episode2〜務め
Dream Name
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不二くんの口車に上手く乗せられ、
マネージャーになることになった私は
学園内のテニスコートで彼らの部活を見学している。
「那須さん。
先生からマネージャーの件は、許可貰ったよ。
今日の見学は途中で帰っても大丈夫だし、
好きにしてくれて構わないって。」
折角なら、午後からの部活を
見学してみるのはどうだという大石くんの提案で
彼は先生にマネージャーのことについて話すついでに
見学の許可を貰ってきてくれた。
『私のためにわざわざありがとう。』
「いや、俺が言い始めた事だし!大丈夫だよ。
あっ……それで、手塚には伝言貰ってきて……。」
面倒見が良過ぎないか。
彼には、"縁の下の力持ち"という言葉が良く似合う。
大石くんは私に見学の件について伝えると、
今度は手塚くんに先生からの伝言を伝えていた。
「竜崎先生は、明日の遠征の件で
打ち合わせがあるから遅れるそうだ。先に始めてくれって。」
「そうか、分かった。」
伝言を聞いて状況を把握した手塚くんは、
コート内にいる部員たちに向かって指示を出す。
「各自準備運動・柔軟が終わった者から、
いつものようにウォーミングアップでグラウンド5周。
その後、2人1組のペアを組んでラリー練習。
ラリー練習が終わった後は、休憩挟んで素振り100回だ。」
部活が始まる前に私は、乾くんから練習のメモを貰っていた。
その貰ったメモを見ると、ラリー練習では
ショートラリー30回
ボレーボレーをフォアとバックで20回ずつ
サーブ&レシーブを各10回×2セット
基礎中の基礎とも言える練習メニューをやるらしい。
この乾くんのメモによると
ウォーミングアップが終わった後は
レギュラー陣は実戦に備えた別のトレーニング。
レギュラー以外の1・2年は、基礎を固めるために
さらに追加で100回素振りをしているらしい。
『へぇ。基礎トレ重視なのね、青学は。』
レギュラー陣も素振りをしていたのは意外だなぁ。
自分のフォームを確認するのには良い練習よね。
慣れてくると癖が出たりするから。
そうね……。癖は弱点にも繋がるし。
それに、立海 の雅 も
そういうの見つけるの得意だからね。
……なんだかんだ私も、男装してたのバレてたし。
『あっ……。』
そういえば忘れていた。
彼らの練習を眺めていたら、私はあることを思い出した。
それは、私の可愛い後輩。赤也のことだった。
『大丈夫かしら……。』
今頃、弦一郎に怒られてるわきっと。
ごめんね。
蓮二くんが上手くやってくれると良いんだけど……。
私によく懐いてくれた赤也は、
私が女の子だった事を知ってもなお
(名前)先輩、(名前)先輩って。
本当に可愛い後輩だよね。
そんな後輩に何も話さず、ここに来ている私は最低だ。
でも、話したら情が移ってしまって
余計に居づらくなってしまう。そんな気がした。
私の務めは、立海を勝たせること。
そんな事しなくても立海は必ず勝つなんて
弦一郎には言われてしまったけれど……。
性別を偽装し、試合に出ていたことが校内にも広まり、
私は新人戦が終わった後に
罰としてテニス部を強制退部させられた。
そして、3月の春__
私が選んだのは、転校。
転校して、別の角度から立海のテニス部の仲間を支えていこう。
そう思って、柳くんに相談した。
柳くんも最初は驚いていたし、心配してくれていたけれど、
私の気持ちが決まっていたからか、後は何も言わず
私の転校に関して前向きに考えてくれた。
今年の大会で上位に来そうな学校を
蓮二くんと2人でピックアップし、
私の知り合いが全く居ない学校を選んだ結果が、ここ。
青春学園。
知り合いが居ない方が好都合だった。
でも、その計画も一日で終了。
乾貞治恐るべしだわ。
そもそも、強制退部させられた私が
なぜ立海のためにここまでしているのか。
周りが聞いたらおかしいと思うだろう。
でも、私はそのくらい立海のテニス部を愛していた。
それと同じくらいテニス部の皆も
私のことを仲間として最後まで接してくれた。
弦一郎や蓮二くん達とは、
最後の年も皆で全国へ行くと約束していたし。
だからこそ、悔しかった。
自分だけ行けないのかって。
「(名前)ちゃん!そこのタオル取って!」
一番乗りでグラウンド5周し終えた菊丸くんに
声をかけられ、ハッとする。
いけない、今は見学中だった。
今この話を振り返るのはやめよう。
私は私のやり方で立海を支える。
そう決めてここに来たんだから。
『随分可愛いタオルだね。どうぞ。』
私は近くにあった猫の刺繍が入ったタオルを
菊丸くんに渡した。
「でしょ!これはオレのお気に入りだにゃ〜。
取ってくれてありがとう!」
タオルを受け取った菊丸くんは
額にかいた汗を拭いている。
『この後はラリー練習だよね?
さっき2年の子達がスポーツドリンク作って
持ってきてくれたから、こまめに水分補給してね。』
汗の量を見た感じ、菊丸くんは体力の消耗が激しそうだ。
これからはスタミナを付けるための
トレーニングがメインになるだろう。
「ほいほーい!なんか、いいね…!
マネージャーがいるってこんな感じなんだ〜〜!」
菊丸くんの後を追って、
次々にグラウンドを走り終えるテニス部員。
「英二、今日はいつもより早かったね。まさか……。」
「うぇ!?」
不二くんが菊丸くんのペースがいつもと違うことを指摘した。
『大丈夫ですよ。菊丸くんしっかり5周走ってました。』
ズルはしていないと、不二くんに説明する。
「えっと……。違うんだ。
そういう事じゃなくて……。」
不二くんはチラりと菊丸くんを見る。
私も釣られて菊丸くんを見ると、
彼は人差し指を口元に当ててシーっと
隠し事をする子供のようにジェスチャーしている。
……?
なんだろうか。
「なんでもないよ。僕の勘違いだったみたい。」
不二くんはニコリと笑うとタオルを取りに
その場を離れた。
そんな中、私は1人の部員の様子が気になった。
『ねぇ、君。』
「うぇ?!オレっスか?」
ツンツン頭の彼は、
私が声を掛けると驚いたように返した。
『そう。君のこと。名前は?私は那須 (名前)。』
「も、桃城武っス!」
桃城くんね。
『桃城くん、今のままだとまた足痛めるよ。』
私の言葉に、近くにいた部員達も反応する。
「な、なんで……足痛めてるって。」
『見ればわかるわよ。
右足を庇って左足に力が入りすぎている。
左足の筋肉だけ、ピクピクと僅かに動いてるでしょ。』
それに右足もまだ完治してなさそう。
怪我もまた、癖に繋がりやすい。
『今日は見学なのに、外野が口を出してごめんね。』
でも、怪我は見過ごすと大変な事になってしまうから。
「いや!大丈夫っス!」
『そう……。なら、これ借りてもいいかしら?』
私は近くにあった救急箱を指さす。
「あぁ、問題ないよ。
もしかしてテーピング出来るのかい?」
大石くんが私に聞く。
『ふふ、もちろん。よく怪我する後輩がいたんだけど、
私が代わりにやってたら出来るように。』
そのせいで本人はまだ出来た試しないけどね。赤也。
「へぇ〜。その後輩は幸せもんっスね。」
『なんで?怪我したら痛いじゃない。』
私は、桃城くんの右足を
動きやすいように調節しながらテーピングしていく。
「いや、桃が言いたいのは、そういうことじゃないと思うよ。」
大石くんの言葉に、私の頭には疑問符が浮かぶ。
「凄く楽しそうに、その後輩のこと話してたからね。」
『え?!そう?……まぁ、そっか。』
自然と顔に熱が集まる私に、
そうだよなぁ、なんて自分でも納得した。
『よし!出来たよ。』
私は、桃城くんにテーピングが終わったことを伝える。
「うわぁ!すげぇ。固定されてるのに動きやすいっス!」
『あっ、でも無理しないで。部活もあんまオススメしない。』
怪我したままの運動なんていい事ないもの。
「那須の言う通りだ。
怪我している者に、ハードな部活の
練習メニューをやらせるわけにはいかない。
明日の遠征もお前は学校で留守番だ。
まずは、怪我の治療に専念しろ。」
桃城くんが怪我していたことを知った手塚くんも
まずは休めと言っている。
……君も腕痛めてる癖によく言うよ。
私はラリー練習に入った彼らの中から
手塚くんを見てそう思った。
マネージャーになることになった私は
学園内のテニスコートで彼らの部活を見学している。
「那須さん。
先生からマネージャーの件は、許可貰ったよ。
今日の見学は途中で帰っても大丈夫だし、
好きにしてくれて構わないって。」
折角なら、午後からの部活を
見学してみるのはどうだという大石くんの提案で
彼は先生にマネージャーのことについて話すついでに
見学の許可を貰ってきてくれた。
『私のためにわざわざありがとう。』
「いや、俺が言い始めた事だし!大丈夫だよ。
あっ……それで、手塚には伝言貰ってきて……。」
面倒見が良過ぎないか。
彼には、"縁の下の力持ち"という言葉が良く似合う。
大石くんは私に見学の件について伝えると、
今度は手塚くんに先生からの伝言を伝えていた。
「竜崎先生は、明日の遠征の件で
打ち合わせがあるから遅れるそうだ。先に始めてくれって。」
「そうか、分かった。」
伝言を聞いて状況を把握した手塚くんは、
コート内にいる部員たちに向かって指示を出す。
「各自準備運動・柔軟が終わった者から、
いつものようにウォーミングアップでグラウンド5周。
その後、2人1組のペアを組んでラリー練習。
ラリー練習が終わった後は、休憩挟んで素振り100回だ。」
部活が始まる前に私は、乾くんから練習のメモを貰っていた。
その貰ったメモを見ると、ラリー練習では
ショートラリー30回
ボレーボレーをフォアとバックで20回ずつ
サーブ&レシーブを各10回×2セット
基礎中の基礎とも言える練習メニューをやるらしい。
この乾くんのメモによると
ウォーミングアップが終わった後は
レギュラー陣は実戦に備えた別のトレーニング。
レギュラー以外の1・2年は、基礎を固めるために
さらに追加で100回素振りをしているらしい。
『へぇ。基礎トレ重視なのね、青学は。』
レギュラー陣も素振りをしていたのは意外だなぁ。
自分のフォームを確認するのには良い練習よね。
慣れてくると癖が出たりするから。
そうね……。癖は弱点にも繋がるし。
それに、
そういうの見つけるの得意だからね。
……なんだかんだ私も、男装してたのバレてたし。
『あっ……。』
そういえば忘れていた。
彼らの練習を眺めていたら、私はあることを思い出した。
それは、私の可愛い後輩。赤也のことだった。
『大丈夫かしら……。』
今頃、弦一郎に怒られてるわきっと。
ごめんね。
蓮二くんが上手くやってくれると良いんだけど……。
私によく懐いてくれた赤也は、
私が女の子だった事を知ってもなお
(名前)先輩、(名前)先輩って。
本当に可愛い後輩だよね。
そんな後輩に何も話さず、ここに来ている私は最低だ。
でも、話したら情が移ってしまって
余計に居づらくなってしまう。そんな気がした。
私の務めは、立海を勝たせること。
そんな事しなくても立海は必ず勝つなんて
弦一郎には言われてしまったけれど……。
性別を偽装し、試合に出ていたことが校内にも広まり、
私は新人戦が終わった後に
罰としてテニス部を強制退部させられた。
そして、3月の春__
私が選んだのは、転校。
転校して、別の角度から立海のテニス部の仲間を支えていこう。
そう思って、柳くんに相談した。
柳くんも最初は驚いていたし、心配してくれていたけれど、
私の気持ちが決まっていたからか、後は何も言わず
私の転校に関して前向きに考えてくれた。
今年の大会で上位に来そうな学校を
蓮二くんと2人でピックアップし、
私の知り合いが全く居ない学校を選んだ結果が、ここ。
青春学園。
知り合いが居ない方が好都合だった。
でも、その計画も一日で終了。
乾貞治恐るべしだわ。
そもそも、強制退部させられた私が
なぜ立海のためにここまでしているのか。
周りが聞いたらおかしいと思うだろう。
でも、私はそのくらい立海のテニス部を愛していた。
それと同じくらいテニス部の皆も
私のことを仲間として最後まで接してくれた。
弦一郎や蓮二くん達とは、
最後の年も皆で全国へ行くと約束していたし。
だからこそ、悔しかった。
自分だけ行けないのかって。
「(名前)ちゃん!そこのタオル取って!」
一番乗りでグラウンド5周し終えた菊丸くんに
声をかけられ、ハッとする。
いけない、今は見学中だった。
今この話を振り返るのはやめよう。
私は私のやり方で立海を支える。
そう決めてここに来たんだから。
『随分可愛いタオルだね。どうぞ。』
私は近くにあった猫の刺繍が入ったタオルを
菊丸くんに渡した。
「でしょ!これはオレのお気に入りだにゃ〜。
取ってくれてありがとう!」
タオルを受け取った菊丸くんは
額にかいた汗を拭いている。
『この後はラリー練習だよね?
さっき2年の子達がスポーツドリンク作って
持ってきてくれたから、こまめに水分補給してね。』
汗の量を見た感じ、菊丸くんは体力の消耗が激しそうだ。
これからはスタミナを付けるための
トレーニングがメインになるだろう。
「ほいほーい!なんか、いいね…!
マネージャーがいるってこんな感じなんだ〜〜!」
菊丸くんの後を追って、
次々にグラウンドを走り終えるテニス部員。
「英二、今日はいつもより早かったね。まさか……。」
「うぇ!?」
不二くんが菊丸くんのペースがいつもと違うことを指摘した。
『大丈夫ですよ。菊丸くんしっかり5周走ってました。』
ズルはしていないと、不二くんに説明する。
「えっと……。違うんだ。
そういう事じゃなくて……。」
不二くんはチラりと菊丸くんを見る。
私も釣られて菊丸くんを見ると、
彼は人差し指を口元に当ててシーっと
隠し事をする子供のようにジェスチャーしている。
……?
なんだろうか。
「なんでもないよ。僕の勘違いだったみたい。」
不二くんはニコリと笑うとタオルを取りに
その場を離れた。
そんな中、私は1人の部員の様子が気になった。
『ねぇ、君。』
「うぇ?!オレっスか?」
ツンツン頭の彼は、
私が声を掛けると驚いたように返した。
『そう。君のこと。名前は?私は那須 (名前)。』
「も、桃城武っス!」
桃城くんね。
『桃城くん、今のままだとまた足痛めるよ。』
私の言葉に、近くにいた部員達も反応する。
「な、なんで……足痛めてるって。」
『見ればわかるわよ。
右足を庇って左足に力が入りすぎている。
左足の筋肉だけ、ピクピクと僅かに動いてるでしょ。』
それに右足もまだ完治してなさそう。
怪我もまた、癖に繋がりやすい。
『今日は見学なのに、外野が口を出してごめんね。』
でも、怪我は見過ごすと大変な事になってしまうから。
「いや!大丈夫っス!」
『そう……。なら、これ借りてもいいかしら?』
私は近くにあった救急箱を指さす。
「あぁ、問題ないよ。
もしかしてテーピング出来るのかい?」
大石くんが私に聞く。
『ふふ、もちろん。よく怪我する後輩がいたんだけど、
私が代わりにやってたら出来るように。』
そのせいで本人はまだ出来た試しないけどね。赤也。
「へぇ〜。その後輩は幸せもんっスね。」
『なんで?怪我したら痛いじゃない。』
私は、桃城くんの右足を
動きやすいように調節しながらテーピングしていく。
「いや、桃が言いたいのは、そういうことじゃないと思うよ。」
大石くんの言葉に、私の頭には疑問符が浮かぶ。
「凄く楽しそうに、その後輩のこと話してたからね。」
『え?!そう?……まぁ、そっか。』
自然と顔に熱が集まる私に、
そうだよなぁ、なんて自分でも納得した。
『よし!出来たよ。』
私は、桃城くんにテーピングが終わったことを伝える。
「うわぁ!すげぇ。固定されてるのに動きやすいっス!」
『あっ、でも無理しないで。部活もあんまオススメしない。』
怪我したままの運動なんていい事ないもの。
「那須の言う通りだ。
怪我している者に、ハードな部活の
練習メニューをやらせるわけにはいかない。
明日の遠征もお前は学校で留守番だ。
まずは、怪我の治療に専念しろ。」
桃城くんが怪我していたことを知った手塚くんも
まずは休めと言っている。
……君も腕痛めてる癖によく言うよ。
私はラリー練習に入った彼らの中から
手塚くんを見てそう思った。