Silence
ピピピピピ…オスカーの部屋にアラームが鳴り響く。
ああ、この日がきてしまった…。
アラームで目が覚めたオスカーは、ベッドの中で、そう思った。
あの日から一週間。
答えを出す日が来たのだ。
だが、オスカーはとっくに答えを出していた。彼は全てを知るため、兵士になる決心をしていたのだ。
両親には、あの日の夜に話をした。父は黙りこみ、母は泣いていた。
親不孝な息子だが、またあの物体がオスカーを見つけて、この家に来るくらいなら、自分はこの家を出た方がいい…そう思った。
ゆっくりベッドから出ると、いつものように部屋着のまま、下におりる。
台所では母が朝ごはんを作っていて、父は椅子に座って、母を見ていた。
「母さん、父さん、おはよう」
出来るだけ、普通に言おうとしたが、少し緊張した声が出た。
「おはよう」
父と母はオスカーに気付くと、いつものように、笑顔で応えた。
オスカーが自分の席に座ると、母親は「今日の朝ごはんはカツサンドよ」と、朝にしては重めなものを出した。
「珍しいね、いつもトーストとサラダなのに」
不思議に思ったオスカーがそう聞くと
「貴方が兵士になっても、闘いで死なないで勝てるように!大昔日本という国では勝ちたい時にカツを食べたって歴史の本に書いてあったのよ」
母親は、にっこり笑って答えた。そんな母を見て思わず泣きそうになる。
すると、目の前に座っている父が「早く食べないと、パパが食べちゃうぞ?」と言ったので、オスカーは慌ててカツサンドを食べ始めた。
これが最後の母の味かもしれない…。
そう考えずにはいられなかった。
朝ごはんを食べ終わると服を着替え、用意していた荷物を持って下におりていく。
「父さん、母さん…いってきます。」
「いってらっしゃい」
「元気でね!」
玄関で一旦荷物を置き、両親とハグをして、もう一度荷物を持つと、家を出た。
母も父も笑っていたけれど、やっぱり泣くんだろうな…。
オスカーは、そんな考えを払うかのように、パン!と頬を叩くと、自分のバイクに荷物をくくりつけ、エンジンをかけた。
ベルーサ地区までは、1時間もあれば行ける。
オスカーは深呼吸すると、ベルーサへと向かった。
自宅から40分程バイクを走らせると、街からだんだんと田舎になってきた。
そのうち建物もなくなり、まわりはだんだん木だらけになり、道も細くなっていく。
そんな道を走っていると、"ベルーサ地区"と書いてあるのが辛うじて読める、古ぼけた看板が現れた。
それから少し奥へ行くと、ついに道路が何も舗装されていない土の道になった。
ガタガタの道をさらに進むと木々の間から高くてとても頑丈そうな黒い壁が現れ、その壁の前に誰かが立っているのが見える。
オスカーがバイクのスピードをゆるめて近付くと、壁の前にいた人がこちらに気付き、手を振ってきた。
よく見るとその人は一週間前に出会った女性だった。
今日はボディースーツを着ておらず、かわりに青色の服を着ていた。
彼女より少しだけ離れた所でバイクをとめると、彼女は小走りで近付いてきた。
「お待ちしておりました!早かったですね!」
「待っていてくれてありがとうございます。…来るなら早い方がいいと思って。」
その言葉を聞いて、彼女は嬉しそうに微笑んだ。
「早速中に入りましょうか!」
バイクから荷物を外しながら彼女はそう言うのだが、壁には入り口らしきものは見当たらない。
「どうやって入るんですか?」
不思議がるオスカーを見てにっこり笑うと、彼女はこの間見た、腕時計のようなものをオスカーに見せた。そして、それに向かって「ヒト2名をA-05、バイク一台をC-37へ転送お願いします。あ、荷物はR-89へ。」と言うと、一瞬でオスカーの目に見えている風景が変わった。
目の前には見たことのないような大きな建物がたくさんあって、その建物同士をつなぐ、透明な通路のようなモノのなかには、人が数えきれない程歩いている。その人々は同じデザインの服を着ているが、隣にいる彼女は彼らとは色もカタチも違う服だった。
ふと反対側を見ると、隣にあったバイクも、彼女がバイクからおろした荷物も消えている。
キョロキョロと辺りを見回し、不安そうな顔をしているオスカーを見て、「バイクは駐輪場に転送させてもらいました。荷物は重たいので、貴方のお部屋に送りました」と、彼女は言った。
「簡単に説明させて戴きます。目の前の建物は、私達兵士の普段働いているケヴィナーという名の建物です。調査や任務を言い渡された兵士はここに集合したり会議をしたりします。1隊に人数は大体100名ほどいます。あ、大きな乗り物に乗っていきますから、その乗り物の操縦士等、色々合わせて100名ほどです。その隊員たちを束ねるリーダー、あとサブリーダーも含まれます。あと、奥には訓練所や私達専用の寮、武器庫などがあります。」
彼女は歩きながら、オスカーに説明していく。
すると、いきなり「あ!!」と、大きな声を出した。
「ど、どうしたんです?」
オスカーが恐る恐る聞く。
「私まだ自己紹介していませんでしたよね??」
「そう言えば、まだですね」
彼女は"しまった"と言いながら、自分の額を軽く叩いた。
そして、こちらを向き、「私はラナ・ローライトといいます。」と、苦笑いしながら言った。
少し驚きながら、オスカーも自己紹介をすると、ラナは"よろしくお願いします"と手を出し握手を求めたので、オスカーは彼女の手を優しく握った。
ラナは嬉しそうに笑い「まず、貴方のお部屋に案内しますね!」と言うとスタスタと歩き始めたので、オスカーは"転送じゃないのか"と若干ガッカリしながら、ラナの後に続いて歩きだした。
ああ、この日がきてしまった…。
アラームで目が覚めたオスカーは、ベッドの中で、そう思った。
あの日から一週間。
答えを出す日が来たのだ。
だが、オスカーはとっくに答えを出していた。彼は全てを知るため、兵士になる決心をしていたのだ。
両親には、あの日の夜に話をした。父は黙りこみ、母は泣いていた。
親不孝な息子だが、またあの物体がオスカーを見つけて、この家に来るくらいなら、自分はこの家を出た方がいい…そう思った。
ゆっくりベッドから出ると、いつものように部屋着のまま、下におりる。
台所では母が朝ごはんを作っていて、父は椅子に座って、母を見ていた。
「母さん、父さん、おはよう」
出来るだけ、普通に言おうとしたが、少し緊張した声が出た。
「おはよう」
父と母はオスカーに気付くと、いつものように、笑顔で応えた。
オスカーが自分の席に座ると、母親は「今日の朝ごはんはカツサンドよ」と、朝にしては重めなものを出した。
「珍しいね、いつもトーストとサラダなのに」
不思議に思ったオスカーがそう聞くと
「貴方が兵士になっても、闘いで死なないで勝てるように!大昔日本という国では勝ちたい時にカツを食べたって歴史の本に書いてあったのよ」
母親は、にっこり笑って答えた。そんな母を見て思わず泣きそうになる。
すると、目の前に座っている父が「早く食べないと、パパが食べちゃうぞ?」と言ったので、オスカーは慌ててカツサンドを食べ始めた。
これが最後の母の味かもしれない…。
そう考えずにはいられなかった。
朝ごはんを食べ終わると服を着替え、用意していた荷物を持って下におりていく。
「父さん、母さん…いってきます。」
「いってらっしゃい」
「元気でね!」
玄関で一旦荷物を置き、両親とハグをして、もう一度荷物を持つと、家を出た。
母も父も笑っていたけれど、やっぱり泣くんだろうな…。
オスカーは、そんな考えを払うかのように、パン!と頬を叩くと、自分のバイクに荷物をくくりつけ、エンジンをかけた。
ベルーサ地区までは、1時間もあれば行ける。
オスカーは深呼吸すると、ベルーサへと向かった。
自宅から40分程バイクを走らせると、街からだんだんと田舎になってきた。
そのうち建物もなくなり、まわりはだんだん木だらけになり、道も細くなっていく。
そんな道を走っていると、"ベルーサ地区"と書いてあるのが辛うじて読める、古ぼけた看板が現れた。
それから少し奥へ行くと、ついに道路が何も舗装されていない土の道になった。
ガタガタの道をさらに進むと木々の間から高くてとても頑丈そうな黒い壁が現れ、その壁の前に誰かが立っているのが見える。
オスカーがバイクのスピードをゆるめて近付くと、壁の前にいた人がこちらに気付き、手を振ってきた。
よく見るとその人は一週間前に出会った女性だった。
今日はボディースーツを着ておらず、かわりに青色の服を着ていた。
彼女より少しだけ離れた所でバイクをとめると、彼女は小走りで近付いてきた。
「お待ちしておりました!早かったですね!」
「待っていてくれてありがとうございます。…来るなら早い方がいいと思って。」
その言葉を聞いて、彼女は嬉しそうに微笑んだ。
「早速中に入りましょうか!」
バイクから荷物を外しながら彼女はそう言うのだが、壁には入り口らしきものは見当たらない。
「どうやって入るんですか?」
不思議がるオスカーを見てにっこり笑うと、彼女はこの間見た、腕時計のようなものをオスカーに見せた。そして、それに向かって「ヒト2名をA-05、バイク一台をC-37へ転送お願いします。あ、荷物はR-89へ。」と言うと、一瞬でオスカーの目に見えている風景が変わった。
目の前には見たことのないような大きな建物がたくさんあって、その建物同士をつなぐ、透明な通路のようなモノのなかには、人が数えきれない程歩いている。その人々は同じデザインの服を着ているが、隣にいる彼女は彼らとは色もカタチも違う服だった。
ふと反対側を見ると、隣にあったバイクも、彼女がバイクからおろした荷物も消えている。
キョロキョロと辺りを見回し、不安そうな顔をしているオスカーを見て、「バイクは駐輪場に転送させてもらいました。荷物は重たいので、貴方のお部屋に送りました」と、彼女は言った。
「簡単に説明させて戴きます。目の前の建物は、私達兵士の普段働いているケヴィナーという名の建物です。調査や任務を言い渡された兵士はここに集合したり会議をしたりします。1隊に人数は大体100名ほどいます。あ、大きな乗り物に乗っていきますから、その乗り物の操縦士等、色々合わせて100名ほどです。その隊員たちを束ねるリーダー、あとサブリーダーも含まれます。あと、奥には訓練所や私達専用の寮、武器庫などがあります。」
彼女は歩きながら、オスカーに説明していく。
すると、いきなり「あ!!」と、大きな声を出した。
「ど、どうしたんです?」
オスカーが恐る恐る聞く。
「私まだ自己紹介していませんでしたよね??」
「そう言えば、まだですね」
彼女は"しまった"と言いながら、自分の額を軽く叩いた。
そして、こちらを向き、「私はラナ・ローライトといいます。」と、苦笑いしながら言った。
少し驚きながら、オスカーも自己紹介をすると、ラナは"よろしくお願いします"と手を出し握手を求めたので、オスカーは彼女の手を優しく握った。
ラナは嬉しそうに笑い「まず、貴方のお部屋に案内しますね!」と言うとスタスタと歩き始めたので、オスカーは"転送じゃないのか"と若干ガッカリしながら、ラナの後に続いて歩きだした。