Silence
最初にいた場所から10分くらい経っただろうか。オスカーたちは、まだ外を歩いていた。
こんなに歩くのなら転送とやらをすればいいのにとオスカーは思っていた。
だがラナは黙々と歩き続けている。
"転送してはどうですか"と言おうとした時、急にラナが振り返った。
「オスカーさん、今"転送すればいいのに"って思ったでしょう?」
オスカーはドキッとした。
まさか、心をよんだのか…?
「眉間にしわが寄ってますよ。」
ラナはニッと笑い、自分の眉間に手をやった。
「私が転送しないのには、理由があります。」
「理由…?」
「1つ目は、ここの空気を吸って欲しいから。」
ラナは両手を広げ、深呼吸してみせる。つられてオスカーも深呼吸してみた。
慣れ親しんだ街より、空気がおいしく感じる。
「2つ目はケヴィナーを見て欲しいから。3つ目は…」
そこでラナの話は中断された。
前から人が何人か歩いてくる。
ラナは険しい顔になり、さっと左手を胸元まであげると「2401までヒト2名転送お願い。」と少し緊張したような声で言った。
先程のように、一瞬で風景が変わり、オスカーたちは建物の中に移動していた。
ふとラナを見ると顔が青白く、呼吸も乱れている。
「ラナさん、大丈夫ですか?」
オスカーがラナの顔を覗き込みながら言うと、ラナはオスカーを見て苦笑し、乱れた呼吸を落ち着かせるように何度か深呼吸した。
「はなしの途中でごめんなさい、…3つ目はさっきの人達に私の居場所を知られたくなかったからです。」
「さっきの人達って…?」
遠慮がちに聞くオスカーを見て
「ここの組織の幹部で、あの人達だけが、兵士の転送記録を見ることが出来るの。」
と言いながら、今度はラナが眉間にしわを寄せた。
「プライベートで転送しても見るのよ、あの人達。」
そう言うと、ラナはまた歩き始めた。
少し歩くと大きなドアがあり、前に立つとスッと扉が開いた。
2人はドアの向こうの部屋(のようなもの)の中に入る。
「これはエレベーターです。貴方のお部屋は89階にあるので、このボタンで89と押してください。」
ラナはドアの横にあるボタンを指差した。オスカーが"89"と押してみると、勝手にドアが閉まり、10秒くらい経つと、また開いた。
「つきましたよ」
先にラナがエレベーターからおり、続いてオスカーもおりる。すると、ドアが勝手に閉まった。
「オスカーさんの部屋番号は、R-89です。顔と指紋を登録してあるので、貴方がドアに触れると開くようになっています。」
部屋に向かいながら、そう説明する。
"いつの間に顔とか指紋とかとったんだ…"そんな事を思いながら、オスカーは歩いた。
しばらくするとラナが止まり、ひとつのドアを指差し「ここです」と言ったので、試しにドアに触れてみると、本当にドアがスッと開いた。
「あの、いつ指紋とかとったんですか?」
オスカーが聞くと「秘密です」と、ラナは笑った。
部屋の中に入ってみると広く、必要なものが揃っていた。
先にここに転送された荷物は、ベッドの上にに置いてある。
その荷物の横に、黄色の洋服が置いてあるが、これはオスカーが持ってきたものではないのでラナに尋ねてみると、彼女は今思い出したかのように「これは私たちの制服です。男性は黄色で女性は青を着ています」と言った。
それからしばらくの間、ラナはあれこれ指をさして部屋の説明をしてくれるのだが、あの黒い物体の話はしようとしない。
”そういえば、自分からは話せないって言ってたっけ”
そんなことをぼんやり考えていると、ベルのような音が部屋中に響き渡った。
「いけない…!」
ラナが慌ててドアを開けると、ドアの前には男性が1人立っていた
こんなに歩くのなら転送とやらをすればいいのにとオスカーは思っていた。
だがラナは黙々と歩き続けている。
"転送してはどうですか"と言おうとした時、急にラナが振り返った。
「オスカーさん、今"転送すればいいのに"って思ったでしょう?」
オスカーはドキッとした。
まさか、心をよんだのか…?
「眉間にしわが寄ってますよ。」
ラナはニッと笑い、自分の眉間に手をやった。
「私が転送しないのには、理由があります。」
「理由…?」
「1つ目は、ここの空気を吸って欲しいから。」
ラナは両手を広げ、深呼吸してみせる。つられてオスカーも深呼吸してみた。
慣れ親しんだ街より、空気がおいしく感じる。
「2つ目はケヴィナーを見て欲しいから。3つ目は…」
そこでラナの話は中断された。
前から人が何人か歩いてくる。
ラナは険しい顔になり、さっと左手を胸元まであげると「2401までヒト2名転送お願い。」と少し緊張したような声で言った。
先程のように、一瞬で風景が変わり、オスカーたちは建物の中に移動していた。
ふとラナを見ると顔が青白く、呼吸も乱れている。
「ラナさん、大丈夫ですか?」
オスカーがラナの顔を覗き込みながら言うと、ラナはオスカーを見て苦笑し、乱れた呼吸を落ち着かせるように何度か深呼吸した。
「はなしの途中でごめんなさい、…3つ目はさっきの人達に私の居場所を知られたくなかったからです。」
「さっきの人達って…?」
遠慮がちに聞くオスカーを見て
「ここの組織の幹部で、あの人達だけが、兵士の転送記録を見ることが出来るの。」
と言いながら、今度はラナが眉間にしわを寄せた。
「プライベートで転送しても見るのよ、あの人達。」
そう言うと、ラナはまた歩き始めた。
少し歩くと大きなドアがあり、前に立つとスッと扉が開いた。
2人はドアの向こうの部屋(のようなもの)の中に入る。
「これはエレベーターです。貴方のお部屋は89階にあるので、このボタンで89と押してください。」
ラナはドアの横にあるボタンを指差した。オスカーが"89"と押してみると、勝手にドアが閉まり、10秒くらい経つと、また開いた。
「つきましたよ」
先にラナがエレベーターからおり、続いてオスカーもおりる。すると、ドアが勝手に閉まった。
「オスカーさんの部屋番号は、R-89です。顔と指紋を登録してあるので、貴方がドアに触れると開くようになっています。」
部屋に向かいながら、そう説明する。
"いつの間に顔とか指紋とかとったんだ…"そんな事を思いながら、オスカーは歩いた。
しばらくするとラナが止まり、ひとつのドアを指差し「ここです」と言ったので、試しにドアに触れてみると、本当にドアがスッと開いた。
「あの、いつ指紋とかとったんですか?」
オスカーが聞くと「秘密です」と、ラナは笑った。
部屋の中に入ってみると広く、必要なものが揃っていた。
先にここに転送された荷物は、ベッドの上にに置いてある。
その荷物の横に、黄色の洋服が置いてあるが、これはオスカーが持ってきたものではないのでラナに尋ねてみると、彼女は今思い出したかのように「これは私たちの制服です。男性は黄色で女性は青を着ています」と言った。
それからしばらくの間、ラナはあれこれ指をさして部屋の説明をしてくれるのだが、あの黒い物体の話はしようとしない。
”そういえば、自分からは話せないって言ってたっけ”
そんなことをぼんやり考えていると、ベルのような音が部屋中に響き渡った。
「いけない…!」
ラナが慌ててドアを開けると、ドアの前には男性が1人立っていた