「僕達は必ず結ばれる運命にあるんだ」
『うんめいー？』

眩しく輝く太陽は真っ青な空に浮かび、大小ふたつ並ぶ影は美しい湖に浮かぶ。周りは花畑で囲まれて蝶が蜜を吸ってはまた違う花につき転々とする。
青色がかった長い髪の少女は隣に座る黒髪の青年に寄りかかり青い空を見ている。そんな横顔を見る青年は頬を緩めてつられるように空を眺めて目を細める。

「そう、運命だよ。これは神様が決めたことなんだ」

その時の少女はまだ幼く本当に神様が居るのだと信じて、隣の青年と共に歩み生涯争い事がなく一緒に暮らして行くのだと思っていた。








『………………』

平和で戦争など無くのどかだった隠れ里は一面戦争後の廃墟となり、所々家からは黒い煙がたち空を覆う。逃げ惑う声はどこにも無く道行く道にはバタバタと倒れている。
そんな雪隠れの里の全てを一望できる高台に1人少女が立っていた。青色がかった長い髪を下ろし、丁寧に整えられた前髪。鮮やかに蒼く透けていた瞳は徐々に光のない暗い紺色へと濁っていく。

「何だこれは」
「派手にやられてるわね」

高台の茂みから姿を現す赤い雲を催した大きい上着を着た2人は悲惨な姿となった雪隠れの里を見て吃驚する。

『…里に何か用だったの？』
「里はどうでもいい」
「貴女を迎えに来たのよ、桔梗」

"桔梗"と呼ばれる少女は一瞬目を丸くするが直ぐに目を細め改めて故郷を眺める。

『抜け忍、か』
「ああ」
「分かってくれてるなら話は早いわ。さぁ私達と共に行きましょ」

そうして後ろを向いて、来た道を歩く2人を追って"桔梗"は故郷を後にした。降り続ける雪は冷たくなった無数の肉の塊に積もっていきやがて里一面を白く染めて行くのであった。








「おはようございます、小南さん」
「おはよう鬼鮫、相変わらず早いのね」

暗くシンと静まるアジト内に1点の光が漏れる。毎朝メンバーの朝食を作っている鬼鮫は今日も変わらず野菜を刻んでいた。リズム良く刻んで鼻歌を歌っていると小南が起きてきて鬼鮫の手伝いを始める。

「小南さん、今日は何の日だと思いますか？」
「ふふ、忘れるわけないでしょ？」

メンバー分のお皿をテーブルへ運ぶ小南は今日起こるであろう出来事に何やら嬉しそうにしている。鬼鮫はそんな小南を見てつられて頬を緩めた。








日が空の1番高い位置にある頃、早くも任務を終えて帰路に着いている傀儡は、隣で呑気に鼻歌を歌う相方を無視して木陰へ寄り体を休める。

「ふーんふふん〜って旦那？？！！」

そんな声も横に流し青空を優雅に飛ぶ鳶を眺める。さっきまで人を殺めていたとは考えにくいほど雲ひとつない快晴で平和の象徴とも言えるだろう。そんな時ポツリと傀儡が何かに当たり、見てみると僅かながら傀儡であるヒルコが濡れていた。

「見て旦那！雪だ、うん！」

風花の様に雪が降り子供のようにキャッキャ騒ぐデイダラを見てサソリはふと昔の事を思い出した。雪………

「(そういえば確か今日は…)
デイダラ、さっさと帰るぞ」
「わかったよぅサソリの旦那、うん」









『…着いた！』

数年ぶりに暁のアジトに到着し1つ深呼吸をした。ペインからの長期任務で何年も帰らなかった為、所々アジトの周りの建物に大きな穴が空いていたり破壊されて崩れている。少し気になるが先に顔を合わせに行こうと思い中へ入った。
驚かせてやろうと思って音を立てずにそろりと入りリビングに入ろうと思った時、出てきた人物とぶつかってしまった。

「っと、すまないっ！？」
『わっ！？』

ぶつかった反動で後ろへ倒れそうなところを背中に腕を回されて受け止められて、背中に痛みは走らなかった。いつまでも痛みが来ないので目を開けるとそこには顔が整ったイケメンがいた。

『イ、イタチ！？』
「桔梗か！？」

数年ぶりなせいか、成長したイタチを見て目を丸くして驚いていた。イタチも久しく見ないうちにいろいろと成長して綺麗になった彼女を見て少し頬を赤らめた。

「ぶ、無事か桔梗？」
『う、うん！大丈夫よ。ありがとう』
「桔梗！久しぶりね、待っていたわよ」
『小南姉様！』

イタチを除けてリビングにいた小南を見て子供のように勢いよく抱き着く。小南は優しく頭を撫でてやり桔梗の帰還を嬉しく思った。熱いお茶を啜る鬼鮫と立ちすくむイタチは目が合い、彼女らから和みを得た。

「桔梗、戻ったか」

彼女の声が聞こえてか奥からリーダーであるペインがリビングへやってきた。彼女は小南から名残惜しくも離れて、ペインの前に立ち服装を整えて数年ぶりの帰還を報告した。




『桔梗、只今戻りました』