謎会話ログ≪1≫

【結論:どの様な事態をどの様な角度で見ようとも、この世で一番恐ろしい存在が『人間』である事に間違いはありません】


≪場所:2-2教室≫
真波「ねぇねぇマサナ!」
マサナ「んー?」
真波「あたしね、この前話題になってたホラーゲーム買ったんだぁ。だから、一緒に遊ぼ♪」
マサナ「おー! この前テレビでCMやってたアレ? 俺も興味あったんだよなー、真波ナイスじゃん!」
真波「てっへへ~♪」
マサナ「確か、山奥の集落の近くに在る森やトンネル、廃墟なんかに潜む超強い怨霊に狙われる話だっけ?」
真波「そうそう! 戦う手段も無いから、サバイバルな感じで逃げながら謎を解いて生き延びないといけないんだよね!」
マサナ「幽霊相手じゃ殴りかかっても意味ないもんなー……う~、やっぱり心霊現象って怖いよなー!」

満「……本当それが最怖だと思っているの?」

マサナ「え?」
真波「へっ? ……は? 藤咲先生? え、何?」
満「だから、君達は本当に『心霊現象こそがこの世で最も怖いモノだと思っているの?』って聞いたんだよ。現実を含まずフィクションに限った場合も含めてね。」
真波「えーっと……そりゃあ、ね~……?」
マサナ「現実的な手段で倒せない上に何をしてくるのか分からない敵は怖い、って考えたら……そうだと思いますけど……。」
満「ふーん……現実的な手段――つまりは物理的な攻撃が通じない存在であり、どうやって自分を殺しに掛かってくるのか分からない存在でもある幽霊は怖い……というのが君達の結論かぁ……。」
真波「藤咲先生……何が言いたいワケ?」
満「……じゃあさ、君達は『一般的な物理的な攻撃が通じる普通の人間』から『お前を一切の抵抗できない様に両手両足をキツく拘束した状態で床に転がして、死なない程度に喉を切開する事で悲鳴を封じた上で拷問する』と言われても怖いと思わないんだよね?」
真波・マサナ「えっ。」
満「ん? 君達が怖いのは物理的な攻撃が通じずに何をしてくるかも分からない幽霊でしょ? だったら、物理的な攻撃は通じるし何をしてくるのか事前に教えて分からせてくれる人間は怖くないんじゃないの?(※笑顔)」
マサナ「……いや、それは、ちょっと……」
真波「何その意味不明な話……」
満「そうそう、拷問の内容も先に教えられたら分かる事になるから怖くないよね? 例えば『爪と肉の間に何度も針を刺して、それで肉から剥がれ気味になった爪を一気に引き抜くように剥す』とか、とにかく細かく『具体的』に――」
真波「ちょ、マサナ……コレ、マジでヤバくない……?」
マサナ「それ、俺も思ってた……ていうか、コレっていつまで聞けばいいんだよ……?」

満「それで、最後は『腕も脚も無くなった身体を持ち上げて固い壁に頭部を叩き付けて頭蓋骨ごと脳を――』」
未彩「藤咲先生ッ!!(※怒号)」
満「あっ。」
真波「み、未彩っ?(よくわかんないけど、助かった気がする!!)」
マサナ「せ、清上院!!(なんで来たのか知らないけど、ナイスタイミングッ!!)」
満「未彩ちゃん、こっちの方に来ていたの?」
未彩「『来ていたの?』じゃ、ありませんよ!? 真波と旗見に一体どんな話をしているんですかッ!!」
満「え? 真波ちゃんとマサナくんがこの世で一番怖いモノを幽霊とかの曖昧な心霊現象だと誤認していたから認識の修正に必要な事を話していただけだよ?」
真波「コイツ、やっぱりマジでヤバいんじゃ……(※小声)」
マサナ「それ、俺も思う……(※小声)」
未彩「認識の修正、って……先程の話の何処が修正に必要な話だと言うんですか!? あんなッ、厨二病を拗らせた拷問マニアが好む様な内容の話で何が修正出来ると……!」
満「でもほら、現実味の無い幽霊からよく分からない事をされるよりも『実在する人間から具体的で詳細な内容を列挙される方がずっと恐ろしい』……って事はよく分かる話だったでしょ?ww」
真波「えー……。」
マサナ「なんだそりゃ……。」
未彩「藤咲先生……そういう事はせめて大人同士でやってくださいよ……俺や真波達は中学二年生の子供なんですから……。」
満「うーん、認識の形成と微修正は子供の内が肝心要なんだけどなぁー……よく言うでしょ?『三つ子の魂百まで』って。」
未彩「そういう問題では……」
満「まぁ安心してよ、さっきの話は全部『例え話』であって、2人に対して本当にそうする気がある事じゃないからさww」
未彩「する気があったら大問題ですッ!!(※怒声)」
マサナ「(2人に対して、って言い方がなーんか引っかかるの、俺だけかなー……。)」
満「アハハッ、そこは安心してってww」
真波「(マジで意味わかんない……。)」

満「それより……未彩ちゃんって、ああいう話に割と詳しいんだね?(※不敵な笑み)」
真波・マサナ「えっ?」
未彩「……は? いや、急に何を」
満「だって、さっき言ったよね?『厨二病を拗らせた拷問マニアが好む様な内容』って……どうして厨二病が好む話だっていう『詳細』まで分かったのかなぁー?(※嫌らしい笑み)」
未彩「ッ――!!」
真波「未彩……。」
マサナ「清上院、お前もか……。」
未彩「ち、違う!! 俺は違う!! 誤解だ!!」
満「(例え未彩ちゃんが僕と同じ様な趣味であったとしても、今の未彩ちゃんが真波ちゃんとマサナくんにとって『僕の話を止めてくれた英雄』である事に変わりは無い筈なのに……やっぱり、2人から未彩ちゃんへの信用度や好感度は『2人同士の場合よりも圧倒的に低い』よねー……それなのに必死に弁解しちゃって、可哀想と言うか何と言うか……。)」
未彩「クソッ!! 俺は2人を助けたかっただけだと言うのに、何故……何故、この様な事になるんだ……!」


登場人物:
桜木 真波 (一般的で平均的な人間の感覚を持つ少女。件のゲームは遊ぶ度に満の『具体的な話』が脳裏を過ってしまう所為であまり楽しめなくなる模様)
旗見 マサナ (常識度と善良度が高い少年。件のゲームのCMは真波と同じ理由で苦手になってしまう模様)
藤咲 満 (そろそろPTAに叱られそうな気がする話をガッツリしまくった男性教師。……尚、裏の属性は『(怨恨型の)殺人鬼』なので、あの話は既に何処かで実践済みという可能性も……?)
清上院 未彩 (何故か今回最大の被害者となった少女。……しかし、未彩は『真波とマサナには不要で邪魔なお荷物』故にこの様な扱いでも当然の存在であり、今回は寧ろ温情措置を受けている方だという余談も少々……)
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