斗、ロールから聞いたわ、ロックマンが……」
メイルはその先をどう表現すべきかまだ解らないらしく、そこまでしか言わずに熱斗へ歩み寄った。
そんなメイルへ、熱斗はどうにも複雑そうで、いつもより数段悲しげな重い表情を向け、静かに頭を下げる。
「メイルちゃん、ごめん、ロックマンが無茶やらかして……!」
「え、ううん、大丈夫よ、ロールは無事だから、ね?」
それに驚いたメイルが焦って顔を上げるように言うと、熱斗はゆっくりと顔を上げた。
そして熱斗とメイルは大型パソコンのモニターに向き直り、ロックマンの様子を見る。
するとロックマンも現実世界で人数が増えた事に気付き、瞬時に騒ぎ出した。
「メイルちゃん……メイルちゃん、お願いだ! 僕をロールちゃんに逢わせて! どうしても逢わなくちゃいけないんだ! だって、まだ、終わって……」
まだ終わっていない、そう言いたげなロックマンへ、熱斗が反論する。
「何が終わって無いって言うんだよ! 馬鹿言うな! 今のお前じゃロールには会わせられない!!」
熱斗には何故ロックマンがあんな行動をとったのか、その理由は分からない。
だが、理由は一度置いておくにしても、ロックマンはロールへ確かな殺意を向けていた、そんなロックマンを再びロールに逢わせればどうなるか、それは熱斗にもたやすく想像できる。
ロックマンが再びその限りない怒りと殺意をロールへ向けるであろうことはほぼ確実だ。
熱斗の反論に涙目になりながら、ロックマンは同じ疑問形の言葉を何度も繰り返した。
「なんで、どうして、どうして、どうして……」
どうしてなんてこちらが訊きたい、と言いたげな熱斗、メイル、祐一朗へ、ロックマンは慟哭とも言える叫びをぶつける。
「僕はロールちゃんに僕を見てほしかっただけなのに、どうして許してくれないの!? どうしてこの声は、ロールちゃんに届かないの!?」
その叫びを理解できない熱斗はただただ呆然とモニターを見つめ、その叫びを少しだけなら理解できるメイルはロックマンの必死な姿に自分の薄い影を重ねて胸を痛めた。
そう、ロックマンの抱える願いはそれ自体は特別おかしなものではない、誰しもふとした拍子に抱くようになるようなありふれた感情であり、常軌を逸脱してさえいなければ、こんなふうに拘束されて理解不可能だという顔をされる事も無かっただろう。
だから、ロックマン程激しくはないとはいえ、熱斗に好意を寄せるメイルは、その叫びに僅かな共感を覚えはじめていた。
自分も、もし自分の好きな相手が自分を全く見てくれなくなったら悲しい、メイルはそう思う。
そしてそっとスカートのポケットからPETを取り出す。
「ロール……。」
小さな声でロールの名前を呼びPET画面にロールを呼ぶと、熱斗と祐一朗の視線がメイルへと集まった。
二人の視線を受けながら、メイルは画面に映ったロールへ問いかける。
「ロール、ロックマンと逢う気はない?」
「えっ……」
メイルの提案に、ロールは小さな驚きの声を漏らして固まった。
先ほどの恐怖がまだその身に鮮明に残る中で、その恐怖の元凶と逢えとは少し乱暴なのではないか、そう思った熱斗が止めに入る。
「やめといたほうがいいって、今のロックマン、どうしようもなくおかしいし、拘束してるからって絶対安全とは限らないかもしれないし、何より……」
ロールの精神が心配だ、と言おうとする熱斗に、メイルはそれを察して小さく頷いた。
しかしその後にはすぐに、でも……、と言って言葉をつなげる。
「このまま逢わなくても、きっと同じ事だと思うの。だから、一度逢ってちゃんとけじめをつけないと駄目かなぁって……あ、勿論ロールが嫌なら無理強いはしないけど……。」
僅かに不安そうだが何かを期待しているようにも見えるメイルと明らかに不安げな熱斗に見つめられながら、画面の中のロールは考えた。
確かに熱斗の言う通り、今のロックマンはどうしようもない程におかしく、自分はそれを怖いと思っている。
しかし一方でメイルの言う通り、だからと言って逃げたところでどうにもならない上に、それは自分とロックマンの“終わり”を告げる行為である事も解る。
怖い、けれど、逢わなければ何も始まらない、と考えたロールは心を決めた。
「熱斗さん、心配してくれてありがとう。……私、ロックマンに会うわ。」
「ロール……。」
ロールの言葉に、熱斗は安心する事無く、逆に心配を深めた。
本当にロールをロックマンと逢わせていいのだろうか? 今のロックマンの想いをロールは受け止めきれるのだろうか? 結局、結果は変わらないのではないか?
様々な不安が脳裏を過って、熱斗は苦い表情を見せる。
そして困ったような声で言った。
「ロール……諦めも、視野に入れとけよ……?」
今のロックマンは正気とは言えない、それを誰よりもよく解っているのは、案外熱斗だったのかもしれない。
熱斗はそう言うとメイルのPETの画面から視線を逸らし、大型パソコンのモニターに目を向けた。
モニターに映る拘束されたロックマンは力無くうなだれていて、こちらの話を聴いているのか聴いていないのかは解らない。
メイルはそのモニターの前に立ち、PETをプラグイン端子へ向けた。
「プラグイン! ロール、トランスミッション!」
PETから人の目には見えない赤外線が飛び出して端子へ触れる。
そしてそこからロールはロックマンの居る大型パソコンの電脳へと入っていった。