晴天の空の元、平和の象徴である鳩達が大空へ飛び立って行く。静かに吹く風は人々の髪をなびかせては通り過ぎて行く。
そんな静かで平凡な日々は突然と忙しくなり、城内を行き来する者はカツカツと床を鳴らせて部屋を行き来する。
いつもと様子が違うことに感ずき、トップらの身の回りを世話する者たちも朝は早くから準備を始める。日によっては徹夜で仕事をしているものもいるのでいつも以上に気を引き締めて仕事に当たるのだ。

『ふあ〜』

大きなあくびとともに両手を広げる桔梗は固まった体を曲げるとポキポキと体が鳴った。
いつも通り仕事をするために小さなテーブルに置いているパンを食べて顔を洗い支度を済ませる。桔梗が起きる早朝はまだ夢の世界を旅している幹部達が多いので大きな音を立てずにキッチンへ向かう。

「おはよう桔梗」
『おはようございます料理長』

桔梗がキッチンへ向かうと既に料理長が朝食の1品であるスクランブルエッグを作っていた。幅には焼かれたウインナー、スライスされたトマト、塩コショウで味付け炒めたキャベツが置かれていた。そしてトースターには手のひらくらいのロールパンがいくつも並べられて焼かれている。
焼けたロールパンに刃を入れて中にウインナー、トマト、キャベツを詰めていく。その間に使用人やコック、桔梗と同じメイド達が起きてきてそれぞれ準備を始めていく。
そして日が登り始めて窓に光が差し込む頃に幹部たちが起きてきて、それぞれ寝ぼけながらも朝食を食べ始める。

「桔梗〜〜〜」
『おはようございます鬱先生様。今日は早いのですね』
「トン氏に叩き起された」

そう言って眠いのか目を細めてトントンを指を指す。指された彼も眠いのか無言でスクランブルエッグに手を伸ばて口へ運んでいた。

『(書記長様もお疲れね…)』
『鬱先生様も早めにお休みになられてくださいね。』

ありがとうと手を挙げて去る大先生を後にして再度トントンをチラ見してみると、目が合って手招きされる。招かれた桔梗はトントンの側へ行って聞くために屈むと、口を見られないように横に手を当てた。

「落ち着いたらあそこへおいで」

そう言ってさっきまで眠たそうにしていた表情とは思えないくらいに優しく微笑んだ。


















朝にやることを済ませた桔梗は言われた通り2人で呼んでいる通称の"あそこ"の部屋へ向かった。桔梗が着いた頃は既に部屋から光が漏れており、中にいる誰かを確認して部屋へ入る。

「最近ろくに構えず放ったらかして悪いな」

唐突に言われて桔梗は目を丸くして驚くが、国全体が戦争で忙しくなっているのが目に見えているし勿論桔梗も理解している。

「い、いえとんでもございません！仕方ないです…！書記長様もお忙しいですし私は大丈夫です」

いくら頭で理解していても胸の中に秘める思いに嘘は付けず、明らかに寂しさを思わせる様な笑顔をしてしまった。そんな桔梗にトントンはすぐさま桔梗を抱き寄せた。

「しょ、書記長様？！」
「この戦争が終わったらまたゆっくり話そう」
「…はい」

いきなりの事にビックリして身体を震わせたが、懐かしいトントンの匂いに安心し背中に手をそっと回す。
また平和な日々がやってくると信じて2人は自然に約束の口付けを交わした。
























『なっ！聞いてたの！？』
「ええ！早く教えなさいよ～」
『べ、別に大したことは話してないわよ・・・？』
「嘘つきなさいよ！抱き合っていたじゃない。訳ありでしょ？」
『そそそ、そんなところまで見ていたの！？』
「ええそうよ。さ、早く教えなさい？」