Re_夢の中で貴方に会うから
「……メイルちゃんが謝る事なんて無いよ! 俺が、その、断ってるんだし……メイルちゃんこそこんなに真剣で、まっすぐで、そう思うのに、俺は……」
気まずい空気が二人の間に立ち込めていて、メイルは自分が熱斗を困らせているという事実に後ろめたさを感じた。
それと同時に、熱斗は友人としてとはいえ本当に自分の事を大切にしてくれているのだと感じたメイルは、せめて別れ際――終わりの時は綺麗に迎えたいと思い、再び口を開く。
「熱斗だって真剣でまっすぐだよ。私、それだけで嬉しい。熱斗の事好きになったのは、間違いじゃなかったんだって思えるから……だから……ありがとう、それじゃあ、ね。」
そう言うとメイルは熱斗に背を向けて、既に大きな姿で見えるようになっていた自宅へ向けて歩きだした。
後ろでは熱斗がメイルを追いかける事も追い抜く事もできず立ち尽くしている気配がしたが、メイルは振り返らずに歩いた。
今思えば、またね、と言ってから歩き出すか、これからも友達でいてね、等と言ってから歩き出すべきだったと思わない事も無いが、その頃のメイルは、もしも振り返ってしまえば涙が流れてしまいそうで、これ以上そこに留まっていたならもう笑える自信が無くて、万が一熱斗に呼び止められようものなら捨てる事を決意したはずの期待が再び脳裏にチラついてしまいそうで、それらを回避する為に熱斗に背を向けてそのまま歩きだすだけで精いっぱいだったのだ。
一度も熱途へ振り返らないままで家の中に入り、玄関に鍵を掛け、洗面所で手を洗ってから二階にある自室への階段を上る。
そして自室の扉を開け、中に入り、後ろ手で扉と鍵を閉めた時、メイルはその場に崩れ落ちるように座り込んだ。
両目からは涙が溢れて止まらず、呼吸は引き攣った嗚咽に変わって、メイルは顔を歪めて泣いた。
途中、ロールが、私はメイルちゃんの傍にいるから、と言って慰めてくれた事以外、泣いている最中の自分の思考は、メイルの記憶に無い。
自分が信じていた世界が崩れ落ちて、掻き混ぜられて、ドロドロに溶けて、そのうち砂のようにさらさらと灰になっていくような感覚、それしか、覚えていられなかった。
あれからもう二年の月日が流れ、今のメイルは高校三年生だ。
あの日以来、熱斗からメイルへの連絡は無く、メイルも熱斗へは何も連絡していない。
メイルはそれを最初のうちは、お互い遠慮しているのだ、と思ったが、それから一年が過ぎた頃には、自分はともかく、熱斗は遠慮をして連絡をよこさない訳ではないだろう、と思うようになった。
そう、メイルが熱斗への恋情を熱斗へ告白した時点で、メイルと熱斗の両方が、お互いを普通の友人として認識できなくなってしまった事が問題なのだろう、とメイルは考えるようになっていた。
もし、メイルが熱斗へ恋情を告白しなければ、熱斗は今もメイルを普通の友人として認識していただろう。
そうすれば、恋人同士にはなれないにしても、熱斗が全く連絡を入れなくなるという事態は避けられたかもしれない。
だが、メイルの恋情を熱斗が知り、自分はメイルから恋人になりたい相手として見られていると知り、しかし熱斗にはメイルを恋人にするつもりは無いというのなら、話は別だ。
恐らく熱斗は、メイルが自分を諦める決意をした後も尚メイルの傍にいる事で、メイルに無駄な期待を抱かせてしまう事を避けたかったのだろう、と今のメイルは思っている。
それが、熱斗の最後の優しさなのか、それとも単なる自己保身なのかは分からないが、メイルは熱斗から連絡が無い事に寂しさを感じると同時に、ほんの僅かな安堵も感じていた。
そう、熱斗が自分からメイルに近づく事が無ければ、メイルは無駄な期待など一切抱く事が無くて済む、そこにメイルは少しだけ安堵しているのだ。
それでも、メイルはベッドの上から電源のついていないパソコンとPETを見詰めながら、何処か寂しい思いを感じていた。
恋人になれなかった事は仕方が無い事だと思うが、友人ですらいられないというのはさすがに悲しくて、そうなるように行動してしまった自分が憎らしい。
もし、あの時、それでも友達ではいてほしいと告げていたら。
もし、あの時、またね、と言って別れていたら。
もし、あの時、熱斗を呼びとめて告白などしなければ。
そんないくつもの、もしも、がメイルの脳裏に過る。
そうしてすっかり目が覚めてしまったメイルは、ロールを起こさないように静かにベッドから降りて、ベランダにつながる大きな窓に歩み寄って、カーテンをかきわけながら窓を開いた。
季節は春だというのに、夜の気配を残している空から吹く冷たい風がメイルの頬と髪をなでながら室内に入る。
メイルはやはり足音をたてないようにゆっくりとした動作でベランダに出て、背後の窓をそっと閉じた。
気まずい空気が二人の間に立ち込めていて、メイルは自分が熱斗を困らせているという事実に後ろめたさを感じた。
それと同時に、熱斗は友人としてとはいえ本当に自分の事を大切にしてくれているのだと感じたメイルは、せめて別れ際――終わりの時は綺麗に迎えたいと思い、再び口を開く。
「熱斗だって真剣でまっすぐだよ。私、それだけで嬉しい。熱斗の事好きになったのは、間違いじゃなかったんだって思えるから……だから……ありがとう、それじゃあ、ね。」
そう言うとメイルは熱斗に背を向けて、既に大きな姿で見えるようになっていた自宅へ向けて歩きだした。
後ろでは熱斗がメイルを追いかける事も追い抜く事もできず立ち尽くしている気配がしたが、メイルは振り返らずに歩いた。
今思えば、またね、と言ってから歩き出すか、これからも友達でいてね、等と言ってから歩き出すべきだったと思わない事も無いが、その頃のメイルは、もしも振り返ってしまえば涙が流れてしまいそうで、これ以上そこに留まっていたならもう笑える自信が無くて、万が一熱斗に呼び止められようものなら捨てる事を決意したはずの期待が再び脳裏にチラついてしまいそうで、それらを回避する為に熱斗に背を向けてそのまま歩きだすだけで精いっぱいだったのだ。
一度も熱途へ振り返らないままで家の中に入り、玄関に鍵を掛け、洗面所で手を洗ってから二階にある自室への階段を上る。
そして自室の扉を開け、中に入り、後ろ手で扉と鍵を閉めた時、メイルはその場に崩れ落ちるように座り込んだ。
両目からは涙が溢れて止まらず、呼吸は引き攣った嗚咽に変わって、メイルは顔を歪めて泣いた。
途中、ロールが、私はメイルちゃんの傍にいるから、と言って慰めてくれた事以外、泣いている最中の自分の思考は、メイルの記憶に無い。
自分が信じていた世界が崩れ落ちて、掻き混ぜられて、ドロドロに溶けて、そのうち砂のようにさらさらと灰になっていくような感覚、それしか、覚えていられなかった。
あれからもう二年の月日が流れ、今のメイルは高校三年生だ。
あの日以来、熱斗からメイルへの連絡は無く、メイルも熱斗へは何も連絡していない。
メイルはそれを最初のうちは、お互い遠慮しているのだ、と思ったが、それから一年が過ぎた頃には、自分はともかく、熱斗は遠慮をして連絡をよこさない訳ではないだろう、と思うようになった。
そう、メイルが熱斗への恋情を熱斗へ告白した時点で、メイルと熱斗の両方が、お互いを普通の友人として認識できなくなってしまった事が問題なのだろう、とメイルは考えるようになっていた。
もし、メイルが熱斗へ恋情を告白しなければ、熱斗は今もメイルを普通の友人として認識していただろう。
そうすれば、恋人同士にはなれないにしても、熱斗が全く連絡を入れなくなるという事態は避けられたかもしれない。
だが、メイルの恋情を熱斗が知り、自分はメイルから恋人になりたい相手として見られていると知り、しかし熱斗にはメイルを恋人にするつもりは無いというのなら、話は別だ。
恐らく熱斗は、メイルが自分を諦める決意をした後も尚メイルの傍にいる事で、メイルに無駄な期待を抱かせてしまう事を避けたかったのだろう、と今のメイルは思っている。
それが、熱斗の最後の優しさなのか、それとも単なる自己保身なのかは分からないが、メイルは熱斗から連絡が無い事に寂しさを感じると同時に、ほんの僅かな安堵も感じていた。
そう、熱斗が自分からメイルに近づく事が無ければ、メイルは無駄な期待など一切抱く事が無くて済む、そこにメイルは少しだけ安堵しているのだ。
それでも、メイルはベッドの上から電源のついていないパソコンとPETを見詰めながら、何処か寂しい思いを感じていた。
恋人になれなかった事は仕方が無い事だと思うが、友人ですらいられないというのはさすがに悲しくて、そうなるように行動してしまった自分が憎らしい。
もし、あの時、それでも友達ではいてほしいと告げていたら。
もし、あの時、またね、と言って別れていたら。
もし、あの時、熱斗を呼びとめて告白などしなければ。
そんないくつもの、もしも、がメイルの脳裏に過る。
そうしてすっかり目が覚めてしまったメイルは、ロールを起こさないように静かにベッドから降りて、ベランダにつながる大きな窓に歩み寄って、カーテンをかきわけながら窓を開いた。
季節は春だというのに、夜の気配を残している空から吹く冷たい風がメイルの頬と髪をなでながら室内に入る。
メイルはやはり足音をたてないようにゆっくりとした動作でベランダに出て、背後の窓をそっと閉じた。