Re_それは些細な幸せと大きな悲しみと共に
サーチマンの返答を聴いたメイルは机に頬杖をつきながら、少し考え込むように視線を机に落とした。
どうやらサーチマンの返答はメイルもある程度予測していた事のようで、しかしメイルもサーチマンと同じくそこに踏み込む勇気は持てないらしい。
メイルは少し考え込んでから、小さなため息を吐く。
「はぁ……やっぱり告白しかないのね……でも……今告白しても、振られるだけの気がしちゃって……」
メイルから弱々しくネガティブな言葉を聞くたび、サーチマンの心は白と黒の二つに裂ける。
二つに裂けた心のうち、白色の心はメイルの寂しげな表情が悲しくて、こんな表情を見るぐらいなら、熱斗に早くメイルの想いに気付いてもらった方がいい、と思うのだが、黒色の心はそうは思わず、少しでも長く熱斗がメイルの想いに気付かない事を望んで、その果てには、いっそ振られてしまえばいい、とすら思っている。
熱斗がメイルの想いに気付かなければ、メイルはきっとまた自分を呼びだして相談をしに来る。
ロールにすら教えない、秘密の相談を、自分だけに、サーチマンだけにしてくれる。
そして、もしも熱斗がメイルを振ったなら、その時は自分がその心の隙間に――。
そのもしもは様々な意味で有り得はしないもしもなのだが、それでもサーチマンは僅かな期待を覚えてしまうのか、普段なら口にしないような、女性を口説く時に使うような言葉をメイルに向ける。
「そうか? 桜井ほどの女を放っておくヤツなどいないと思うが?」
サーチマンがそう言うと、メイルは少し驚いたように目をぱちくりさせて、それから僅かに頬を紅潮させながら顔を上げた。
その表情はサーチマンからそんな事を言われるとは思っていなかったと言いたげで、サーチマンはその表情を面白がるように小さく笑う。
メイルはそれを見てサーチマンにからかわれたと思ったのか、少しだけ怒ったような、それでいて少しだけ先ほどの言葉がサーチマンの本心だと信じたいような、何とも複雑そうな表情をして少しだけ声を荒らげる。
「もうっ! お世辞は言わなくていいの!」
そう言ってメイルは立体画面から視線を大きく逸らした。
サーチマンはなんだか面白くなってきて更に口説き文句を畳み掛ける。
「お世辞などではない、お前はいい女だと俺は思う。もしも俺が人間だったら、きっとお前を狙っていただろうな。」
「からかうのはいい加減にして頂戴!」
楽しそうに微笑むサーチマンの言葉は、メイルを少しからかっていると同時に、紛れも無い本心でもあった。
だが、メイルはそれが本心だとは気付かず、からかいの側面ばかりを気にして怒る。
本当に怒りたいのは自分の方だ、これは単なるからかいでは無く本心なのだから、とサーチマンが思っている事など、知りはしないのだろう。
多少は遠回しにしたとはいえ、こんなにも積極的なアピールをして、それでも尚気付いてもらえないという事が、サーチマンは少し、否、大いに悲しかった。
それでもサーチマンは、メイルの前では良き相談相手でいようと、悲しみは表情に出さない。
もしもこの胸の内に秘めた想いがメイルに知られてしまったら、メイルはもう、今のように話しかけてはくれなくなる、それが今は一番怖いのだ。
「あんまりからかうと、ライカに言いつけるわよ!」
「ほう? それなら俺は今まで桜井からどんな相談を受けていたのかをライカ様に説明しなければならないな。」
「えぇっ!? もー……サーチマンの馬鹿ッ!」
例えそれがちょっとした罵倒だとしても、普段は熱斗にばかりかける言葉を自分にもかけてもらえる事、それがサーチマンにとってどれだけ嬉しい事で、同時にどれだけ悲しい事か、その言葉を使うメイルは知らないだろう。
だが、今はそれでもいい、今はこれが最善の関係なのだから、とサーチマンは思う事にしている。
頭の何処かで、本当にそれが最善なのか? と問いかける声があるような気がするのは、おそらく気のせいだろう、という事にして、サーチマンはメイルの反応を楽しむように小さく笑った。
メイルはまだ納得がいかなそうな顔でサーチマンを見据えている。
そんなメイルにまだまだ様々な言葉をかけてみたい気持ちを抑えて、サーチマンはメイルのPETの中の時計を見た。
「もうこんな時刻か……俺はそろそろライカ様の所へ戻る。桜井、モニターへのプラグインを頼む。」
「あら、もうそんな時間なの? もう少し話していたかったけど……あんまりお仕事の邪魔をしたら、ライカに怒られちゃうものね。」
さっきまで怒っていたというのに、もう涼しげな笑みを見せるメイルを見て、サーチマンは少しだけ寂しくなる。
もっと怒って自分を気にしてくれてもいいのに、という気持ちがあるからだ。
だが、だからといってまだしばらく此処にいようものなら、自分は熱斗への嫉妬やメイルが自分の想いに気付いてくれない事への悲しみで壊れてしまうかもしれない、とも思うので、丁度この辺りが潮時だろうとも思っていた。
そんなサーチマンの思惑を知ってか知らずか、メイルは椅子から立ちあがり、モニターのすぐ横のコントロールパネルに気が付いて、最初にサーチマンをPETの中へ呼び寄せた時と同じ様に、PETとコントロールパネルを赤外線でつなげた。
サーチマンはメイルのPETの立体画面からその画面ごと姿を消して、モニターの画面に再び姿を見せる。
「それじゃあな、頑張れよ、桜井。」
「えぇ、ありがとう。またね、サーチマン。」
サーチマンが軽く微笑んで手を振ると、メイルも微笑んで手を振り返してくれた。
それが映るウインドウを見ながら、サーチマンはモニターの電脳からワープで姿を消し、名人の研究室にあるパソコンの電脳へ急ぐ。
どうやらサーチマンの返答はメイルもある程度予測していた事のようで、しかしメイルもサーチマンと同じくそこに踏み込む勇気は持てないらしい。
メイルは少し考え込んでから、小さなため息を吐く。
「はぁ……やっぱり告白しかないのね……でも……今告白しても、振られるだけの気がしちゃって……」
メイルから弱々しくネガティブな言葉を聞くたび、サーチマンの心は白と黒の二つに裂ける。
二つに裂けた心のうち、白色の心はメイルの寂しげな表情が悲しくて、こんな表情を見るぐらいなら、熱斗に早くメイルの想いに気付いてもらった方がいい、と思うのだが、黒色の心はそうは思わず、少しでも長く熱斗がメイルの想いに気付かない事を望んで、その果てには、いっそ振られてしまえばいい、とすら思っている。
熱斗がメイルの想いに気付かなければ、メイルはきっとまた自分を呼びだして相談をしに来る。
ロールにすら教えない、秘密の相談を、自分だけに、サーチマンだけにしてくれる。
そして、もしも熱斗がメイルを振ったなら、その時は自分がその心の隙間に――。
そのもしもは様々な意味で有り得はしないもしもなのだが、それでもサーチマンは僅かな期待を覚えてしまうのか、普段なら口にしないような、女性を口説く時に使うような言葉をメイルに向ける。
「そうか? 桜井ほどの女を放っておくヤツなどいないと思うが?」
サーチマンがそう言うと、メイルは少し驚いたように目をぱちくりさせて、それから僅かに頬を紅潮させながら顔を上げた。
その表情はサーチマンからそんな事を言われるとは思っていなかったと言いたげで、サーチマンはその表情を面白がるように小さく笑う。
メイルはそれを見てサーチマンにからかわれたと思ったのか、少しだけ怒ったような、それでいて少しだけ先ほどの言葉がサーチマンの本心だと信じたいような、何とも複雑そうな表情をして少しだけ声を荒らげる。
「もうっ! お世辞は言わなくていいの!」
そう言ってメイルは立体画面から視線を大きく逸らした。
サーチマンはなんだか面白くなってきて更に口説き文句を畳み掛ける。
「お世辞などではない、お前はいい女だと俺は思う。もしも俺が人間だったら、きっとお前を狙っていただろうな。」
「からかうのはいい加減にして頂戴!」
楽しそうに微笑むサーチマンの言葉は、メイルを少しからかっていると同時に、紛れも無い本心でもあった。
だが、メイルはそれが本心だとは気付かず、からかいの側面ばかりを気にして怒る。
本当に怒りたいのは自分の方だ、これは単なるからかいでは無く本心なのだから、とサーチマンが思っている事など、知りはしないのだろう。
多少は遠回しにしたとはいえ、こんなにも積極的なアピールをして、それでも尚気付いてもらえないという事が、サーチマンは少し、否、大いに悲しかった。
それでもサーチマンは、メイルの前では良き相談相手でいようと、悲しみは表情に出さない。
もしもこの胸の内に秘めた想いがメイルに知られてしまったら、メイルはもう、今のように話しかけてはくれなくなる、それが今は一番怖いのだ。
「あんまりからかうと、ライカに言いつけるわよ!」
「ほう? それなら俺は今まで桜井からどんな相談を受けていたのかをライカ様に説明しなければならないな。」
「えぇっ!? もー……サーチマンの馬鹿ッ!」
例えそれがちょっとした罵倒だとしても、普段は熱斗にばかりかける言葉を自分にもかけてもらえる事、それがサーチマンにとってどれだけ嬉しい事で、同時にどれだけ悲しい事か、その言葉を使うメイルは知らないだろう。
だが、今はそれでもいい、今はこれが最善の関係なのだから、とサーチマンは思う事にしている。
頭の何処かで、本当にそれが最善なのか? と問いかける声があるような気がするのは、おそらく気のせいだろう、という事にして、サーチマンはメイルの反応を楽しむように小さく笑った。
メイルはまだ納得がいかなそうな顔でサーチマンを見据えている。
そんなメイルにまだまだ様々な言葉をかけてみたい気持ちを抑えて、サーチマンはメイルのPETの中の時計を見た。
「もうこんな時刻か……俺はそろそろライカ様の所へ戻る。桜井、モニターへのプラグインを頼む。」
「あら、もうそんな時間なの? もう少し話していたかったけど……あんまりお仕事の邪魔をしたら、ライカに怒られちゃうものね。」
さっきまで怒っていたというのに、もう涼しげな笑みを見せるメイルを見て、サーチマンは少しだけ寂しくなる。
もっと怒って自分を気にしてくれてもいいのに、という気持ちがあるからだ。
だが、だからといってまだしばらく此処にいようものなら、自分は熱斗への嫉妬やメイルが自分の想いに気付いてくれない事への悲しみで壊れてしまうかもしれない、とも思うので、丁度この辺りが潮時だろうとも思っていた。
そんなサーチマンの思惑を知ってか知らずか、メイルは椅子から立ちあがり、モニターのすぐ横のコントロールパネルに気が付いて、最初にサーチマンをPETの中へ呼び寄せた時と同じ様に、PETとコントロールパネルを赤外線でつなげた。
サーチマンはメイルのPETの立体画面からその画面ごと姿を消して、モニターの画面に再び姿を見せる。
「それじゃあな、頑張れよ、桜井。」
「えぇ、ありがとう。またね、サーチマン。」
サーチマンが軽く微笑んで手を振ると、メイルも微笑んで手を振り返してくれた。
それが映るウインドウを見ながら、サーチマンはモニターの電脳からワープで姿を消し、名人の研究室にあるパソコンの電脳へ急ぐ。