謎会話ログ≪1≫
【達観者は俗世に多くを望まないが故にその特例的立場を確立し、俗世の動きを観察し続ける事が可能になるのである】
未彩「はぁ……お前は本当にそういう奴だよ(※疲れた表情)」
論名「フフッ、それはどうも(※笑顔)」
未彩「チッ……とにかく、俺はもう行くからな?」
論名「うん、またね(※飽く迄も笑顔)」
満「……。」
論名「さて、と……それで、どうかしましたか?藤咲先生。そんなに複雑そうな様子で未彩と私を観察して。」
満「!?(何で、気付いて……僕の立ち位置、未彩ちゃんからは見えてもおかしくない位置だけど、論名ちゃんにとっては割と死角――背後と言っても良い方向だし、接近と言える程近付いている訳じゃないのに……)」
論名「凄く驚いた表情をしていますね。やっぱり、長期的で持続的な感情を隠すのは得意でも、不意を突かれて瞬発的に湧いた感情を隠すのは苦手なんですか?(※笑顔)」
満「(……普段の僕が完全な自然体じゃない可能性にも勘付いているって訳か……確かに、生きたまま解剖台の上に乗せられた様な気分だ。)……まぁ、僕もよくいる普通の人間だからね、それぐらいの事はあるよ。」
論名「……そういう事にしておきましょうか、フフッ。ところで……未彩に何か用事でしたか?」
満「いや、用事は別に……自分の担当するクラスの生徒が居たから何となく気になっただけで、声を掛ける気はそもそも無かったよ。」
論名「へぇ、そうなんですか?その割にはなんだか意味深長な空気が感じられましたけど。」
満「……別に、深い意味なんて無いよ。というか、この場合って普通は自分に用事がある可能性も含めて訊かない?僕の視界には未彩ちゃんだけじゃなくて君も……論名ちゃんも映っていたんだから。」
論名「あぁ、そう訊いた方が良かったですか?でも、気配だけだと貴方が主に気にしていたのは未彩の方だと感じられたんで、つい。」
満「……。」
論名「……とはいえ、さっきの私と未彩の会話が教員の介入を必要とする場面でない事は一応理解していた様ですね?」
満「まぁ……そこは流石にね。君は未彩ちゃんを虐めている訳じゃないだろうし、未彩ちゃんも君に虐められているとは思っていない様だ、って事は知っているから。」
論名「へぇ、意外とバランスが取れた考察ができるんですね。面倒臭がって完全に放置する教員とも平和にしようと躍起になって逆にトラブルを増やす教員とも違うみたいで何よりです。……でも、何か訊きたそうな顔はしていますよね?」
満「……そうだね、訊いていいかな?」
論名「どうぞ?」
満「(論名ちゃんって、他の子達と違って常に微笑している辺りが怖いと言うか、不気味なんだよね……)ねぇ、論名ちゃんは……どうして未彩ちゃんにあんな辛辣な言葉ばかり使うのかな?もしかして、それ等を使う事によって未彩ちゃんに望んでいる事でもあるの?」
論名「成程、そういう事ですか……残念かもしれませんが、私は未彩に望んでいる事なんて何もありませんよ?」
満「……その割には、未彩ちゃんの思考を何処か別の地点へ誘導するような表現が多い気がするんだけど……本当に、何も望んでないの?実は未彩ちゃんにどうなって欲しいとか、そういう事を望んでいたりするんじゃないの?」
論名「フフ、その答えは完全な『いいえ』ですよ。私は別に未彩に何らかの変化を望んだりはしていません。かといって、何も変わるなと言う気もありません。だってそんな、他人を自分の意に添わせたいが故の期待感は身勝手だと思いませんか?(※笑顔)」
満「……それは、一理あるけど……だとしたら、論名ちゃんはどうして未彩ちゃんにあんな対応を」
論名「私がしたいからしているだけですよ。それをどう受け取るかは未彩の自由です。」
満「……でも、あんなやり方じゃいつかは未彩ちゃんに嫌われて突き放されるんじゃないかって……怖くなったり、しないの?」
論名「……藤咲先生だったら、怖くなるんですか?」
満「えっ……?」
論名「あぁ、少し意地悪な質問と論点ずらしでしたね、ごめんなさい。それで、私の答えですけど……別に、怖くないですよ?だって私は『未彩に好かれてたい訳じゃない』ですから。好かれ続けたい訳でなければ、嫌われる事なんて怖くないものですよね?」
満「(……待って、その言い方だと、まるで……まるで、僕が……)」
論名「……私はただ私が動きたい様に動いているだけ、という話をしただけですから、それ以外はあんまり深く考えないで大丈夫ですよ?勿論、考えたければ考えても構いませんけど……考えた故の責任を、私に負わせようとするのは無しにしてくださいね?(※笑顔)」
満「……。」
論名「そんなに追い詰められた様な表情にならなくても大丈夫ですよ?私は藤咲先生に何かを期待したりする事もありませんから。……未彩に期待しない事と同じ様に。」
満「……それなら、君がそれでも未彩ちゃんの近くに居続けるのは、何故?だって、あんなに辛辣な言葉ばかり並べるって事は、未彩ちゃんに不快感があるって事じゃないの?それでも君が未彩ちゃんを突き放さないのは……どうして?」
論名「あぁ、私って傍から見るとそう映るんですね……少し勉強になりました、ありがとうございます(※笑顔)」
満「……。」
論名「それで、私が未彩を突き放さない理由ですけど……突き放す理由が特に無いからですよ。だって、私は未彩に憐れみの様なモノを感じる事はあっても、嫌悪感を覚える事はありませんし。だから、未彩が私を突き放せない内は近くに居てあげて、その代り私が色々と覗くのも面白いかと思いまして……ね?」
満「……つまり、君は未彩ちゃんに嫌悪も好感も無い訳だ?」
論名「うーん、面白いと思うのは『快』の感情の範囲の筈ですし、好感に入りませんかね?私以外の人達だって、この人と居ると楽しいとか、面白いとか、そう感じる相手に好感を覚えるのが王道の筈ですし。」
満「だとしても、嫌われる事が全く怖くない君のそれは、少し違うと僕は思うかな……。」
論名「そうですか?……意外な答えですね。」
満「……何が言いたいの?」
論名「さて、何でしょう?(※笑顔)」
満「(……未彩ちゃんという同世代の血縁者だけじゃない、僕という年上の他人ですら解剖台に乗せて捌く様な立ち回り……やっぱり、この子は侮れないと言うか、底知れないな……。)」
論名「(……やっぱり、この人は他人から嫌悪で突き刺される事をまだ少しだけ恐れている……まぁ、本人すら分からない無自覚の範囲みたいだけど、ね。)」
登場人物:
清上院 未彩 (論名を突き放さない?いいえ、突き放せないんです)
清上院 論名 (何処までも得体の知れない不気味さが拭えない少女)
藤咲 満 (論名を探ろうとしたら自分を探られたちょっと残念な大人)
未彩「はぁ……お前は本当にそういう奴だよ(※疲れた表情)」
論名「フフッ、それはどうも(※笑顔)」
未彩「チッ……とにかく、俺はもう行くからな?」
論名「うん、またね(※飽く迄も笑顔)」
満「……。」
論名「さて、と……それで、どうかしましたか?藤咲先生。そんなに複雑そうな様子で未彩と私を観察して。」
満「!?(何で、気付いて……僕の立ち位置、未彩ちゃんからは見えてもおかしくない位置だけど、論名ちゃんにとっては割と死角――背後と言っても良い方向だし、接近と言える程近付いている訳じゃないのに……)」
論名「凄く驚いた表情をしていますね。やっぱり、長期的で持続的な感情を隠すのは得意でも、不意を突かれて瞬発的に湧いた感情を隠すのは苦手なんですか?(※笑顔)」
満「(……普段の僕が完全な自然体じゃない可能性にも勘付いているって訳か……確かに、生きたまま解剖台の上に乗せられた様な気分だ。)……まぁ、僕もよくいる普通の人間だからね、それぐらいの事はあるよ。」
論名「……そういう事にしておきましょうか、フフッ。ところで……未彩に何か用事でしたか?」
満「いや、用事は別に……自分の担当するクラスの生徒が居たから何となく気になっただけで、声を掛ける気はそもそも無かったよ。」
論名「へぇ、そうなんですか?その割にはなんだか意味深長な空気が感じられましたけど。」
満「……別に、深い意味なんて無いよ。というか、この場合って普通は自分に用事がある可能性も含めて訊かない?僕の視界には未彩ちゃんだけじゃなくて君も……論名ちゃんも映っていたんだから。」
論名「あぁ、そう訊いた方が良かったですか?でも、気配だけだと貴方が主に気にしていたのは未彩の方だと感じられたんで、つい。」
満「……。」
論名「……とはいえ、さっきの私と未彩の会話が教員の介入を必要とする場面でない事は一応理解していた様ですね?」
満「まぁ……そこは流石にね。君は未彩ちゃんを虐めている訳じゃないだろうし、未彩ちゃんも君に虐められているとは思っていない様だ、って事は知っているから。」
論名「へぇ、意外とバランスが取れた考察ができるんですね。面倒臭がって完全に放置する教員とも平和にしようと躍起になって逆にトラブルを増やす教員とも違うみたいで何よりです。……でも、何か訊きたそうな顔はしていますよね?」
満「……そうだね、訊いていいかな?」
論名「どうぞ?」
満「(論名ちゃんって、他の子達と違って常に微笑している辺りが怖いと言うか、不気味なんだよね……)ねぇ、論名ちゃんは……どうして未彩ちゃんにあんな辛辣な言葉ばかり使うのかな?もしかして、それ等を使う事によって未彩ちゃんに望んでいる事でもあるの?」
論名「成程、そういう事ですか……残念かもしれませんが、私は未彩に望んでいる事なんて何もありませんよ?」
満「……その割には、未彩ちゃんの思考を何処か別の地点へ誘導するような表現が多い気がするんだけど……本当に、何も望んでないの?実は未彩ちゃんにどうなって欲しいとか、そういう事を望んでいたりするんじゃないの?」
論名「フフ、その答えは完全な『いいえ』ですよ。私は別に未彩に何らかの変化を望んだりはしていません。かといって、何も変わるなと言う気もありません。だってそんな、他人を自分の意に添わせたいが故の期待感は身勝手だと思いませんか?(※笑顔)」
満「……それは、一理あるけど……だとしたら、論名ちゃんはどうして未彩ちゃんにあんな対応を」
論名「私がしたいからしているだけですよ。それをどう受け取るかは未彩の自由です。」
満「……でも、あんなやり方じゃいつかは未彩ちゃんに嫌われて突き放されるんじゃないかって……怖くなったり、しないの?」
論名「……藤咲先生だったら、怖くなるんですか?」
満「えっ……?」
論名「あぁ、少し意地悪な質問と論点ずらしでしたね、ごめんなさい。それで、私の答えですけど……別に、怖くないですよ?だって私は『未彩に好かれてたい訳じゃない』ですから。好かれ続けたい訳でなければ、嫌われる事なんて怖くないものですよね?」
満「(……待って、その言い方だと、まるで……まるで、僕が……)」
論名「……私はただ私が動きたい様に動いているだけ、という話をしただけですから、それ以外はあんまり深く考えないで大丈夫ですよ?勿論、考えたければ考えても構いませんけど……考えた故の責任を、私に負わせようとするのは無しにしてくださいね?(※笑顔)」
満「……。」
論名「そんなに追い詰められた様な表情にならなくても大丈夫ですよ?私は藤咲先生に何かを期待したりする事もありませんから。……未彩に期待しない事と同じ様に。」
満「……それなら、君がそれでも未彩ちゃんの近くに居続けるのは、何故?だって、あんなに辛辣な言葉ばかり並べるって事は、未彩ちゃんに不快感があるって事じゃないの?それでも君が未彩ちゃんを突き放さないのは……どうして?」
論名「あぁ、私って傍から見るとそう映るんですね……少し勉強になりました、ありがとうございます(※笑顔)」
満「……。」
論名「それで、私が未彩を突き放さない理由ですけど……突き放す理由が特に無いからですよ。だって、私は未彩に憐れみの様なモノを感じる事はあっても、嫌悪感を覚える事はありませんし。だから、未彩が私を突き放せない内は近くに居てあげて、その代り私が色々と覗くのも面白いかと思いまして……ね?」
満「……つまり、君は未彩ちゃんに嫌悪も好感も無い訳だ?」
論名「うーん、面白いと思うのは『快』の感情の範囲の筈ですし、好感に入りませんかね?私以外の人達だって、この人と居ると楽しいとか、面白いとか、そう感じる相手に好感を覚えるのが王道の筈ですし。」
満「だとしても、嫌われる事が全く怖くない君のそれは、少し違うと僕は思うかな……。」
論名「そうですか?……意外な答えですね。」
満「……何が言いたいの?」
論名「さて、何でしょう?(※笑顔)」
満「(……未彩ちゃんという同世代の血縁者だけじゃない、僕という年上の他人ですら解剖台に乗せて捌く様な立ち回り……やっぱり、この子は侮れないと言うか、底知れないな……。)」
論名「(……やっぱり、この人は他人から嫌悪で突き刺される事をまだ少しだけ恐れている……まぁ、本人すら分からない無自覚の範囲みたいだけど、ね。)」
登場人物:
清上院 未彩 (論名を突き放さない?いいえ、突き放せないんです)
清上院 論名 (何処までも得体の知れない不気味さが拭えない少女)
藤咲 満 (論名を探ろうとしたら自分を探られたちょっと残念な大人)