第1話:新たなる闇と新たなる戦士
エレベーターに乗り込んで下の階へと下がり、指令室のある階でエレベーターを降りる。
そして先ほどはガルーに邪魔をされた道を今度は何にも邪魔されずに通って、自動ドアをくぐれば其処はもう指令室の中だ。
熱斗が指令室の中に入ると、一番にメイルとデカオが駆け寄ってきて、その後ろから岬がゆっくりと歩いてきた。
デカオは何故か楽しそうな顔をしているし、メイルはいつも通り心配そうな顔をしている。
「熱斗、お疲れ様、怪我は無い?」
メイルに訊かれて熱斗は首の僅かな傷の事を思い出したが、言ってもメイルに心配をかけるだけだろうと思って黙っておく事にした。
そしてメイルに怪我は無い事だけを告げると、熱斗はデカオに向き直って問いかける。
「んで、何なんだよ? ロックマンのそっくりさんって。」
「なんかとにかくスゲー奴なんだよ! ぱてーきらあびーてぃーとかいう力でプログラムアドバンスが二つになったりよう!」
「……何言ってんのか全然わかんねぇよ。」
デカオはそのロックマンのそっくりさんとやらを凄いと言う割には何が凄いのかしっかり覚えてはいないらしく、熱斗はデカオでは話にならないと思ってメイルと岬に視線を向けた。
メイルは苦笑するだけで何も話してくれようとしないので、熱斗は岬に視線を向ける。
岬は熱斗の視線を受けて状況の説明を求められている事を察知し、デカオの代わりにその時の状況を話し始めた。
「君達がクロスフュージョン実験室で戦っていた時、俺達は科学省の電脳で戦っていただろう? でも、結局やや劣勢になっちゃってね、君達が戻ってくるまで持ちこたえられるかどうかってなった時、デカオくんの言うロックマンのそっくりさん、ロックマンによく似た少女型ナビが現れて、ウイルスをデリートしてくれたんだ。それで、その中には俺達が聞いた事が無い単語があって、それがデカオくんが言おうとした事、“パティキュラアビリティ”さ。」
「パティキュラアビリティ? それってどういう意味?」
「それは俺にも分からなくってね、光博士なら何か知ってるかな? この世で一番ナビに詳しいのは君のお父さんだからね。」
頭を軽く掻きながら困った顔でそう言った岬に、熱斗は「そうなんだ。」と相槌を打ってから祐一朗へ視線を向けた。
祐一朗は何やら名人と話しているようだが、その様子はただの雑談と言うよりは何か重要な事を話している様なピリピリとした雰囲気が感じられる。
そしてふと熱斗が指令室の巨大モニターを見ると、そこには先ほどデカオと岬が言っていた、ロックマンそっくりの少女ナビ、の姿を写した画像が。
「え、これが岬さんの言ってた……」
「僕にそっくりの女の子……かな? 本当によく似てるというか、ほとんど僕だよね?」
そのナビの姿は髪型以外の全てがロックマンと寸分狂わず同じであり、熱斗はダークロックマンとは別のもう一人のロックマンを見ている様な気分になった。
おそらく、熱斗の肩の上でモニターを見詰めるロックマンも同じような気持ちであろう。
気になる、このナビの正体が異常に気になる、そう思った熱斗は祐一朗にその事について訊いてみようかと思い、もう一度視線を祐一朗と名人に向けた。
祐一朗と名人はもう会話を終えたようで、祐一朗が何処かへ退席しようとしているのか、丁度熱斗の居る方向に向けて歩いてくる。
熱斗は祐一朗を呼びとめた。
「ねぇパパ、あの画面に映ってるナビの事、何か知らない?」
「……。」
祐一朗はしばらくの間無言で何も答えようとしなかったが、やがてゆっくりとこう言った。
「……ごめんな、熱斗。私も知らないんだ……。」
その返事にどこか歯切れの悪いものを感じて、熱斗は更なる追及という選択肢を選ぼうとしたが、熱斗が更に何かを訊く前に祐一朗はその場を離れ、指令室から出ていってしまう。
開いた自動ドアの向こうに進む背中を追い掛けようかどうか熱斗は少し迷ったが、どうにも今の祐一朗は追い掛けても無駄……と言うよりも、追い掛けてはいけない様な気がして、熱斗はその背を見送るだけに留めておいた。
自動ドアが閉じると、メイルとデカオが近づいてくる。
「今日は大変だったわね。そろそろ帰りましょっか?」
「ガッツマンのメンテナンスもしてやりたいしな、そろそろ帰ろうぜ?」
どうやら二人ともそれなりの疲労を感じているらしく、そろそろ帰らないかと熱斗に向けて提案してきた。
熱斗も疲労は感じているので帰りたい気持ちが無い訳ではないが、どうしてもあのモニターに映ったロックマンそっくりの少女ナビと、それから、科学省に来て初めにすれ違った人物の事が気になって仕方が無い。
熱斗は仕事を言い訳にして自分だけの残る事も考えたが、そうすればおそらくメイルとデカオも残りたがるのは目に見えているし、仕事を言い訳にした所で自分に書類仕事ができる訳でもないし、と思い、今日はこのまま二人と一緒に帰ろうと決めた。
「あぁ、そうだな、帰ろうか。」
「正面ゲートまで送っていくよ、それじゃあ行こう。」
メイルとデカオに自分も帰るという意思表示をすると、岬が正面ゲートまで見送ってくれると言いだした。
熱斗達は「ありがとう。」と言って頷き、先ほどの祐一朗と同じように自動ドアを通って廊下に出る。
指令室には、名人だけが残された。
残された名人は、何やら祐一朗と同じぐらい難しい顔でモニターを見ているのであった。
一方、熱斗達よりも先に会議室を後にして、自分の研究室に戻ってきていた祐一朗は、ドアを丁寧にロックすると、普段使っているパソコンとは別のノートパソコンを取り出してその電源をつけた。
現在の最新モデルより六型程度古いそのパソコンを起動すると、祐一朗はその中の一つのフォルダをダブルクリックして開く。
開かれたフォルダの中身は、画像と動画とテキストデータだ。
そして祐一朗はその中の一つの画像を開く、その画像には――。
「……生きていたんだな、ロンナ……。」
先ほどの指令室のモニターに映っていたロックマンによく似た少女型ナビが、電子の檻の中で独り、ペイントソフトを使って遊んでいる様子が写っていた。
Continued on next story.
そして先ほどはガルーに邪魔をされた道を今度は何にも邪魔されずに通って、自動ドアをくぐれば其処はもう指令室の中だ。
熱斗が指令室の中に入ると、一番にメイルとデカオが駆け寄ってきて、その後ろから岬がゆっくりと歩いてきた。
デカオは何故か楽しそうな顔をしているし、メイルはいつも通り心配そうな顔をしている。
「熱斗、お疲れ様、怪我は無い?」
メイルに訊かれて熱斗は首の僅かな傷の事を思い出したが、言ってもメイルに心配をかけるだけだろうと思って黙っておく事にした。
そしてメイルに怪我は無い事だけを告げると、熱斗はデカオに向き直って問いかける。
「んで、何なんだよ? ロックマンのそっくりさんって。」
「なんかとにかくスゲー奴なんだよ! ぱてーきらあびーてぃーとかいう力でプログラムアドバンスが二つになったりよう!」
「……何言ってんのか全然わかんねぇよ。」
デカオはそのロックマンのそっくりさんとやらを凄いと言う割には何が凄いのかしっかり覚えてはいないらしく、熱斗はデカオでは話にならないと思ってメイルと岬に視線を向けた。
メイルは苦笑するだけで何も話してくれようとしないので、熱斗は岬に視線を向ける。
岬は熱斗の視線を受けて状況の説明を求められている事を察知し、デカオの代わりにその時の状況を話し始めた。
「君達がクロスフュージョン実験室で戦っていた時、俺達は科学省の電脳で戦っていただろう? でも、結局やや劣勢になっちゃってね、君達が戻ってくるまで持ちこたえられるかどうかってなった時、デカオくんの言うロックマンのそっくりさん、ロックマンによく似た少女型ナビが現れて、ウイルスをデリートしてくれたんだ。それで、その中には俺達が聞いた事が無い単語があって、それがデカオくんが言おうとした事、“パティキュラアビリティ”さ。」
「パティキュラアビリティ? それってどういう意味?」
「それは俺にも分からなくってね、光博士なら何か知ってるかな? この世で一番ナビに詳しいのは君のお父さんだからね。」
頭を軽く掻きながら困った顔でそう言った岬に、熱斗は「そうなんだ。」と相槌を打ってから祐一朗へ視線を向けた。
祐一朗は何やら名人と話しているようだが、その様子はただの雑談と言うよりは何か重要な事を話している様なピリピリとした雰囲気が感じられる。
そしてふと熱斗が指令室の巨大モニターを見ると、そこには先ほどデカオと岬が言っていた、ロックマンそっくりの少女ナビ、の姿を写した画像が。
「え、これが岬さんの言ってた……」
「僕にそっくりの女の子……かな? 本当によく似てるというか、ほとんど僕だよね?」
そのナビの姿は髪型以外の全てがロックマンと寸分狂わず同じであり、熱斗はダークロックマンとは別のもう一人のロックマンを見ている様な気分になった。
おそらく、熱斗の肩の上でモニターを見詰めるロックマンも同じような気持ちであろう。
気になる、このナビの正体が異常に気になる、そう思った熱斗は祐一朗にその事について訊いてみようかと思い、もう一度視線を祐一朗と名人に向けた。
祐一朗と名人はもう会話を終えたようで、祐一朗が何処かへ退席しようとしているのか、丁度熱斗の居る方向に向けて歩いてくる。
熱斗は祐一朗を呼びとめた。
「ねぇパパ、あの画面に映ってるナビの事、何か知らない?」
「……。」
祐一朗はしばらくの間無言で何も答えようとしなかったが、やがてゆっくりとこう言った。
「……ごめんな、熱斗。私も知らないんだ……。」
その返事にどこか歯切れの悪いものを感じて、熱斗は更なる追及という選択肢を選ぼうとしたが、熱斗が更に何かを訊く前に祐一朗はその場を離れ、指令室から出ていってしまう。
開いた自動ドアの向こうに進む背中を追い掛けようかどうか熱斗は少し迷ったが、どうにも今の祐一朗は追い掛けても無駄……と言うよりも、追い掛けてはいけない様な気がして、熱斗はその背を見送るだけに留めておいた。
自動ドアが閉じると、メイルとデカオが近づいてくる。
「今日は大変だったわね。そろそろ帰りましょっか?」
「ガッツマンのメンテナンスもしてやりたいしな、そろそろ帰ろうぜ?」
どうやら二人ともそれなりの疲労を感じているらしく、そろそろ帰らないかと熱斗に向けて提案してきた。
熱斗も疲労は感じているので帰りたい気持ちが無い訳ではないが、どうしてもあのモニターに映ったロックマンそっくりの少女ナビと、それから、科学省に来て初めにすれ違った人物の事が気になって仕方が無い。
熱斗は仕事を言い訳にして自分だけの残る事も考えたが、そうすればおそらくメイルとデカオも残りたがるのは目に見えているし、仕事を言い訳にした所で自分に書類仕事ができる訳でもないし、と思い、今日はこのまま二人と一緒に帰ろうと決めた。
「あぁ、そうだな、帰ろうか。」
「正面ゲートまで送っていくよ、それじゃあ行こう。」
メイルとデカオに自分も帰るという意思表示をすると、岬が正面ゲートまで見送ってくれると言いだした。
熱斗達は「ありがとう。」と言って頷き、先ほどの祐一朗と同じように自動ドアを通って廊下に出る。
指令室には、名人だけが残された。
残された名人は、何やら祐一朗と同じぐらい難しい顔でモニターを見ているのであった。
一方、熱斗達よりも先に会議室を後にして、自分の研究室に戻ってきていた祐一朗は、ドアを丁寧にロックすると、普段使っているパソコンとは別のノートパソコンを取り出してその電源をつけた。
現在の最新モデルより六型程度古いそのパソコンを起動すると、祐一朗はその中の一つのフォルダをダブルクリックして開く。
開かれたフォルダの中身は、画像と動画とテキストデータだ。
そして祐一朗はその中の一つの画像を開く、その画像には――。
「……生きていたんだな、ロンナ……。」
先ほどの指令室のモニターに映っていたロックマンによく似た少女型ナビが、電子の檻の中で独り、ペイントソフトを使って遊んでいる様子が写っていた。
Continued on next story.