異世界から帰ってきたらライバルが百合厨になっていた件について
再びの理由不明の申し出に、炎山とメイルはまた顔を見合わせた。
スプーンを使って、ロールは何をしようというのか、それは全く分からなかったが、メイルはとりあえず、ハイ、と言いながらロールにスプーンを貸した。
すると、スプーンを受け取ったロールは身体の向きを全体的にメイルの方に向けて座り直す。
それにつられてメイルが何と無く身体の向きを全体的にロールへ向けると、ロールは更に嬉しそうに微笑みながら、まだ手のつけられていない苺のパフェへそのスプーンを刺した。
その時炎山は、なんとなくではあったものの、ロールのしたい事に勘付き始めたものだったという。
ロールの様子を不思議そうな眼で見つめるメイル、その口元へ、ロールはパフェから取ったピンク色のアイスクリームの一部を乗せたスプーンを向けて、遂に、
「はい、メイルちゃん、あーん。」
と、言ったのだ。
「え、ええっ?」
メイルが困惑した事は、おそらく言うまでもないだろう。
こんな事をするのは小さな小さな子供とその親か、恋人同士以外の何物でもない。
炎山も、なんとなくそんな気はしていたが、実際にやられると少し訳が違うとでも言うように、なかなか困惑……というよりも、この時炎山の背筋には、何か形容しがたい衝撃が走り抜けていた。
――何だ、この不思議な光景は。――
それが炎山が最初に思った事である。
ともかく、これでロールが実体化の末にやりたかった事は随分とハッキリしてきただろう。
そして、
「う……あ、あーん……。」
最初こそ困惑していたものの、ロールがそれをやりたいというならそれを叶えるのがオペレーターの務め、と思ったのか、メイルはやや恥じらいを含みながらもロールが言うように口を開けた。
ロールは本当に楽しそうな笑みを浮かべながら、メイルが開けた口の中へアイスクリームを滑り込ませる。
それはまるで、恋人同士の一幕。
――美しい……。――
二人の背景に映るビヨンダードの住人達や、自分たちの世界に比べてやや薄汚れている壁の色は、炎山の視界から消え失せていた。
見えるのは、薄桃色の綺麗な世界だけ。
恥じらいを含み僅かに頬を紅く染めるメイルとそれを幸せそうに見つめるロールは、とても綺麗な絵になる光景で、炎山は手もとのコーヒーを飲む事を完全に忘れてそれに見入る。
メイルの口の中にピンク色をした苺のアイスクリームを滑り込ませた後、ロールはスプーンをメイルの口から抜き、またパフェへと向かわせた。
それを見て、え、またやるの?と思ったメイルは、少し申し訳なさそうに、そしてとても恥ずかしそうにもじもじとしながらロールへ問いかける。
「えっと、ロール、まだやるの?」
するとロールは一瞬きょとんとした顔をしたが、またすぐに笑顔に戻って頷いた。
そして再びパフェから苺のアイスクリームをすくい、メイルの口元に近付けつつ語る。
「うん! ……あのね、私、メイルちゃんとこうして一緒にカフェかレストランに行くのが、ずっと夢だったの。」
「夢?」
夢と言われて興味が湧いたのか、拒否することを忘れてメイルが尋ねると、まぁまずはこのアイスを食べて、とロールはスプーンを進めてきた。
メイルは先ほどのように口を開け、ロールも先ほどのようにその口の中にアイスクリームを滑り込ませる。
そしてロールは、今度はメイルがアイスクリームを味わっている間に新しくアイスクリームをすくう事はせず、スプーンをただ持ったままでその夢についてをメイルに語った。
「私ね、ずっと前から、こうしてメイルちゃんと一緒に、普通の人間の女の子みたいな事がしてみたいなぁーって思ってたの。でも今までは私が現実に出る手段も、メイルちゃんが電脳世界にくる手段も無かったから、やいとちゃんや熱斗さんがメイルちゃんと同じ世界でメイルちゃんに接しているのをただ見ているしか無くて……」
そう寂しげに語りながら、ロールはスプーンを持たない左手をゆっくりと上げて、その手でメイルの右頬に優しく触れた。
メイルが、えっ? と思いながらロールに視線を向けると、ロールは寂しさの強い表情を徐々に緩め、穏やかな喜びを浮かべた笑顔をメイルに向けて、
「だからね、私、この世界……ビヨンダードに来れた事、喜んでもいるの。だって此処なら、少しだけだけど、こうしてメイルちゃんと触れあえる、メイルちゃんと同じ世界で過ごせるから……メイルちゃんの笑顔を、画面越しじゃなくて、ちゃんと私の目で見られる事が、とっても幸せなの。」
そう言いながら、ロールはメイルの右頬を、お互いの存在を確かめるようにゆっくりと撫でた。
メイルは最初こそ少し驚いた顔をしていたが、徐々にロールの想いを理解し、自分もロールを大切に思っているのだと伝える為に、ロールのその左手にそっと自分の右手を重ねる。
そして二人は満足ゆくまでお互いの存在を確認すると、またロールがパフェをすくいメイルがそれを食べるという恋人同士のような動作に戻ってゆくのであった。
それも、今度はメイルも楽しそうで嬉しそうな表情をしながら、ロールから差し伸べられるスプーンの先のアイスクリームや生クリームを食べている。
炎山はその数秒後、ブルースから名前を連呼されるまで、自分がうっかりコーヒーをこぼしている事に気がつかなかったという。
スプーンを使って、ロールは何をしようというのか、それは全く分からなかったが、メイルはとりあえず、ハイ、と言いながらロールにスプーンを貸した。
すると、スプーンを受け取ったロールは身体の向きを全体的にメイルの方に向けて座り直す。
それにつられてメイルが何と無く身体の向きを全体的にロールへ向けると、ロールは更に嬉しそうに微笑みながら、まだ手のつけられていない苺のパフェへそのスプーンを刺した。
その時炎山は、なんとなくではあったものの、ロールのしたい事に勘付き始めたものだったという。
ロールの様子を不思議そうな眼で見つめるメイル、その口元へ、ロールはパフェから取ったピンク色のアイスクリームの一部を乗せたスプーンを向けて、遂に、
「はい、メイルちゃん、あーん。」
と、言ったのだ。
「え、ええっ?」
メイルが困惑した事は、おそらく言うまでもないだろう。
こんな事をするのは小さな小さな子供とその親か、恋人同士以外の何物でもない。
炎山も、なんとなくそんな気はしていたが、実際にやられると少し訳が違うとでも言うように、なかなか困惑……というよりも、この時炎山の背筋には、何か形容しがたい衝撃が走り抜けていた。
――何だ、この不思議な光景は。――
それが炎山が最初に思った事である。
ともかく、これでロールが実体化の末にやりたかった事は随分とハッキリしてきただろう。
そして、
「う……あ、あーん……。」
最初こそ困惑していたものの、ロールがそれをやりたいというならそれを叶えるのがオペレーターの務め、と思ったのか、メイルはやや恥じらいを含みながらもロールが言うように口を開けた。
ロールは本当に楽しそうな笑みを浮かべながら、メイルが開けた口の中へアイスクリームを滑り込ませる。
それはまるで、恋人同士の一幕。
――美しい……。――
二人の背景に映るビヨンダードの住人達や、自分たちの世界に比べてやや薄汚れている壁の色は、炎山の視界から消え失せていた。
見えるのは、薄桃色の綺麗な世界だけ。
恥じらいを含み僅かに頬を紅く染めるメイルとそれを幸せそうに見つめるロールは、とても綺麗な絵になる光景で、炎山は手もとのコーヒーを飲む事を完全に忘れてそれに見入る。
メイルの口の中にピンク色をした苺のアイスクリームを滑り込ませた後、ロールはスプーンをメイルの口から抜き、またパフェへと向かわせた。
それを見て、え、またやるの?と思ったメイルは、少し申し訳なさそうに、そしてとても恥ずかしそうにもじもじとしながらロールへ問いかける。
「えっと、ロール、まだやるの?」
するとロールは一瞬きょとんとした顔をしたが、またすぐに笑顔に戻って頷いた。
そして再びパフェから苺のアイスクリームをすくい、メイルの口元に近付けつつ語る。
「うん! ……あのね、私、メイルちゃんとこうして一緒にカフェかレストランに行くのが、ずっと夢だったの。」
「夢?」
夢と言われて興味が湧いたのか、拒否することを忘れてメイルが尋ねると、まぁまずはこのアイスを食べて、とロールはスプーンを進めてきた。
メイルは先ほどのように口を開け、ロールも先ほどのようにその口の中にアイスクリームを滑り込ませる。
そしてロールは、今度はメイルがアイスクリームを味わっている間に新しくアイスクリームをすくう事はせず、スプーンをただ持ったままでその夢についてをメイルに語った。
「私ね、ずっと前から、こうしてメイルちゃんと一緒に、普通の人間の女の子みたいな事がしてみたいなぁーって思ってたの。でも今までは私が現実に出る手段も、メイルちゃんが電脳世界にくる手段も無かったから、やいとちゃんや熱斗さんがメイルちゃんと同じ世界でメイルちゃんに接しているのをただ見ているしか無くて……」
そう寂しげに語りながら、ロールはスプーンを持たない左手をゆっくりと上げて、その手でメイルの右頬に優しく触れた。
メイルが、えっ? と思いながらロールに視線を向けると、ロールは寂しさの強い表情を徐々に緩め、穏やかな喜びを浮かべた笑顔をメイルに向けて、
「だからね、私、この世界……ビヨンダードに来れた事、喜んでもいるの。だって此処なら、少しだけだけど、こうしてメイルちゃんと触れあえる、メイルちゃんと同じ世界で過ごせるから……メイルちゃんの笑顔を、画面越しじゃなくて、ちゃんと私の目で見られる事が、とっても幸せなの。」
そう言いながら、ロールはメイルの右頬を、お互いの存在を確かめるようにゆっくりと撫でた。
メイルは最初こそ少し驚いた顔をしていたが、徐々にロールの想いを理解し、自分もロールを大切に思っているのだと伝える為に、ロールのその左手にそっと自分の右手を重ねる。
そして二人は満足ゆくまでお互いの存在を確認すると、またロールがパフェをすくいメイルがそれを食べるという恋人同士のような動作に戻ってゆくのであった。
それも、今度はメイルも楽しそうで嬉しそうな表情をしながら、ロールから差し伸べられるスプーンの先のアイスクリームや生クリームを食べている。
炎山はその数秒後、ブルースから名前を連呼されるまで、自分がうっかりコーヒーをこぼしている事に気がつかなかったという。