君だけ見てる、僕を見て。
「此処も、此処も……此処も居ない……」
そうして店から店へと渡り歩いて数分、ロックマンはこのストリートの端、最後の一軒の場所にたどり着こうとしていた。
それまで並々ならぬ情熱でロールの影を探し続けてきたロックマンだったが、此処に来てようやく疲れが表面に出てきたのか、それともあと一軒しか無い事実に諦めが芽生え始めたのか、足取りは先ほどより重くなり、表情も期待ではなく気の早い落胆が見え隠れするようになってきている。
この時、ロックマンはようやくあの影はロールではなかったのかもしれないと思い直し始めていたのだ。
そうだ、わざわざ自分の誘いを断る程の用事の場所がインターネットシティであるはずが無いだろう、そんな考えも薄っすら浮かび始めていた。
「……ははっ、馬鹿みたい。」
この一軒を確認したらPETに帰って、熱斗の宿題の手伝いでもしよう、そう思いながら呟いて、ロックマンは最後の一軒へと、足をゆっくりと進めた。
と、その時、その最後の一件から、ナビが一人出てくる所が見えた。
ロックマンはそれを見てハッと目を見開く。
最後の一件から出てきたネットナビの正体は、桃色のボディに黄色の髪パーツが似合う少女、ロールであったのだ。
嗚呼、やっと逢えた、やっぱりあの影はロールだったのだ、そう思うと安堵と喜びが一気に噴き出して、ロックマンはロールへ駆け寄ろうとした、が、それは叶わずに終わる。
ロックマンの視界の中には、ロール以外のナビが一体増えていたのだ。
「……ッ、なんで、ブルースと……!?」
それは、赤と黒をメインにしたボディに銀髪が似合う、ロックマンのライバルでもある男性型ナビ、ブルース.EXEだった。
どうしてロールの後ろに続いてブルースが店から出てきたのか、その理由が理解しきれずに、ロックマンはその場で立ちつくし、そして必死に状況を整理する。
まず、ロールは昨日何と言っていた? 何と言って自分の誘いを断っていた?
――ごめんなさい、明日はちょっと用事があって……――
そして用事があるはずのロールが何故インターネットシティに、それも自分ではなくブルースと共に居るのか、それに気付いた時、ロックマンの中で何かが破れ、弾け、今まで必死に抑えを効かせてきた想いが爆発した。
そう、ロールの用事とはブルースとの外出だった、それを知った瞬間の事だった。
そうこうしているうちに、ロックマンに気付かないロールとブルースはロックマンとは反対側、次のストリートへ向かって歩きだす。
何やら会話も弾んでいるようだが、ロックマンの場所からはそれは聴き取れない。
ただ、ロールがブルースを見るその横顔に、心からの笑顔を浮かべている事だけは確認できた。
そしてブルースもまんざらではない様子で話を聴いている、それも一応確認できた。
ロックマンは静かに息を整え、脚に力を込める。
その目には、確かな怒りが宿っていた。
「……許さないからね。」
そして静かに呟くと、ロックマンはまるで獲物を狙う獣のように一気に駆けだした。
ゆっくりと優雅に歩くロールとブルース、その背中との距離を、高速で縮めていく。
走っている間に、右腕にはロックバスターを装備した。
足音を隠すつもりなど無い、気付けるなら気付けばいい、気付いたところでこちらは結果を変えるつもりはない、そんな決意を胸にして、ロックマンは走る。
「ん? 何の音だ?」
やがてブルースがその足音に気付き、怪訝そうな顔で振り返って、そして驚愕の表情を浮かべた。
それを不審に思ったロールも何があったのかと思いながら後ろへ振り返り、そして同じく驚愕する。
「「ロックマン!?」」
振り返った二人の視界に映ったものは今までで一度も見せた事のないような怒りの表情を浮かべて走るロックマンで、それに驚いたロールとブルースの声が重なった。
その重なった驚愕の声を聴き、ロックマンは既に怒りに歪めた表情を更に歪め、眉間にシワを深く刻む。
そしてロックマンは二人との距離が後一・五メートル程度という所で垂直に飛び上がり、ブルースに向けてバスターを構え、憤激と憎悪を込めて、叫んだ。
「ロックバスタァァァアァアアッ!!」
右腕に装備したバスターの銃口から、ショッキングピンクに光る銃弾が放たれる。
それは高速で前方へと進み、確かにブルースに被弾した。
衝撃でブルースとロールの周囲に煙が立ち込め、周囲に居たナビ達が何事かと驚きロックマンとロールとブルースの方へと視線を向け、やがて一部が自分に火の粉が降りかかる事を恐れて逃げ出し始め、一部はただ呆然とその様子を見守る。
砂煙が晴れる少し前、その煙を斬る様に紅いソードが振られるのが着地したロックマンの視界に映った。
ロックマンはそのソードに切られる事が無いように二、三メートル後ろへ跳躍する。
紅いソードはブルースの右腕に装備されたもので、ソードは砂煙を斬り裂くように吹き飛ばし、三人の視界をクリアにした。
右腕にソードを装備したブルースが焦りと怒りを込めてロックマンへ叫ぶ。
「おいロックマン! 今のはどう言うつもりだ!」
ソードを構えて威嚇するブルース、その足元で腰を抜かしてしゃがみこむロール、その様子はまるでロールという姫をブルースという騎士兼王子が守っているようで、周囲のナビは何かの特撮を見ている様な感覚を覚えていた。
そして、その周囲のナビから見ればその姫か王子を狙って現れた魔王にも等しい立場のロックマンは、怯えて動けなくなりながらもブルースに頼ろうとするロールと、そんなロールを守ろうとしているのかロールよりも多少前方に立ってソードを構えるブルースを憎いという言葉では言い表せない程不快に思う。
どうしてロールはブルースに頼ろうとしているのだ、どうして本来は自分がいるべき場所にブルースが立っているのだ、それが理解できないロックマンは、ブルースの言葉を唾でも吐き捨てるかのように鼻で笑い飛ばしてから、ブルースへの憎悪とロールへの憤激を宿した目を向けて言った。
そうして店から店へと渡り歩いて数分、ロックマンはこのストリートの端、最後の一軒の場所にたどり着こうとしていた。
それまで並々ならぬ情熱でロールの影を探し続けてきたロックマンだったが、此処に来てようやく疲れが表面に出てきたのか、それともあと一軒しか無い事実に諦めが芽生え始めたのか、足取りは先ほどより重くなり、表情も期待ではなく気の早い落胆が見え隠れするようになってきている。
この時、ロックマンはようやくあの影はロールではなかったのかもしれないと思い直し始めていたのだ。
そうだ、わざわざ自分の誘いを断る程の用事の場所がインターネットシティであるはずが無いだろう、そんな考えも薄っすら浮かび始めていた。
「……ははっ、馬鹿みたい。」
この一軒を確認したらPETに帰って、熱斗の宿題の手伝いでもしよう、そう思いながら呟いて、ロックマンは最後の一軒へと、足をゆっくりと進めた。
と、その時、その最後の一件から、ナビが一人出てくる所が見えた。
ロックマンはそれを見てハッと目を見開く。
最後の一件から出てきたネットナビの正体は、桃色のボディに黄色の髪パーツが似合う少女、ロールであったのだ。
嗚呼、やっと逢えた、やっぱりあの影はロールだったのだ、そう思うと安堵と喜びが一気に噴き出して、ロックマンはロールへ駆け寄ろうとした、が、それは叶わずに終わる。
ロックマンの視界の中には、ロール以外のナビが一体増えていたのだ。
「……ッ、なんで、ブルースと……!?」
それは、赤と黒をメインにしたボディに銀髪が似合う、ロックマンのライバルでもある男性型ナビ、ブルース.EXEだった。
どうしてロールの後ろに続いてブルースが店から出てきたのか、その理由が理解しきれずに、ロックマンはその場で立ちつくし、そして必死に状況を整理する。
まず、ロールは昨日何と言っていた? 何と言って自分の誘いを断っていた?
――ごめんなさい、明日はちょっと用事があって……――
そして用事があるはずのロールが何故インターネットシティに、それも自分ではなくブルースと共に居るのか、それに気付いた時、ロックマンの中で何かが破れ、弾け、今まで必死に抑えを効かせてきた想いが爆発した。
そう、ロールの用事とはブルースとの外出だった、それを知った瞬間の事だった。
そうこうしているうちに、ロックマンに気付かないロールとブルースはロックマンとは反対側、次のストリートへ向かって歩きだす。
何やら会話も弾んでいるようだが、ロックマンの場所からはそれは聴き取れない。
ただ、ロールがブルースを見るその横顔に、心からの笑顔を浮かべている事だけは確認できた。
そしてブルースもまんざらではない様子で話を聴いている、それも一応確認できた。
ロックマンは静かに息を整え、脚に力を込める。
その目には、確かな怒りが宿っていた。
「……許さないからね。」
そして静かに呟くと、ロックマンはまるで獲物を狙う獣のように一気に駆けだした。
ゆっくりと優雅に歩くロールとブルース、その背中との距離を、高速で縮めていく。
走っている間に、右腕にはロックバスターを装備した。
足音を隠すつもりなど無い、気付けるなら気付けばいい、気付いたところでこちらは結果を変えるつもりはない、そんな決意を胸にして、ロックマンは走る。
「ん? 何の音だ?」
やがてブルースがその足音に気付き、怪訝そうな顔で振り返って、そして驚愕の表情を浮かべた。
それを不審に思ったロールも何があったのかと思いながら後ろへ振り返り、そして同じく驚愕する。
「「ロックマン!?」」
振り返った二人の視界に映ったものは今までで一度も見せた事のないような怒りの表情を浮かべて走るロックマンで、それに驚いたロールとブルースの声が重なった。
その重なった驚愕の声を聴き、ロックマンは既に怒りに歪めた表情を更に歪め、眉間にシワを深く刻む。
そしてロックマンは二人との距離が後一・五メートル程度という所で垂直に飛び上がり、ブルースに向けてバスターを構え、憤激と憎悪を込めて、叫んだ。
「ロックバスタァァァアァアアッ!!」
右腕に装備したバスターの銃口から、ショッキングピンクに光る銃弾が放たれる。
それは高速で前方へと進み、確かにブルースに被弾した。
衝撃でブルースとロールの周囲に煙が立ち込め、周囲に居たナビ達が何事かと驚きロックマンとロールとブルースの方へと視線を向け、やがて一部が自分に火の粉が降りかかる事を恐れて逃げ出し始め、一部はただ呆然とその様子を見守る。
砂煙が晴れる少し前、その煙を斬る様に紅いソードが振られるのが着地したロックマンの視界に映った。
ロックマンはそのソードに切られる事が無いように二、三メートル後ろへ跳躍する。
紅いソードはブルースの右腕に装備されたもので、ソードは砂煙を斬り裂くように吹き飛ばし、三人の視界をクリアにした。
右腕にソードを装備したブルースが焦りと怒りを込めてロックマンへ叫ぶ。
「おいロックマン! 今のはどう言うつもりだ!」
ソードを構えて威嚇するブルース、その足元で腰を抜かしてしゃがみこむロール、その様子はまるでロールという姫をブルースという騎士兼王子が守っているようで、周囲のナビは何かの特撮を見ている様な感覚を覚えていた。
そして、その周囲のナビから見ればその姫か王子を狙って現れた魔王にも等しい立場のロックマンは、怯えて動けなくなりながらもブルースに頼ろうとするロールと、そんなロールを守ろうとしているのかロールよりも多少前方に立ってソードを構えるブルースを憎いという言葉では言い表せない程不快に思う。
どうしてロールはブルースに頼ろうとしているのだ、どうして本来は自分がいるべき場所にブルースが立っているのだ、それが理解できないロックマンは、ブルースの言葉を唾でも吐き捨てるかのように鼻で笑い飛ばしてから、ブルースへの憎悪とロールへの憤激を宿した目を向けて言った。