第1話:新たなる闇と新たなる戦士
それが始まったのは、キャッシュデータの反乱の終息から約一ヶ月の月日が流れた頃の事である。
ある日の午後の事。
熱斗は、ここ最近ずっと研究室に籠もってばかりの祐一朗に着替えなどの日用品を届ける為、右手に大きな鞄を持ちながら、メイルとデカオを引き連れて科学省へとやって来ていた。
正面ゲートを通って敷地内に入り、奥にあるほぼ長方形の建物の中に入ると、顔馴染みになった受付嬢が二人、微笑を浮かべながら熱斗達に小さく頭を下げてくる。
それを視界に入れた熱斗達は、自動扉が背後で閉まるのを感じながら、受付嬢達がいるカウンターへと歩み寄り、受付嬢達と同じように小さく頭を下げた。
そして右からメイル、熱斗、デカオの順番で受付のカウンター前に並んで立ち、中央にいる熱斗が受付嬢へ要件を告げる。
「こんにちは、お姉さん。今日はパパに荷物を届けに来たんだけど……」
「光博士なら、クロスフュージョン関係の実験室にいらっしゃいますよ。」
熱斗が要件を告げると、受付嬢はそれが熱斗の父親――光 祐一朗の所在を訊いているのだと察し、その所在を教えてくれた。
受付嬢は熱斗の顔も、熱斗が祐一朗の息子である事もしっかり覚えているのだ。
微笑みながら施設の奥のエレベーターに手を向ける受付嬢に、熱斗も微笑しながら簡単に礼を言う。
「わかったよ、ありがとうお姉さん。それじゃあ。」
そしてサヨナラの挨拶のように軽く手を振りながら、熱斗は受付と受付嬢から視線を外し、エレベーターに向けて歩きだした。
熱斗が歩きだしたのを見て、デカオが急ぎ足でそれに続き、メイルは丁寧に受付嬢へ一礼してからそれに続く。
受付を離れ、奥のエレベーターに乗る為に進む廊下は静かで、熱斗はこういうものを平穏と言い、これが本来あるべき科学省の姿なのだろうなとぼんやり考える。
そこへ、熱斗の背後を歩くデカオが何やらポンポンと肩を軽く叩いてきて、熱斗は歩みを進めながらもそれに振り向いた。
デカオは何やらワクワクと楽しそうな顔をしている。
その笑顔の意味が分からない熱斗はデカオに問いかけた。
「なんだよ? デカオ。」
「なぁなぁ、クロスフュージョン関係の実験室にいるって事はクロスフュージョンを研究してるんだろ? いよいよクロスフュージョンが一般化してくんのか?」
どうやらデカオの笑顔の意味は、祐一朗が現在行っている研究への期待、つまり自分もクロスフュージョン出来る時代が来るのではないかという期待感から来ていたらしい。
かねてから自身とガッツマンのクロスフュージョンを熱望していたデカオだ、誰も彼もがクロスフュージョンを使えるようになる事への期待は人一倍強いのだろう。
しかし、デカオとガッツマンにその素質があまりない事を覚えている熱斗は小さく苦笑し、助けと同意を求めるようにメイルに視線を向けた。
メイルもその時の事をきちんと覚えているらしく、小さな苦笑が返ってくる。
その時の事、というのはキャッシュデータの反乱よりも前の更に前、デューオという名の地球外ネットナビが地球を破壊するかしないかの審判を人類へ下すとしていて、世界にアステロイドの脅威がばらまかれつつあった時の事である。
その時デカオは熱斗を手助けしたいという思いから科学省を訪れ、祐一朗及び名人との交渉の末、名人からクロスフュージョンのチャンスを与えられていた。
しかし肝心のアステロイドとの戦闘時、デカオはガッツマンとのシンクロ率の問題からクロスフュージョンに失敗、結局その出番をメイルに譲る事になるという悲しい結果を迎えているのだ。
デカオ自身は、デューオにより地球が一度破壊されてその後また再生された時に、デューオやアステロイドに関する記憶が消されてしまっているのでそれを覚えていないようだが、その例外である十三人の戦士と二人の科学者の中に属する熱斗とメイルはその事をまだ覚えている。
つまり、熱斗もメイルも、デカオとガッツマンはあまり過度な期待を持つべきではないのでは? と密かに思っているのだ。
とはいっても、それをそのままデカオに言っても理解や納得は得られないだろうし、夢を持つのは誰でも自由だからその夢を壊してしまうのは悪い気がする熱斗は出来るだけ笑顔になろうと努力する。
「あ、あー……そうだな、そういう時代もいつか来るかもな。」
少し歯切れの悪い調子で答えた熱斗と、それを苦笑しながら見守るメイルを交互に見て、デカオは何かに薄っすら気付いたような、熱斗は何かをはぐらかしていると感づいたような表情を見せる。
そして少し不機嫌になって、熱斗を確実に疑っている表情になったデカオが、何だよその微妙な言い方は、と熱斗に追求しようと思い、熱斗の服の襟を掴んで熱斗の歩みを止めさせようとした丁度その時、熱斗達三人はエレベーターの前に到着し、デカオが襟を掴むまでもなく熱斗は歩みを止めた。
エレベーターの上部にあるエレベーターの現在位置を知らせるパネルを見ると、どうやらエレベーターは上の階から下の階へと下がっている途中らしい。
熱斗は一度止めた足をもう一度動かしてエレベーターに近付き、エレベーター右横のパネルの上を向いた矢印をタッチする。
エレベーターは熱斗達以外に呼び止める者がいないのか、上部のパネルの電光掲示は一気に下ってきているのが分かる早さでその数字を変えていく。
ある日の午後の事。
熱斗は、ここ最近ずっと研究室に籠もってばかりの祐一朗に着替えなどの日用品を届ける為、右手に大きな鞄を持ちながら、メイルとデカオを引き連れて科学省へとやって来ていた。
正面ゲートを通って敷地内に入り、奥にあるほぼ長方形の建物の中に入ると、顔馴染みになった受付嬢が二人、微笑を浮かべながら熱斗達に小さく頭を下げてくる。
それを視界に入れた熱斗達は、自動扉が背後で閉まるのを感じながら、受付嬢達がいるカウンターへと歩み寄り、受付嬢達と同じように小さく頭を下げた。
そして右からメイル、熱斗、デカオの順番で受付のカウンター前に並んで立ち、中央にいる熱斗が受付嬢へ要件を告げる。
「こんにちは、お姉さん。今日はパパに荷物を届けに来たんだけど……」
「光博士なら、クロスフュージョン関係の実験室にいらっしゃいますよ。」
熱斗が要件を告げると、受付嬢はそれが熱斗の父親――光 祐一朗の所在を訊いているのだと察し、その所在を教えてくれた。
受付嬢は熱斗の顔も、熱斗が祐一朗の息子である事もしっかり覚えているのだ。
微笑みながら施設の奥のエレベーターに手を向ける受付嬢に、熱斗も微笑しながら簡単に礼を言う。
「わかったよ、ありがとうお姉さん。それじゃあ。」
そしてサヨナラの挨拶のように軽く手を振りながら、熱斗は受付と受付嬢から視線を外し、エレベーターに向けて歩きだした。
熱斗が歩きだしたのを見て、デカオが急ぎ足でそれに続き、メイルは丁寧に受付嬢へ一礼してからそれに続く。
受付を離れ、奥のエレベーターに乗る為に進む廊下は静かで、熱斗はこういうものを平穏と言い、これが本来あるべき科学省の姿なのだろうなとぼんやり考える。
そこへ、熱斗の背後を歩くデカオが何やらポンポンと肩を軽く叩いてきて、熱斗は歩みを進めながらもそれに振り向いた。
デカオは何やらワクワクと楽しそうな顔をしている。
その笑顔の意味が分からない熱斗はデカオに問いかけた。
「なんだよ? デカオ。」
「なぁなぁ、クロスフュージョン関係の実験室にいるって事はクロスフュージョンを研究してるんだろ? いよいよクロスフュージョンが一般化してくんのか?」
どうやらデカオの笑顔の意味は、祐一朗が現在行っている研究への期待、つまり自分もクロスフュージョン出来る時代が来るのではないかという期待感から来ていたらしい。
かねてから自身とガッツマンのクロスフュージョンを熱望していたデカオだ、誰も彼もがクロスフュージョンを使えるようになる事への期待は人一倍強いのだろう。
しかし、デカオとガッツマンにその素質があまりない事を覚えている熱斗は小さく苦笑し、助けと同意を求めるようにメイルに視線を向けた。
メイルもその時の事をきちんと覚えているらしく、小さな苦笑が返ってくる。
その時の事、というのはキャッシュデータの反乱よりも前の更に前、デューオという名の地球外ネットナビが地球を破壊するかしないかの審判を人類へ下すとしていて、世界にアステロイドの脅威がばらまかれつつあった時の事である。
その時デカオは熱斗を手助けしたいという思いから科学省を訪れ、祐一朗及び名人との交渉の末、名人からクロスフュージョンのチャンスを与えられていた。
しかし肝心のアステロイドとの戦闘時、デカオはガッツマンとのシンクロ率の問題からクロスフュージョンに失敗、結局その出番をメイルに譲る事になるという悲しい結果を迎えているのだ。
デカオ自身は、デューオにより地球が一度破壊されてその後また再生された時に、デューオやアステロイドに関する記憶が消されてしまっているのでそれを覚えていないようだが、その例外である十三人の戦士と二人の科学者の中に属する熱斗とメイルはその事をまだ覚えている。
つまり、熱斗もメイルも、デカオとガッツマンはあまり過度な期待を持つべきではないのでは? と密かに思っているのだ。
とはいっても、それをそのままデカオに言っても理解や納得は得られないだろうし、夢を持つのは誰でも自由だからその夢を壊してしまうのは悪い気がする熱斗は出来るだけ笑顔になろうと努力する。
「あ、あー……そうだな、そういう時代もいつか来るかもな。」
少し歯切れの悪い調子で答えた熱斗と、それを苦笑しながら見守るメイルを交互に見て、デカオは何かに薄っすら気付いたような、熱斗は何かをはぐらかしていると感づいたような表情を見せる。
そして少し不機嫌になって、熱斗を確実に疑っている表情になったデカオが、何だよその微妙な言い方は、と熱斗に追求しようと思い、熱斗の服の襟を掴んで熱斗の歩みを止めさせようとした丁度その時、熱斗達三人はエレベーターの前に到着し、デカオが襟を掴むまでもなく熱斗は歩みを止めた。
エレベーターの上部にあるエレベーターの現在位置を知らせるパネルを見ると、どうやらエレベーターは上の階から下の階へと下がっている途中らしい。
熱斗は一度止めた足をもう一度動かしてエレベーターに近付き、エレベーター右横のパネルの上を向いた矢印をタッチする。
エレベーターは熱斗達以外に呼び止める者がいないのか、上部のパネルの電光掲示は一気に下ってきているのが分かる早さでその数字を変えていく。
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