謎会話ログ≪1≫

【ぼくらはみんな、ゆがんでいる】


≪場所:職員室≫
Crown「あの、藤咲先生……今朝の校長先生ってまた凄くピリピリしてましたけど、また何かあったんですか?」
満「あぁ、それはね……君が知っているかどうかは分からないけど、昨日は小学校~高校関連の不祥事とそれに対する責任を追及する系のニュースが割と多く放送されていたから『同じ様な面倒を起こして責任追及をされてくれるなよ』って意味で威圧していただけだと思うよ。まぁ、正直よくある事だよね。」
Crown「あー……そういう感じですか……。」
満「まぁ、組織の上層に立つ者っていうのは大変なんだろうね。校長という地位とか学校の名誉とか自分の世間体とかを守るのに。」
Crown「……あのー、そこに生徒の為とかそういう意識は……」
満「いやぁ、あの校長にそれは無いでしょww 現場の深刻な事情を細かく観察せず一方的にグループワークを増やせとか言い出す奴だよ?ww 生徒の為なんていう聖人君子な事を考えている訳がないじゃないかww(※嘲笑)」
Crown「は、ははは……(※苦笑)」

満「……ところで、此処の校長の事は若干さて置きの話になるんだけどさ……Crownくんは『責任の追及』とか『法的な処罰』とかを『色々な意味で便利な言葉だな』って思った事、ない?」
Crown「えっ? ……いや、特には……そういうのって、普通の事だと思いますし……。」
満「ふーん……そっかぁ。」
Crown「……違うんですか?」
満「ん?」
Crown「……藤咲先生は、違うんですか? そういうのを、その……便利な言葉だなって、思った事があるんですか?」
満「……まぁ、あるよ? と言っても、僕が使う上での話ではないんだけどね。そもそも、僕にはそういう言葉を使う機会なんて特には無いし。」
Crown「えっと、それって……?」
満「……ねぇCrownくん、人が他者に対して責任の追及を行ったり法的な処罰が下される事を望んだりするのって、どんな時だか分かる?」
Crown「それは……自分や身近な人が犯罪やそれに近い事の被害者になってしまった時、ですかね?」
満「うん、それは最もな答えだね。……じゃあ、それを小さな子供でも分かる様な簡単な言葉に置き換えたらどういう感じになるか、分かる?」
Crown「簡単な言葉……うーん……」
満「アハハ、逆に難しかったかな?」
Crown「うぅ、スミマセン……」
満「別に謝る事は無いよww 代わりに僕が自分で答えてあげるから大丈夫だって。あのね……僕はそれを『自分や自分の仲間が別の誰かに苦しめられた時』だと思っているんだ。」
Crown「それは……確かに、それっぽい気がしますね。」
満「でしょ? 犯罪やそれに類する行為の『被害者』っていうのは、簡潔に言うと『誰かに苦しめられた人』なんだよ。それで、此処からが肝心な所なんだけど……」
Crown「(藤咲先生は、一体何を言おうとして……)」

満「……責任の追及とか法的な処罰とか、そういう言葉は要するに『自分を苦しめたお前が苦しまないなんて赦さない』という『報復の意志』を『お綺麗に提示する為の言葉』なんじゃないか? ……って、僕は思うんだ。」

Crown「……え? それは、えっと……」
満「……あぁ、僕には犯罪者や何らかの加害者の援護をする気なんて全く無い、という事は先に言っておくよ? だって、何らかの理不尽な罪の被害者は確かに救済されるべきだし、その為なら加害者は存分に苦しむべきだし……だから、僕は別に責任の追及や法的な処罰の必要性を否定したり嫌ったりする気は無いんだ。……そこは、間違えないでね?」
Crown「え、でも、それならなんでそんな、便利な言葉だなんて言い方……」
満「うーん、だって……そういう言葉や行動って『根源は所詮皆同じである事の証拠』だと思うし……だからこそ、自分達は常識的に正しく理性的だ、と言わんばかりにお綺麗ぶっている事が気に入らない……と思う時は正直言えば少しだけある、という事を僕は否定できないんだよね。」
Crown「……ご、ごめんなさい、僕、藤咲先生の言いたい事がイマイチ分からな」
満「つまりはさ、どれだけ理知的に言っても『報復願望なのは同じでしょ?』って話だよ。だって『自分を苦しめた奴を苦しめ返したい、と感じている』という部分は所詮同じ事なのにさ、責任とか法的とか言えればそれは常識的な正義の行いとして賛美されて、一方でそれを言える立場や機会を持てなかった者の同じは非常識で間違った凶行として糾弾される事になる……それって、なんだか不公平だよね? 所詮、根源は同じ報復願望――『復讐の意思』であり『自分を害して苦しめた誰かを苦しめ返したい』という『反撃の欲望』に基づいているんだよ? それなのに……どうして前者だけ賛美されたり、或いは『前者でも良かった筈の事が前者に入れてもらえなかったりする』事が多々あるのか……ねぇ、不思議だと思わない?」
Crown「えっ、と……ごめんなさい、分からないです……。」
満「……アハハ、まぁコレは分からなくても困る事じゃないし、僕も分かって貰えると思って言った訳なんかじゃないからそれでも構わないよww ただ……」
Crown「ただ……?」

満「……責任や法律といった理性的に見える知的な言葉の薄皮をたった1枚だけでも剥いでしまえば、その下にある『根源的感情』は正常も異常も常識も非常識も正解も間違いも全て併せて『全人類共通』と呼べるかもしれないモノである……って事はなんだか不思議で不可解で、だけど……そう考えたら、僕も『少し気が軽くなる程度には嗤えて来るかもしれない』な、と思ってね。」

Crown「……。」
満「ま、そんな訳だから……要は、誰だって自分らしく行動すれば良いんだよ、って話かな。勿論、便利な言葉を使われなくて済む善良な範囲で、という前提はあるけどね!ww(※妙に笑顔)」
Crown「ハ、ハイ……。」
満「あっ、それとさっき『全人類共通』って言ったけど……Searchちゃんだけは『別枠』だから……ねぇ?」
Crown「そ、そうですね、ハハ……(そういう言い方、怖いからやめてよぉ……!)」


登場人物:
Crown=White (校長の様子に関して聞いただけなのに自身を異質で異物な異端だと内心で自称するヤベェ奴の長話に付き合わされてしまった少し不憫な奴)
藤咲 満 (自分の中身はこの人間社会にとって正に『異物』だろう、と自認している色々とヤベェ奴。しかし『だからこそ思う事』も幾らかある様で……?)
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