謎会話ログ≪1≫

【達観者の密やかなる忠告】(※【KitS 3】後日談ネタ 番外編1) 


未彩「ほら、飲み物だ。……しかし、お前が此方に来るのは久々だな。」
論名「そうだね、普段は学校で会うから従姉妹とはいえわざわざ互いの自宅で会う必要なんて、とは私も思うから。……ところで未彩……今、スマホって持ってる?」
未彩「スマホ?……あぁ、悪い、自室に置いたままの様だ。必要なら――」
論名「ううん、近くに持っていないならいいの、取りに行かないで。そのまま動かないで、聴いて。」
未彩「論名?それはどういう……」

論名「……未彩はね、完全じゃないの。」
未彩「は?」
論名「未彩は確かに真波ちゃんやマサナくんとは違うし、秋斗ちゃんとすら違うから、それで上手くいかない事が多発する事に間違いは無い、けど……それでも常に100%って訳じゃないの。」
未彩「論名?お前、一体何を」
論名「確かに未彩も大概ではあるよ?でも……一番恐ろしいのは、今となっては未彩じゃない。だって、未彩にはギリギリの制御装置が残っているし、積み重ねた迷いがいつか停止装置として働いてくれる可能性もある。でも……『初めての人に、そんなものは無い』んだよ?」
未彩「それは、どういう……というか、お前は誰の何についてそんな事を……」
論名「……まぁ、それでも未彩がそれを良しとしていて、それが自分には幸せだって陶酔的に思えるなら良いんじゃないかな?と私は思うよ。ただ、万が一そうじゃないなら……何も知らない、気付く機会も無いままっていうのはちょっとだけ可哀想かな?と思ったから、ヒントだけは渡しておこうと思ったの。だから、もう一度だけ言うけど……『迷う経験をする程の経験すらなかった人に、自力で止まる手段は無い』から、気を付けた方が良いよ。……まぁ、今更手遅れだとは思うから引き返せとは言わないけどね。」
未彩「……相変わらず、お前の話はよく分からないな。特に、今回は。」
論名「んー、この話に限っては分からない方が幸せかもしれないし、それで良いんじゃないかな?私も完璧に理解しろって言う気は無いんだよね。でも、何も教えないのも気が進まなかったから……未彩だけの事だったらもっと分かりやすく突き付ければ良いんだけど、これは違うからこの程度が限界。まぁ、私の自己満足だから、気にならないなら気にしなくて大丈夫だよ。」
未彩「……そうか。」
論名「あぁそれと、今の話は誰にもしないでね?誰にも。どんなに信頼できる人でも、駄目。」
未彩「……例えお前より信頼のおける相手が居ても、か?」
論名「うん、駄目。私に危ない目に遭ってほしくなかったら今だけの秘密の話にしてね?」
未彩「危ない目、って……まぁ、理由は分からないが要求は分かった、秘密にしておこう。」
論名「そこは分かってくれて良かった。まぁ、これから頑張ってね?」
未彩「……本当によく分からないな、お前の言う事は。」


登場人物:
清上院 未彩 (盲目に幸福な被害者)
清上院 論名 (鋭敏な静寂の達観者)
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