第1話:新たなる闇と新たなる戦士

さて、メイル達が指令室で謎のナビの登場に驚きを隠せずにいた頃、熱斗とロックマンは紫色をした謎の女性型ネットナビ――ヴァイアストと対峙していた訳だが、此方はどうなっただろうか。

「私の名はヴァイアスト……崇高なる復讐者の使者よ。」

謎のナビ、ヴァイアストはそう言うとクロスフュージョンロックマン――熱斗に右腕の銃口を向けてきた。
撃たれると思った熱斗は咄嗟にバトルチップを発動させる。

「『メットガード』!」

瞬時に現れた巨大なヘルメット――メットガードの陰に隠れた熱斗を、先ほどの小さく数の多い銃弾が襲う。
それらはメットガードにいくつもいくつもぶつかり、ガンガンガンガンと金属を叩いた時の音をさせては消えていく。
やがて銃弾がメットガードに当たる音が聞こえなくなったので、銃弾が切れたかと思った熱斗はメットガードを解除したが、すぐにそれが失敗だった事に気がついて焦る。
ヴァイアストの右手の銃口が赤紫色に輝いている、あれは、おそらく、自分とロックマンで言うチャージショット、つまり先ほど廊下の壁をぶち抜いた超強力な銃弾だ、と気付いた熱斗はあえて自分から実験室を飛び出て廊下に降り立ち、先ほど開けられた穴を背にして立った。
やがてヴァイアストの右腕の銃口から先ほどの小さな銃弾とは比べ物にならないまばゆい閃光が飛び出す、その瞬間熱斗はあえて背後の穴から宙に身を投げ出し、そのショットを避ける。
宙に投げ出された熱斗の身体はそのまま地面に激突するかと思いきや、熱斗はショットが遠くへ消えた事を確認すると、地面に落ちるよりも早く背中のジェットバーニアを起動して空中にとどまり、廊下の壁にあいた穴から再び科学省館内に入った。
ヴァイアストは未だクロスフュージョン関係の実験室の中にいる、このナビをどうにか倒し、これ以上の破壊活動を防がなくては、と、熱斗は気を引き締めて扉の穴から実験室に入った。
勿論、インビジブルをもう一度使用しておく事も忘れない。
熱斗が室内に戻ると、ヴァイアストは既に壊れたパソコンやコンバーターを修理不可能なまでに破壊している最中で、両手の指先から細いレーザーをだして周囲を切り刻んでいる。

「止めろ! これ以上壊すな!」

インビジブルが切れた熱斗はヴァイアストの目の前に姿を現しながらそう言ったが、ヴァイアストはフゥ、と小さな溜息を吐いたかと思うと、目の前に現れた熱斗の腹部を赤紫色のハイヒールで蹴り上げた。
ネットナビにしては地味だが人間にはとてもよく効く攻撃に、熱斗がゲホッと咳にも呻き声にも聞こえる声を漏らす。
だが熱斗はそこで怯まず自分の腹部に当たっているヴァイアストのハイヒールの足を掴み、

「バトルチップっ、『エレキサークル』っ!!」

自分の周囲に電気の輪を発生させるエレキサークル2を使用した。
ヴァイアストはすぐに熱斗の手と身体を右足から振り払おうとするも一歩遅く、エレキサークルの電気をモロにその身体へ浴びる。
ぐっ、とヴァイアストが小さく唸る声が聞こえたが、これで勝てたと思うほどの悲鳴には程遠い。
熱斗はヴァイアストの脚を離していくらかの距離を取ると、右手を前方に掲げてその形を変形させる。

「バトルチップ、『バルカン』! いっけぇぇええ!」

熱斗の声と同時にバルカン砲は回転を始め、その銃弾をヴァイアストに命中させ続けた。
しかし熱斗が思っていた程の悲鳴は聞こえない、どころかヴァイアストから悲鳴は全く聞こえない。
おかしい、どうして悲鳴が聞こえない? と思う熱斗の右腕のバルカンの銃弾が尽きた時、砂煙の中から現れたヴァイアストは何と無傷で、熱斗は何かゾッとする悪寒を感じた。
コイツはただのネットナビじゃない、何かがおかしい、そう思った時、ヴァイアストが悠然と口を開いた。

「貴方は光 祐一朗の息子だったわね? なかなかやるわね、そこそこのダメージを受けてしまったわ。でも――」

ヴァイアストの周囲の空気が急に紫色に輝き始め、熱斗は何が起こるのかと緊張し、一歩後ろに下がりながら右手をロックバスターに変えた。
それを見たヴァイアストがそれまで無表情だった顔を邪悪な笑みに歪める。
何だ、何が始まろうとしている、このナビは何を隠し持っている!? と緊張感の高まる熱斗の前で、ヴァイアストはその力を爆発させた。

「はあああああああああああああっ!!」

女らしいのに地獄の底から響くような重みのあるヴァイアストの咆哮が室内に響く。
その簡単には言い表わしきれないプレッシャーに、熱斗は逃走さえも考えつつその視線をヴァイアストに向けていた。
そして気付く、ヴァイアストの周囲の紫色が徐々にその色を黒に変え、靄のような不安定な形から炎のような確実な形にその性質を変えている事に。
そこに至ってようやく、熱斗はそれが“ダークオーラ”である事に気が付き、このオーラを吸収された後では勝ち目はないかもしれないと思い、焦って右腕をメガキャノンに変えた。
右腕をメガキャノンに変えた熱斗は即座にその砲弾をヴァイアストに向けて撃ったが、今回もやはり砂煙が立ち上るだけでヴァイアストの悲鳴は聞こえない。
これは、結構ヤバいかもな、と覚悟して、熱斗は砂煙が晴れるのを待つ。
するとその砂煙を突き破るように、邪悪な笑みを浮かべたヴァイアストが右手を紫色のソードに変えた状態で熱斗の方へと突っ込んできた。

「うわあっ!?」

反応が僅かに遅れた熱斗の首(喉)をヴァイアストのソードが浅く切り裂く。
幸い血が出る程ではなかったが、普段の戦闘ではなかなか切れないはずのスーツは確かに斬られていて、熱斗は一瞬の油断が死につながるかもしれない事を覚悟する。
熱斗の方へと突っ込んできたヴァイアストはそのまま熱斗の頭上を通り抜け廊下に出た。
そして即座に振り向くと、今度は実験室の方向に向けて、また熱斗へと突進してくる。
熱斗は思い切って右腕と左腕をそれぞれロングソードとワイドソードに変えると、ヴァイアストが振り上げたソードを正面から受け止めた。
ガキンッとソード同士がぶつかる音がして、ヴァイアストの邪悪な笑みが熱斗の目前に迫る。

「あら、正気かしら? 私のソードを正面から受け止めるなんて。」

ヴァイアストの言う通り、これはあまり得策ではなかったのかもしれない。
熱斗のソードを押す力ととヴァイアストのソードを押す力は僅差でヴァイアストの方が上に見え、熱斗はソードを二刀使っていると言うのに明らかにギリギリだと言いたげな表情でヴァイアストのソードを押し返していた。
このままでは斬られてしまう、そう感じた熱斗は咄嗟にバトルチップを使った。

「ば、バトルチップ、『エリアスチール』!」

熱斗の姿がヴァイアストの目の前から消え、少し離れた場所に現れる。
ヴァイアストはすぐさま熱斗が新たに現れた場所に視線を向け、ソードを掲げて突進してきた。
そして熱斗はヴァイアストのソードを今度は受け止めるのではなく跳ね返す。
強力な一刀と無難な二刀流の戦いの幕が開いた。
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