第1話:新たなる闇と新たなる戦士

指令室前方の巨大モニターにアップで映し出されたネットナビは、ほとんどのパーツがロックマンと完全一致しており、果てには胸のナビマークすらロックマンと同じ模様を表示していた。
しかしその一方で、本来短く飛び出ているだけのハズの黒髪はふんわりと長く、ロックマンには見えない前髪がメットの隙間から少量垂れているのが見える。
その僅かな違いだけが、メイル達にそのナビがロックマンではない事を告げていた。

困惑して思わずウイルスと闘う手が止まるロール達に、その隙をついて増殖したウイルス達が総攻撃を開始しようとした。
サーキラーの照準がロールに合わさり、メットールの衝撃波がガッツマンを狙って進み、センボンの棘がプリズマンを狙って飛び出す。
ロール達はすぐにそれに気付いたが、だからと言って回避行動を取る事も出来ず、攻撃が当たる事を覚悟してぎゅっと目を瞑った。
だが、其処へそれらの攻撃が到達するよりも早くあの青いネットナビが降り立ち、

「バトルチップ、『バリア200』!」

通常のバリアよりも二段階程強いバリア、すなわちバリア200を使ってそれらの攻撃からロール達を完全に守った。
その声といつまでたっても訪れない痛みに驚いて目を開けたロールは、自分のすぐ横にあの青い謎のナビが立っている事に気がつく。
間近で見るとそれは更にロックマンにしか見えないと同時に、あと少しの所でロックマンには見えなくて、ロールはウイルスの総攻撃よりもそのナビの存在に驚いていた。
ガッツマンやプリズマンも、バリア200を支えるその青いナビを驚いた様子で見詰めている。
やがてウイルス達の総攻撃が終わると、青いナビはバリアを解除し、特にウイルスが溜まっている方向を向いて両手を掲げ、

「バトルチップ、『リュウセイグン』!」

と叫んだ。
次の瞬間、天井に大きな宇宙のような穴が現れ、そこから隕石が次々と降り注ぎ、ウイルス達の多くを一気にデリートし、その数を半数まで減らした。
特に上空で待機していたクモンペ達はこのリュウセイグンの攻撃であらかたデリートされたらしく、あとは地を這う、もしくは地に近い場所にいるウイルス達だけとなる。
その光景が色々と信じ難くて呆然とするロール達の前で、青いネットナビは更に信じられない行動を起こし始めた。

「バトルチップ、『ソード』! 『ワイドソード』! 『ロングソード』!」

青いナビが三枚のバトルチップの名前を口にすると、青いナビの右手がソードに、左手がワイドソードに変わり、そしてその二つがまばゆく光り出した。
これはプログラムアドバンスだ、と直感したロール達は青いナビからやや離れ、その成り行きを見守る。
青いナビは光り輝く両腕のソードを頭上に掲げると、その光が合わさって出来た一本の巨大なソードを握りしめ、更にロール達が聞いた事の無い単語を口にした。

「パティキュラアビリティ、デュアルプログラムアドバンス!」

青いナビがそう唱えると、それまで青いナビが持っていた巨大なソードの幅が伸び始める。
これから何が起こると言うのかと緊張して見守るロール達の前で、ソードの幅は伸び、やがて細胞分裂のように中央にくびれができ始め、最終的には二つに分かれた。
プログラムアドバンス自体は今となってはメイルですら使った事があるおなじみの戦法の為、ロール達がそこまで驚く事は無い、が、その後に青いナビが唱えた言葉とその結果――デュアルプログラムアドバンスという技らしきものとドリームソードが二刀になったという結果はロールもガッツマンもプリズマンもメイルもデカオも岬も名人も初めて見るもので、皆言葉が出ないほど驚くことしかできなかった。
やはり祐一朗だけが、何かに勘付いているような険しい表情で画面を見詰めている。
メイル達全員の視線を受けながら、青いナビは二刀のドリームソードを掲げ、そして自分の目の前で腕を交差させたと思ったら、一気に、

「デュアル、ドリームソード!!」

と叫びながら、交差させた腕を一気に百八十度開いて前方のウイルスを一掃した。
ウイルスが半数以上一掃された事でウイルスの転送ルートの解析の妨害が減り、その隙に名人と祐一朗はそのルートの入り口を特定する。

「あった! あそこだ!」

名人が何処からウイルスが転送されているのかを突き止め、その場所を画面の端に表示する。
それを見たメイルがロールに転送ゲートを破壊しろと指示を飛ばそうとしたその時、それまでロール達に背を向けていた青いナビがくるりと後ろへ振り返り、ニコッと笑ってから勢い良く跳躍した。
その跳躍の行きつく先にあるのは先ほど名人が見つけたウイルスの転送ゲートだ。

「あの子、あれを壊すつもり?」
「かも、しれないな。」

メイルの疑問には岬が答えた。
青いナビは転送ゲートの近くの床にスタッと軽く着地すると、右腕をロックバスターそっくりのバスターに変え、その銃口にエネルギーをチャージし始める。
キュイィィィィィイ……と音を立てて明るい光――エネルギーが溜まっていく、それが最大値に達した時、青いナビは言った。

「チャージショット!」

その声と同時に青いナビの右腕のバスターからショッキングピンクの閃光が放たれ、空間を歪めたようにゆらゆらと波打っていた転送ゲートに直撃し、そのゲートを壊して封鎖した。
ゲートが完全に壊れると青いナビはロール達のいる地上に向けて大きく手を振って見せる。
どうやら、ゲートは壊れた事を教えてくれているようだ。
どうしていいか分からないロールとガッツマンとプリズマンだったが、一応助けてくれたのだからそれなりの感謝はすべきか、と思い、自分達も同じように手を振っておいた。

と、そこへロール達の背後にまだ数匹残っていたウイルス達――主にガルーが姿を現し、ロール達へ飛びかかり噛みつこうとして、それに気付いたロールが「キャアッ!」と短い悲鳴をあげる。
するとそれまで笑顔で手を振っていた青いナビの表情が一気に真剣に戻り、青いナビは床を蹴ってロールとウイルスの間をめがけて跳躍した。
そのスピードは、チップの補助など無いと言うのにエリアスチールの速さにも負けない、まるで弾丸のようなスピードで、即座にロールとウイルスの間に割り入った青いナビはいつの間にか変形していた両手――形が少し特殊なのでおそらくこのナビ特有の標準装備と思われるソードでウイルスを切り裂き、ロールを守った。
呆然とするロールに、青いナビが振り返り尋ねる。

「大丈夫?」

その声は少年というよりも少女のもので、髪の長さも合わせてロール達はこのナビが少年ではなく少女である事にようやく気がついた。
青い少女ナビの表情はロックマンそっくりの笑顔になっていて、ロールはやや戸惑いながらも青い少女ナビに礼を言う。

「あ、ありがとう……。」
「どういたしまして。それじゃあ、私行かなきゃ。」

青い少女ナビはロールとガッツマンとプリズマンの顔を一通り見回すと、そう言って三人から離れた。
おそらくプラグアウトする気なのだろう、とそれを呆然と見守っていたロール達の背後に、突如現実世界と電脳世界を繋ぐ画面が現れそこに祐一朗の顔が映る。

「待ってくれ! 君は、」

しかし少女ナビはそれには構わずに……いや、それに一瞬だけ少し寂しげで、でも嬉しそうな笑顔を向けた後、そのままプラグアウトして行ってしまった。
少女ナビの姿が見えなくなって、祐一朗は何処かショックを受けたような顔をしている。
メイルとデカオと岬はそんな祐一朗を不思議そうに見詰め、ロールとガッツマンとプリズマンも祐一朗の映った画面を不思議そうに見詰めているのであった。
12/15ページ