第1話:新たなる闇と新たなる戦士

「熱斗! クロスフュージョン実験室に行ってあのナビを倒してくれ!」
「分かった! 行ってくる!」

祐一朗に指示されると、熱斗はすぐさま走り出し、開いた自動ドアから指令室を後にした。
先ほどとは違い追い掛けてくる仲間がいない為、熱斗は全力で素早く走る。
そしてそこに止まったままのエレベーターに駆け込むと、クロスフュージョン関係の実験室がある階のボタンを押して扉を閉じた。
エレベーターが上に向かって動き出す。
幸い電気系統はまだ壊されてはいないようだ、と熱斗は少しだけホッとしながらも、でもそれだってこのままではいつ壊されるか分からない! と危機感を持ち、ウイルスの襲撃に備えて右手をロックバスターに変える。
やがて、エレベーターはクロスフュージョン関係の実験室がある階に到着し、扉が開いた。
少しずつ開く視界から、熱斗は紫色のネットナビの姿を探しながらエレベーターを降りるがそこにネットナビらしき姿は無い。

「アイツは何処だ!?」
「クロスフュージョン実験室だよ! 急ごう!」

ロックマンの声に頷いて、熱斗は走り出した。
少し走るとすぐにクロスフュージョン実験室が見えてきたが、そこで熱斗は重要なミスに気がつく。

「……って、クロスフュージョンしたままじゃ鍵開けらんないじゃん!」

先ほどこの研究室に来た時はクロスフュージョンをしていなかったからPETを認証機にかざす事で扉を開ける事ができたが、今PETはクロスフュージョンシステムの一部となっている為使う事ができない。
一旦クロスフュージョンを解くという手も無くは無いが、扉を開けた瞬間に生身のまま攻撃などくらったら……と考えるとそうもいかないだろう。
一瞬、あのナビが侵入しているなら鍵は開いているのでは? という期待も持ったが、扉横の認証機はLockの四文字を表示したままだ。

「くっそ……バトルチップ、『ソード』!」

痺れを切らした熱斗は、後で祐一朗に謝る事を覚悟で右手をソードに変え、扉を四角形に斬りつけた。
扉はなかなか分厚かったがクロスフュージョンしたネットナビのソードのキレ味には敵わなかったようで、あっけなく切り取られ、切り取られた扉は部屋の奥に向かって倒れ始めた、と思ったら、急に部屋の中から爆風が広がってきて、その爆風によって倒れかけの扉は垂直に戻ったと思ったら今度は熱斗の居る場所へ向けて倒れ始めた。

「ヤバッ!」

熱斗はそれに気付いてすぐに床を蹴って真横に跳躍し、扉の衝突を避ける。
そしてズドンと音を立てて扉が倒れたのを確認すると、室内に入ろうと四角く切り取られた扉の穴へと近付いた。
が、熱斗がその穴を潜ろうとした瞬間、突然スプレッドガンのような細かくも多数の銃弾が部屋の奥から発射され、熱斗を外へ跳ね飛ばした。

「うわあああああっ!?」

それは一つ一つはそれ程のダメージではなかったが、まとまって発射される事でそれなりの威力を発生させているようで、熱斗は勢い良く背後の壁にぶつかった。
頭がぶつかった辺りの窓ガラスにヒビが入る。
ぶつかった壁にもたれて崩れて痛みに耐える熱斗に、ロックマンが警告する。

「熱斗くん! 次が来るよ!」

どうやらロックマンは実験室内の敵が何らかのエネルギーをチャージしている事に気がついたらしい。
まだ痛みのせいで立ちあがれない熱斗はその攻撃をバトルチップで避ける事にする。

「バトルチップ、『エリアスチール』!」

熱斗がエリアスチールでその場を離れたまさにその時、先ほどの小さな銃弾とは比べ物にならないまばゆい閃光が斬られた扉の穴から飛び出してきて、そのまま廊下の壁をブチ破った。
下の階にコンクリートの塊が落ちるゴトンッという音が聞こえ、熱斗は驚いて目をぱちくりさせる。

「あ、危なかったぜ……。」

あれはさすがにくらったら不味かった、そんな緊張感から薄っすらと冷や汗をかきながら熱斗は立ちあがる。
そして少し離れた場所から改めて斬られた扉を見ると、中からは粉塵が煙のように漏れだしている。
不味い、早く中に入らなくては、と焦る熱斗はまたバトルチップの力を借りる事にした。

「バトルチップ、『インビジブル』!」

熱斗の姿は透明になり、目に見え難くなると同時に攻撃を受け流せるようになる。
それを確認して熱斗は扉に近付き、さっき開けた穴から室内に飛び込んだ。
砂煙の中からは予想通り先ほど浴びた小さなショットが沢山放たれたが、それらは全て熱斗の身体を通り抜けていく。
そして熱斗はそのショットを放っている誰かの正体を暴く為、砂煙を吹き飛ばそうとまた右腕の形を変える。

「バトルチップ、『フウジンラケット』! おりゃあああ!」

団扇型の武器になった右手で砂煙が舞う前方を一扇ぎすると、室内の様子が明らかになってくる。
倒れたパソコン、壊れたディメンショナルコンバーター、切断されたコード、そして、

「お前が今回の事件の犯人か!」

熱斗の視線の先、壊されたディメンショナルコンバーターの前には、全体的に紫色で長い青紫の髪が美しい一人の女性型ネットナビが立っていた。
紫色のネットナビの右腕はロックマンのバスターに似た筒型の装備に変わっており、熱斗はあの装備からスプレッドガンのような銃弾とチャージショットのようなショットを撃っていたのかと確信する。
熱斗の前に悠然と佇む紫色のネットナビは、しばしの間口を開かず沈黙を守っていたが、やがて小さくも聞こえやすい女の声でこう言った。

「私の名はヴァイアスト……崇高なる復讐者の使者よ。」
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