episode1〜転校生
Dream Name
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"貞治には気をつけろ"
私が立海を離れる前に、
蓮二くんが言った言葉を思い出す。
「やはり、そういう事か。」
乾くんは、私の顔をまじまじと見ると
また、ノートに何かを書き出した。
『え〜っと。私の顔に何か?』
これ以上、怪しまれないように
言葉を選びながら会話をする。
「いや、自信が確信に変わっただけさ。」
『えっ……?』
思ってもいなかった返しに戸惑う。
「それってどういうこと?」
不二くんが乾くんに聞いた。
「不二も薄々勘づいてはいただろ。
それから、手塚。お前もだ。」
手塚くんは黙ったまま私を見つめ、
その後確信したように視線を外した。
蓮二くん。ごめん。
私の注意力鈍かったみたい。
あんなに忠告してくれたのに……。
「何々、どういうこと〜?大石わかる?」
「いや、俺にはさっぱり……。」
半々といったところか……。
河村くんも、状況が分からないと言った様子で
食べていた手が止まっている。
今思えば、
初めから気づかれていたのかもしれない。
彼は確かに、この学校における私のデータは
1つもないと言っていた。
つまり、逆を言えば__
この学校では無い私のデータならある。
そういう事だったのだ。
「君は去年の新人戦で大活躍だった
立海大附属の__真田 (名前)。」
「えぇ?!真田 (名前)ってあの?!」
「全く似てない双子で有名な真田弦一郎の弟?」
大石くんと河村くんが驚きを隠せないでいる様子。
「えっ……じゃあ、(名前)ちゃんじゃなくて
(名前)くん……?えぇ?男の子?」
真田弦一郎の弟という情報に、
菊丸くんは頭の中がこんがらがっている様子。
「いや、それはあくまでも設定だな。試合に出るための。
双子でもなければ、男でもない。
本当の苗字までは知らなかったが、
彼女が那須 (名前)である事は事実だろう。」
そこまで見破られてたんだ。
『流石ね。完敗だわ……。』
私は真田 (名前)ではない。
一応、弦一郎とは従兄弟関係ではあるけれど
双子の兄弟というのは嘘だ。
「フフフ。俺のデータは、どんな状況にも対応出来るように
テニス以外の情報も詰まっているからな。
差し詰め、転校してきた目的は俺達の偵察だろう。」
彼は嬉しそうに眼鏡のブリッジを上げて言った。
『正解。……それで、私をどうする?
貴方達は私を立海に追い返す?』
こんなに呆気なくバレてしまうなんて。
クラスにテニス部2人もいるっていうから
身を引き締めて教室に入ったのに。
菊丸くんにはホームルームで絡まれ。
不二くんには目をつけられ。
挙句の果てには、お昼にテニス部3年大集合!
それで乾くんにバレましたって。
弦一郎に報告したら
たるんどる!って言われちゃうかな。
「そんな。追い返すなんて悲しい事、僕達はしないよ。」
いつもはにこにこと瞳を閉じている不二くんが
薄く目を開き、私の姿を捕える。
「マネージャーやってよ。テニス部の。」
は?
『何言ってるんですか……。
貴方達にとって私は敵じゃないですか。』
マネージャーになれなんて、
そんなの敵に堂々と情報盗んでくれって
言っているようなもの……。
良いんですか!!部長さん。
私は黙っている手塚くんの様子を伺う。
「敵?何のこと。僕達は同じ学園に通う仲間じゃないか。」
今度は満面の笑みで私を見つめている。
『意味わかんない……。』
ムカつくほど綺麗な笑顔。
「でも、不二の案は割とアリかもな。」
この中では常識人だと思っていた大石くんが
狂った案に賛同する。
『その前髪引っこ抜くわよ。』
「なんで?!!那須さん?!!」
『ふふ。冗談。』
引っこ抜くと言った瞬間、
前髪をガードする大石くんに思わず笑ってしまった。
『で、大石くん。その根拠は?』
なぜアリなのか。聞いてみたかった。
「あぁ、理由ね。立海もそうだろうと思うけど、
うちって部員の数が多いんだよ。生憎、
マネージャーがいない上にコーチが……60近くでね。
この前言ってたんだ。」
1人で良いから、自分の手や足になってくれる奴が欲しい。
私ももう歳。万が一自分が体調を崩した時でも、頼りになる
監督のような奴がいてくれたら気が少し楽になるんだがな。
うちの連中は癖の強いやつが多くて困る。
そう、誰かに電話で愚痴をこぼしていたのを
大石くんが丁度聞いてしまったらしい。
「球拾いやドリンク作り、洗濯などの雑務は
うちは代々1年がやってるから問題ない。
だが、部活の面倒を見るのは1年にはできないだろう?」
乾くんが大石くんの説明に補足をする。
『でも、私に指導が出来るとは限らないじゃない。』
「指導は基本的に先生がする。
先生が不在の時は、俺が部を仕切るからそこは気にするな。」
「そうそう。那須さんには、
先生のサポートをして貰うだけで大丈夫。」
例えば、竜崎先生が指示を出す代わりに、
ラケットで球出しをしたり。
先生がレギュラー陣を指導してる時に、
残りの部員の練習や休憩などの活動スケジュールを管理したり。
「今言ったのは例え話だけれど、これをやってもらうだけでも
竜崎先生の負担も大分軽くなると思うんだ。」
そう言って大石くんは優しく笑った。
なんて良い子なんだ……。
私が先生だったら嬉しくて泣いちゃうよ。
オマケに、手塚くんも案外乗り気で……。
「俺達の情報を立海に流しても構わない。
他の学校の連中も直々練習を見に来ている。
今更気にすることではないだろう。
ただ、俺達が油断せず精進すればいいだけの話だ。」
ここまで言われると悩んでしまう。
「これって、僕達にとっても
那須さんにとっても好都合だと思わない?」
気付けば、机の上にあった弁当箱や寿司桶は
綺麗に片付けられている。
お寿司美味しかったな……。
私は、空になった寿司桶を見て
呑気に別の事を考えていた。
そんな私の様子に気づいたのか
不二くんは私の近くに寄り、
すっかり長くなってしまった私の髪を耳にかける。
髪の中から出された耳を、覆うように手を添えて
そこに不二くんは顔を近づけ囁いた。
そう。それはまるで悪魔みたいな囁き。
"入部したらまた食べられるよ。タカさんのところのお寿司"
「あー!!ちょっと不二ぃ?!
(名前)ちゃんに何してんの!!」
耳にかかる息にゾワゾワとしながらも
お寿司がまた食べられるというワードに揺らぐ。
菊丸くんが騒いでいるが、
それさえも気にならない……いや。
気にすることが出来ないくらい、耳に熱が集まっていた。
「ね?」
知っててやっているのだとしたらタチが悪い。
不二くんがまた耳元で話しかける。
うあああ。もう、それ止めてくれ!!
『わ、わかりましたから!
引き受けましょうマネージャー!!』
近づく不二くんを押し返して
私はYESと返事をしてしまった。
「ふふ。ありがとう。」
楽しそうに満面の笑みを浮かべる彼は
やっぱり苦手だと、そう思った。
私が立海を離れる前に、
蓮二くんが言った言葉を思い出す。
「やはり、そういう事か。」
乾くんは、私の顔をまじまじと見ると
また、ノートに何かを書き出した。
『え〜っと。私の顔に何か?』
これ以上、怪しまれないように
言葉を選びながら会話をする。
「いや、自信が確信に変わっただけさ。」
『えっ……?』
思ってもいなかった返しに戸惑う。
「それってどういうこと?」
不二くんが乾くんに聞いた。
「不二も薄々勘づいてはいただろ。
それから、手塚。お前もだ。」
手塚くんは黙ったまま私を見つめ、
その後確信したように視線を外した。
蓮二くん。ごめん。
私の注意力鈍かったみたい。
あんなに忠告してくれたのに……。
「何々、どういうこと〜?大石わかる?」
「いや、俺にはさっぱり……。」
半々といったところか……。
河村くんも、状況が分からないと言った様子で
食べていた手が止まっている。
今思えば、
初めから気づかれていたのかもしれない。
彼は確かに、この学校における私のデータは
1つもないと言っていた。
つまり、逆を言えば__
この学校では無い私のデータならある。
そういう事だったのだ。
「君は去年の新人戦で大活躍だった
立海大附属の__真田 (名前)。」
「えぇ?!真田 (名前)ってあの?!」
「全く似てない双子で有名な真田弦一郎の弟?」
大石くんと河村くんが驚きを隠せないでいる様子。
「えっ……じゃあ、(名前)ちゃんじゃなくて
(名前)くん……?えぇ?男の子?」
真田弦一郎の弟という情報に、
菊丸くんは頭の中がこんがらがっている様子。
「いや、それはあくまでも設定だな。試合に出るための。
双子でもなければ、男でもない。
本当の苗字までは知らなかったが、
彼女が那須 (名前)である事は事実だろう。」
そこまで見破られてたんだ。
『流石ね。完敗だわ……。』
私は真田 (名前)ではない。
一応、弦一郎とは従兄弟関係ではあるけれど
双子の兄弟というのは嘘だ。
「フフフ。俺のデータは、どんな状況にも対応出来るように
テニス以外の情報も詰まっているからな。
差し詰め、転校してきた目的は俺達の偵察だろう。」
彼は嬉しそうに眼鏡のブリッジを上げて言った。
『正解。……それで、私をどうする?
貴方達は私を立海に追い返す?』
こんなに呆気なくバレてしまうなんて。
クラスにテニス部2人もいるっていうから
身を引き締めて教室に入ったのに。
菊丸くんにはホームルームで絡まれ。
不二くんには目をつけられ。
挙句の果てには、お昼にテニス部3年大集合!
それで乾くんにバレましたって。
弦一郎に報告したら
たるんどる!って言われちゃうかな。
「そんな。追い返すなんて悲しい事、僕達はしないよ。」
いつもはにこにこと瞳を閉じている不二くんが
薄く目を開き、私の姿を捕える。
「マネージャーやってよ。テニス部の。」
は?
『何言ってるんですか……。
貴方達にとって私は敵じゃないですか。』
マネージャーになれなんて、
そんなの敵に堂々と情報盗んでくれって
言っているようなもの……。
良いんですか!!部長さん。
私は黙っている手塚くんの様子を伺う。
「敵?何のこと。僕達は同じ学園に通う仲間じゃないか。」
今度は満面の笑みで私を見つめている。
『意味わかんない……。』
ムカつくほど綺麗な笑顔。
「でも、不二の案は割とアリかもな。」
この中では常識人だと思っていた大石くんが
狂った案に賛同する。
『その前髪引っこ抜くわよ。』
「なんで?!!那須さん?!!」
『ふふ。冗談。』
引っこ抜くと言った瞬間、
前髪をガードする大石くんに思わず笑ってしまった。
『で、大石くん。その根拠は?』
なぜアリなのか。聞いてみたかった。
「あぁ、理由ね。立海もそうだろうと思うけど、
うちって部員の数が多いんだよ。生憎、
マネージャーがいない上にコーチが……60近くでね。
この前言ってたんだ。」
1人で良いから、自分の手や足になってくれる奴が欲しい。
私ももう歳。万が一自分が体調を崩した時でも、頼りになる
監督のような奴がいてくれたら気が少し楽になるんだがな。
うちの連中は癖の強いやつが多くて困る。
そう、誰かに電話で愚痴をこぼしていたのを
大石くんが丁度聞いてしまったらしい。
「球拾いやドリンク作り、洗濯などの雑務は
うちは代々1年がやってるから問題ない。
だが、部活の面倒を見るのは1年にはできないだろう?」
乾くんが大石くんの説明に補足をする。
『でも、私に指導が出来るとは限らないじゃない。』
「指導は基本的に先生がする。
先生が不在の時は、俺が部を仕切るからそこは気にするな。」
「そうそう。那須さんには、
先生のサポートをして貰うだけで大丈夫。」
例えば、竜崎先生が指示を出す代わりに、
ラケットで球出しをしたり。
先生がレギュラー陣を指導してる時に、
残りの部員の練習や休憩などの活動スケジュールを管理したり。
「今言ったのは例え話だけれど、これをやってもらうだけでも
竜崎先生の負担も大分軽くなると思うんだ。」
そう言って大石くんは優しく笑った。
なんて良い子なんだ……。
私が先生だったら嬉しくて泣いちゃうよ。
オマケに、手塚くんも案外乗り気で……。
「俺達の情報を立海に流しても構わない。
他の学校の連中も直々練習を見に来ている。
今更気にすることではないだろう。
ただ、俺達が油断せず精進すればいいだけの話だ。」
ここまで言われると悩んでしまう。
「これって、僕達にとっても
那須さんにとっても好都合だと思わない?」
気付けば、机の上にあった弁当箱や寿司桶は
綺麗に片付けられている。
お寿司美味しかったな……。
私は、空になった寿司桶を見て
呑気に別の事を考えていた。
そんな私の様子に気づいたのか
不二くんは私の近くに寄り、
すっかり長くなってしまった私の髪を耳にかける。
髪の中から出された耳を、覆うように手を添えて
そこに不二くんは顔を近づけ囁いた。
そう。それはまるで悪魔みたいな囁き。
"入部したらまた食べられるよ。タカさんのところのお寿司"
「あー!!ちょっと不二ぃ?!
(名前)ちゃんに何してんの!!」
耳にかかる息にゾワゾワとしながらも
お寿司がまた食べられるというワードに揺らぐ。
菊丸くんが騒いでいるが、
それさえも気にならない……いや。
気にすることが出来ないくらい、耳に熱が集まっていた。
「ね?」
知っててやっているのだとしたらタチが悪い。
不二くんがまた耳元で話しかける。
うあああ。もう、それ止めてくれ!!
『わ、わかりましたから!
引き受けましょうマネージャー!!』
近づく不二くんを押し返して
私はYESと返事をしてしまった。
「ふふ。ありがとう。」
楽しそうに満面の笑みを浮かべる彼は
やっぱり苦手だと、そう思った。