短編
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世間や愚痴、庶民からしたら味わえない珍しい体験談。トントン様が話す内容は殆ど耳を疑うような話ばかりだった。幹部たちの以外な素顔や世界的に有名な王族の素性、普段同じ屋根の下にいる人達のありとあらゆる話をしてくれた。そんな他愛もない話をしながらある人物を追って店内を探し回る。
『書記長様…少し驚き疲れました』
「すまんすまん」
早まる心臓を抑えてふとトントン様の顔を見ると、メイド間でも噂のふわっとして整った顔で微笑んでいる。思わずドキッとしたのは心の奥底に閉まっておこう。
「おい」
後ろから聞こえたのは何回も脳内で再生した、低くて透き通っている総統の声だった。が、彼の声色に少し違和感を感じたのは自分だけでなく、長年共にいるトントン様も瞬時に察知したようだった。
「グルさん、終わった?」
「ああ」
『総統様、こんにちは』
真っ直ぐ彼の目を見て微笑みかけ、頭を下げて腰を45度に曲げる。グルッペンは無表情で躊躇いなくぽんぽんと頭を撫でてきた。突然の事で理解が追いつかなかったが、暫くして顔が高騰していくのが分かった。俯いて撫でられるがままとなってしまう。
2人だけの空間を作られて完全に除外されたトントン様は、口に手を当てて咳払いをする。
「俺、先に戻った方がいい?」
『え、あ、いや』
「そうやな」
総統様のキッパリとした声でトントン様は私へニコッと笑って踵を返す。小さくなっていく背中をぼうっと眺めていると突然手を取られてどこかへ連れて行かれる。強引に、しかし私を傷つけないようにと優しく引く手は自分のより更に大きかった。
店を出ようとする総統様に勇気を振り絞って声を掛けてみる。
『そ、総統様?』
そう呼ぶと総統様はやっと振り向いてくれて、その大きな黒い瞳とぶつかる。恥ずかしくて目を逸らすのを必死に堪えてその疑問を聞いてみる。
『ど、どうなさいました?』
「お前、これから暇だろう?」
『暇ではありますが…』
「ならば付き合って欲しいところがある」
えっと声を出す間もなく総統様は私の腕を離しては踵を帰し、私もそれに続いて後を追うことにした。
店を出て総統様の目的地に着いた時には、彼が何故書記長様とではなく私と来たのかがよく分かった。
店内をぐるっと見渡すとちらほらとカップルはいるが、客のその殆どが女性であることに気づく。そして幹部達は皆男性。また彼らやメイド達で噂と言うよりもう常識である事だが、総統様は甘党なのだ。それらを一致させるとここへ連れて来たのがトントン様ではなく私だと言うことが瞬時に理解出来た。
店員に案内されて席に座ろうと椅子を引くも彼は私をソファー席へ座るように言い、さり気ない気遣いに思わずドキッとした。それを隠すように先程店員から渡されたお冷を1口喉へ通す。
「突然で済まないな」
『いえ!』
「苦い物は好きか?」
突然聞かれて目を白黒させていると、トントンと机を指で叩く。すぐさまそちらへ視線を向けるとメニュー表の1番左上にある、いかにもハイブランドな豆から作ったお高い珈琲が写真付きででかでかと載っていた。彼の意図が読めず顔を上げるとその黒い瞳と合ってしまう。
「これ、飲めるか?」
『すみません…私…』
コーヒーが苦手で…と俯くと総統様はふふっと笑を零して、丁度後ろを通り掛かったウェイトレスに声を掛ける。
「いつものやつとミルクティーを1つ」
えっと声を発する間も無くウェイトレスは注文を聞いてどこかへ消えていった。
『す、すみません…』
連れてきてもらった上に自分がモタモタしているからさっさと注文してくれた総統様に申し訳なく重い俯いていると、大好きな優しい声が降ってきた。
「どうしたのだ?」
『私がモタモタしていたせいで総統様にお手を煩わせてしまい申し訳ありません…』
「なんだそんな事か、気にするな。俺だって急に連れてきて申し訳ない」
思っていた言葉とは全く違うことを言われてはっと顔を上げると、彼は口角を上げて微笑えみ、私へ伸びてきた手は私の頬を触れて、少しばかり冷たくて身体がビクッと反応する。
「いつもとは違う化粧だな」
手の甲でスリスリと触られて恥ずかしくて顔が熱くなっていく感覚が分かる。その反応を見て彼は口角を上げ綺麗な歯を見せてにっと小悪魔のような笑みを見せた。
「似合っている」
注文していたブラックコーヒーとミルクティーが運ばれてお互い味を堪能しながら、総統様は緊張しないように気を遣ってか、私でも飲み込みやすい話をしてくれた。書記長様とは違った優しさに胸がズキッと痛くなるのを終始感じていた。
今はティータイムを終えて肩を並べて帰路につく。お金を出してもらったのにその上送ってもらうなんて烏滸がましいと言ったのに、総統様は「急に誘った上に付き合ってくれたのだ、これくらいさせてくれ」と断った。
風に吹かれて自然に彼の匂いが鼻をつく。緊張して俯いていると上から心配そうな声が降ってくる。
「どうした?」
『いえ、その…』
「?」
緊張して…と総統様に振り向くと一瞬目を丸くして、しかし直ぐに優しい眼差しへ変わった。
「全くお前ってやつは…」
『はい?』
「いいや、何でもない」
それ以上総統様は何も言わず真っ直ぐ私の家へ向かって歩き続ける。夕日に照らされて瞳に映る総統様の後ろ姿はいつも以上に立派に見えたのだった。
「速報、桔梗さん見つけた」
「は??案内しろ」
「はいはい、今ここね」
「すぐ行く。その間止めておいてくれ」
「ふぇーい」
『書記長様…少し驚き疲れました』
「すまんすまん」
早まる心臓を抑えてふとトントン様の顔を見ると、メイド間でも噂のふわっとして整った顔で微笑んでいる。思わずドキッとしたのは心の奥底に閉まっておこう。
「おい」
後ろから聞こえたのは何回も脳内で再生した、低くて透き通っている総統の声だった。が、彼の声色に少し違和感を感じたのは自分だけでなく、長年共にいるトントン様も瞬時に察知したようだった。
「グルさん、終わった?」
「ああ」
『総統様、こんにちは』
真っ直ぐ彼の目を見て微笑みかけ、頭を下げて腰を45度に曲げる。グルッペンは無表情で躊躇いなくぽんぽんと頭を撫でてきた。突然の事で理解が追いつかなかったが、暫くして顔が高騰していくのが分かった。俯いて撫でられるがままとなってしまう。
2人だけの空間を作られて完全に除外されたトントン様は、口に手を当てて咳払いをする。
「俺、先に戻った方がいい?」
『え、あ、いや』
「そうやな」
総統様のキッパリとした声でトントン様は私へニコッと笑って踵を返す。小さくなっていく背中をぼうっと眺めていると突然手を取られてどこかへ連れて行かれる。強引に、しかし私を傷つけないようにと優しく引く手は自分のより更に大きかった。
店を出ようとする総統様に勇気を振り絞って声を掛けてみる。
『そ、総統様?』
そう呼ぶと総統様はやっと振り向いてくれて、その大きな黒い瞳とぶつかる。恥ずかしくて目を逸らすのを必死に堪えてその疑問を聞いてみる。
『ど、どうなさいました?』
「お前、これから暇だろう?」
『暇ではありますが…』
「ならば付き合って欲しいところがある」
えっと声を出す間もなく総統様は私の腕を離しては踵を帰し、私もそれに続いて後を追うことにした。
店を出て総統様の目的地に着いた時には、彼が何故書記長様とではなく私と来たのかがよく分かった。
店内をぐるっと見渡すとちらほらとカップルはいるが、客のその殆どが女性であることに気づく。そして幹部達は皆男性。また彼らやメイド達で噂と言うよりもう常識である事だが、総統様は甘党なのだ。それらを一致させるとここへ連れて来たのがトントン様ではなく私だと言うことが瞬時に理解出来た。
店員に案内されて席に座ろうと椅子を引くも彼は私をソファー席へ座るように言い、さり気ない気遣いに思わずドキッとした。それを隠すように先程店員から渡されたお冷を1口喉へ通す。
「突然で済まないな」
『いえ!』
「苦い物は好きか?」
突然聞かれて目を白黒させていると、トントンと机を指で叩く。すぐさまそちらへ視線を向けるとメニュー表の1番左上にある、いかにもハイブランドな豆から作ったお高い珈琲が写真付きででかでかと載っていた。彼の意図が読めず顔を上げるとその黒い瞳と合ってしまう。
「これ、飲めるか?」
『すみません…私…』
コーヒーが苦手で…と俯くと総統様はふふっと笑を零して、丁度後ろを通り掛かったウェイトレスに声を掛ける。
「いつものやつとミルクティーを1つ」
えっと声を発する間も無くウェイトレスは注文を聞いてどこかへ消えていった。
『す、すみません…』
連れてきてもらった上に自分がモタモタしているからさっさと注文してくれた総統様に申し訳なく重い俯いていると、大好きな優しい声が降ってきた。
「どうしたのだ?」
『私がモタモタしていたせいで総統様にお手を煩わせてしまい申し訳ありません…』
「なんだそんな事か、気にするな。俺だって急に連れてきて申し訳ない」
思っていた言葉とは全く違うことを言われてはっと顔を上げると、彼は口角を上げて微笑えみ、私へ伸びてきた手は私の頬を触れて、少しばかり冷たくて身体がビクッと反応する。
「いつもとは違う化粧だな」
手の甲でスリスリと触られて恥ずかしくて顔が熱くなっていく感覚が分かる。その反応を見て彼は口角を上げ綺麗な歯を見せてにっと小悪魔のような笑みを見せた。
「似合っている」
注文していたブラックコーヒーとミルクティーが運ばれてお互い味を堪能しながら、総統様は緊張しないように気を遣ってか、私でも飲み込みやすい話をしてくれた。書記長様とは違った優しさに胸がズキッと痛くなるのを終始感じていた。
今はティータイムを終えて肩を並べて帰路につく。お金を出してもらったのにその上送ってもらうなんて烏滸がましいと言ったのに、総統様は「急に誘った上に付き合ってくれたのだ、これくらいさせてくれ」と断った。
風に吹かれて自然に彼の匂いが鼻をつく。緊張して俯いていると上から心配そうな声が降ってくる。
「どうした?」
『いえ、その…』
「?」
緊張して…と総統様に振り向くと一瞬目を丸くして、しかし直ぐに優しい眼差しへ変わった。
「全くお前ってやつは…」
『はい?』
「いいや、何でもない」
それ以上総統様は何も言わず真っ直ぐ私の家へ向かって歩き続ける。夕日に照らされて瞳に映る総統様の後ろ姿はいつも以上に立派に見えたのだった。
「速報、桔梗さん見つけた」
「は??案内しろ」
「はいはい、今ここね」
「すぐ行く。その間止めておいてくれ」
「ふぇーい」
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