謎会話ログ≪1≫

【何処かにあるかもしれない未来の姿】

※本編時期に大した波乱が無い状態で10年近く経過した世界の話※


満「(あー、今日も疲れたなぁ……気持ちは常に最初と同じでも、体力の上限はそうはいかない……って感じが少しずつ出てきて悲しいや。あれ?今あのコンビニから出てきた人……)あの!すみません!」
未彩「えっ?……あ!!」
満「えっと、未彩ちゃん、だよね?」
未彩「ハイ……あの、藤咲先生、ですよね?」
満「そうだよ!久しぶりだね!」
未彩「お久しぶりです。俺があの中学を卒業して以来ですから……10年弱ぶり、と言ったところですか?」
満「そうそう、本当に久しぶり!その格好は、退勤中とかかな?」
未彩「ハイ、少し前に会社を出てきたばかりで……」
満「こんな偶然ってあるんだね~。……というか、未彩ちゃん……身長、大分伸びたんだね?なんだか僕と大差無く見えるけど……。」
未彩「あぁ、えっと……まぁ、175~176cm程度になりましたんで。」
満「えっ!?じゃあ、僕と2cm違うか違わないか程度なんだ、凄いや!スーツ姿も決まって……あれ?未彩ちゃん、それ……」
未彩「なんでしょうか?」
満「……僕ならともかく、未彩ちゃんの場合はネクタイなんて必要無いんじゃ……?というか、よく見たらスーツも紳士物、だよね?」
未彩「あぁ、それは……最初は違ったんですが、その……俺の体型でパンツスーツ着用だと、どうにも男性と見間違えられやすい様で……別の部署の先輩社員達から『クールビズの時期はまだだぞ』と本気と嫌味の両方で言われ続けるのが、もう面倒で……」
満「うわぁ、そうなんだ……でも、それだと未彩ちゃんが居る部署の人達は逆の注意をしてきたりはしないの?」
未彩「……最初はそう危惧した事もあるんですが、何も言われないと言うか……寧ろ、同じ部署の数名が男女混合で俺について『何処にも可愛げの一つも無いクセに女だと主張する格好をやっとやめてくれた』と言っていたのを偶然聞いてしまいましたので……」
満「……その会社、結構なブラックだったりしない?例え仕事内容や給料は真っ当の範囲だったとしても、社員の質がそうだとは言えない的な意味で……。」
未彩「……それでも、なかなか内定が取れずにギリギリの立場だった俺を拾ってくれた会社なので、あまり文句は言えないんですよ。なので……近い内に髪を切ろうと思っています。」
満「えっ?もしかして、それも会社の……」
未彩「えぇ、まぁ……ネクタイを締める様になった後、今度は『髪の長い男は軽薄に見える』と言われるようになりまして、短髪にしようかと……もう少し後だったら、藤咲先生が俺に気付く事も無かったかもしれませんね。」
満「……未彩ちゃん、連絡先交換しよう?」
未彩「え?どうして」
満「いいから!!とりあえず携帯の電話番号とプライベート用のメールアドレス、教えて!!僕のも未彩ちゃんに教えるから!!」
未彩「えっと……分かりました。」
満「(学校とは別の逃げ辛い場所で、こんな……せめて、今は繋ぎ止めておかないと……そして、君が人生自体を諦めてしまう前に、僕がどうにか……!)」
未彩「(……何故、藤咲先生が思い詰めた様な表情をする必要が……?)」


登場人物:
藤咲 満 (30代半ば。本編と同じく公立の中学校に国語教師として勤務)
清上院 未彩 (20代前半。中規模企業の正社員になっているが、中学時代と同様に対人的な立場が良くない様子)

補足情報:
作中で未彩が女性の社会人であるにも拘らず「俺(オレ)」という一人称を使用している部分がありますが、これは相手が中学時代の未彩を知る人物(=満)であるからです。
会社やその関係者等の完全な社会人として対峙すべきビジネスパーソンと話す時の未彩は「私(ワタシ)」や「自分」といった一人称を使用しています。
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