異世界から帰ってきたらライバルが百合厨になっていた件について

それから数時間後、自宅に帰った熱斗はとある巨大掲示板――にせんちゃんねるを開き、こんなタイトルのスレッド立てた。



【わけが】異世界から帰ってきたらライバルが百合厨になっていた件について【わからないよ】



そのスレッドは“釣り乙”や“異世界ってなんだよ”、“妄想乙”という声も多いながらなかなかの人気となり、スレ主――熱斗に百合の素晴らしさを教えようとする声も多かったという。
そしてそこで熱斗は百合はレズビアンというよりもGLと言うべきである事、ただしそれは二次元向けの言葉であるという意見、近くに百合があるなんて妬ましいという羨望の声、百合は百合でもリアルはなぁというある種の落胆の声等を多く聴き、今日の炎山と同じ人種が沢山いる事を知って驚いた。

しかし何より熱斗が驚いたのは、以降の自分の事であり――。


「炎山様、光 熱斗から、その、ええと、メールが……」

翌日の午後、昨日と同じようにIPC本社ビルの中の副社長室に籠り仕事に励んでいた炎山は、熱斗から自分へのメールが着信している事をブルースに知らされた。
全く昨日は同じ感情を共有しようと思ったのに酷い目にあったな、等と思い出しながらPET画面を見ると、ブルースはなにやら酷く困った顔をしている。
一体何があったんだ? と不思議に思った炎山はブルースに事情を聞く。

「ブルース、どうした? そんなに複雑そうな顔をして。」
「ええと、ですね……これを、お読みください。」

そういうとブルースはPET画面から姿を消し、同時に熱斗からのメールをPET画面に表示した。
炎山はそれを見て驚愕し、そして数秒後にはとても楽しそうに笑いだすこととなる。

『炎山のクソ馬鹿野郎へ。
お前のせいで俺にまでメイルちゃんとロールがカップルに見えだしたじゃねぇか!!
くっそ、今席隣だからマトモな気持ちで授業受けらんねぇぇええ!!』

何と熱斗からのメールは、自分も百合に目覚めてしまったかもしれない、という報告だったのだ。
しばし驚愕した後、ふとおかしさが込み上げてきた炎山は珍しく大きな声で腹の底から笑い、その笑いが収まった頃に一行、こう返信を出した。



『ようこそ、百合の花園へ。』



熱斗からの返事が“死ね”の一言だったのはおそらく言うまでもない……。


End.
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