Silence
あの出来事から7年の月日が流れ、オスカーは19歳になった。
あの人物は誰か、あの物体は何か…。
解ることのないまま、時間だけが過ぎていた。
あれからオスカーは学校の高等部を卒業し、町にあるカフェで働いている。
相変わらず博物館の雰囲気は好きだったが、今の彼にはもっと好きな場所があった。
それは彼の働くカフェだ。
適度なボリュームで流れる音楽。
ふんわり香るコーヒーのにおい。
店長の優しい笑顔も大好きだ。
そんな場所で働けるのが、本当に嬉しかった。
ある日、いつもと同じ時間に出勤して店の前を掃除していると、スッと視界に何かが入ってきた。
お客さんかな?と顔を上げると、そこでオスカーは固まった。
彼が見たのは、あの日...7年前に見た、あの黒い物体だったのだ。
足がガクガクと震える。完全にあの日恐怖感を思い出してしまっていた。
逃げなきゃ...!!そう思うが、まるで足に根がはえたように動かない。
物体は、震えるオスカーに、じわりじわりと近寄り、あの日と同じように紐上になった。
今度こそ殺される!逃げなければ...!
だが、やはり足は言うことをきかない。
"ダメだ"
オスカーはギュッと持っていた箒を握りしめた。だが、物体はオスカーを捕まえなかった。
その前に、またドロドロになって消えたのだ。
そしてオスカーの前に、あの日と同じ黒いボディースーツを着た人間が立っていた。
「大丈夫ですか?」
"黒い人"は、オスカーにそう話しかける。その声は機械を通した声だ。
「は、はい...」
何とかその一言を言うと、オスカーは地面に座り込んでしまった。
そんな彼を見て、黒い人は膝をつき、はめていた手袋を外すと、オスカーにそっと触れた。その手からは柔らかな光が現れ、オスカーの体を包み込んだ。
すると体の震えがとまり、足にも力が戻った。そして、とても穏やかな気持ちになったのだ。
黒い人は驚くオスカーを見て彼の肩をポンと叩き「もう大丈夫、動けますよ」と言うと、立ち上がって去ろうとするので、オスカーは慌ててその人の手を掴んだ。
「あ、あの!あなたは一体何者ですか?!それにあの物体は何?!」
オスカーがそう言うと、黒い人はオスカーの手をやんわりと外し、ゆっくりとヘルメットをとった。
ヘルメットをとった黒い人を見て、オスカーは驚いた。
その人はオスカーと同い年くらいの若い女性だったからだ。
女性はしゃがみ、オスカーと目をあわせた。
「私はこの地球を守る兵士の1人です。あの物体のことは、私から教えることは出来ません。」
「兵士...?地球ではもう戦争は終わったんじゃ...?」
「それは表側の話よ。」
彼女はそう言うと、にっこりと笑った。
「貴方には、あの物体が見えるのね。それならうちの部隊に入らない?”見える人”が出て来なくて、リーダーが困ってるのよ。」
彼女はそう言うと、腰のポシェットから紙とペンを取り出し何かを書くと、それをオスカーに渡した。
「一週間後、ここに書かれている場所に来てください。全てのことを教えますが、知ったからにはうちの部隊に入隊して貰います。一週間あるんだから沢山悩めるでしょう?知るのが怖かったり兵士になるのがイヤなら来なくてもいいわ。その場合、その紙は必ず灰になるまで燃やしてくださいね。」
女性は一気にそこまで言うと立ち上がり、腕につけている時計のようなものに向かって何かを喋ると、パッと姿を消した。
オスカーは渡された紙を見る。それには住所が書いてあるだけだった。
そこは"ベルーサ"という地区で、オスカーのいる街からさほど遠くない。
兵士になりたいとはあまり思わないが、あの女性は"貴方にはあの物体が見えるのね"と言っていた。
とすると、自分には何か力があるのかもしれない。
とにかく、全てのことを知りたかった。
オスカーは深呼吸をすると立ち上がり、箒を手に店内へ入っていった。
大好きな店長に、"店をやめます"と言うために。
あの人物は誰か、あの物体は何か…。
解ることのないまま、時間だけが過ぎていた。
あれからオスカーは学校の高等部を卒業し、町にあるカフェで働いている。
相変わらず博物館の雰囲気は好きだったが、今の彼にはもっと好きな場所があった。
それは彼の働くカフェだ。
適度なボリュームで流れる音楽。
ふんわり香るコーヒーのにおい。
店長の優しい笑顔も大好きだ。
そんな場所で働けるのが、本当に嬉しかった。
ある日、いつもと同じ時間に出勤して店の前を掃除していると、スッと視界に何かが入ってきた。
お客さんかな?と顔を上げると、そこでオスカーは固まった。
彼が見たのは、あの日...7年前に見た、あの黒い物体だったのだ。
足がガクガクと震える。完全にあの日恐怖感を思い出してしまっていた。
逃げなきゃ...!!そう思うが、まるで足に根がはえたように動かない。
物体は、震えるオスカーに、じわりじわりと近寄り、あの日と同じように紐上になった。
今度こそ殺される!逃げなければ...!
だが、やはり足は言うことをきかない。
"ダメだ"
オスカーはギュッと持っていた箒を握りしめた。だが、物体はオスカーを捕まえなかった。
その前に、またドロドロになって消えたのだ。
そしてオスカーの前に、あの日と同じ黒いボディースーツを着た人間が立っていた。
「大丈夫ですか?」
"黒い人"は、オスカーにそう話しかける。その声は機械を通した声だ。
「は、はい...」
何とかその一言を言うと、オスカーは地面に座り込んでしまった。
そんな彼を見て、黒い人は膝をつき、はめていた手袋を外すと、オスカーにそっと触れた。その手からは柔らかな光が現れ、オスカーの体を包み込んだ。
すると体の震えがとまり、足にも力が戻った。そして、とても穏やかな気持ちになったのだ。
黒い人は驚くオスカーを見て彼の肩をポンと叩き「もう大丈夫、動けますよ」と言うと、立ち上がって去ろうとするので、オスカーは慌ててその人の手を掴んだ。
「あ、あの!あなたは一体何者ですか?!それにあの物体は何?!」
オスカーがそう言うと、黒い人はオスカーの手をやんわりと外し、ゆっくりとヘルメットをとった。
ヘルメットをとった黒い人を見て、オスカーは驚いた。
その人はオスカーと同い年くらいの若い女性だったからだ。
女性はしゃがみ、オスカーと目をあわせた。
「私はこの地球を守る兵士の1人です。あの物体のことは、私から教えることは出来ません。」
「兵士...?地球ではもう戦争は終わったんじゃ...?」
「それは表側の話よ。」
彼女はそう言うと、にっこりと笑った。
「貴方には、あの物体が見えるのね。それならうちの部隊に入らない?”見える人”が出て来なくて、リーダーが困ってるのよ。」
彼女はそう言うと、腰のポシェットから紙とペンを取り出し何かを書くと、それをオスカーに渡した。
「一週間後、ここに書かれている場所に来てください。全てのことを教えますが、知ったからにはうちの部隊に入隊して貰います。一週間あるんだから沢山悩めるでしょう?知るのが怖かったり兵士になるのがイヤなら来なくてもいいわ。その場合、その紙は必ず灰になるまで燃やしてくださいね。」
女性は一気にそこまで言うと立ち上がり、腕につけている時計のようなものに向かって何かを喋ると、パッと姿を消した。
オスカーは渡された紙を見る。それには住所が書いてあるだけだった。
そこは"ベルーサ"という地区で、オスカーのいる街からさほど遠くない。
兵士になりたいとはあまり思わないが、あの女性は"貴方にはあの物体が見えるのね"と言っていた。
とすると、自分には何か力があるのかもしれない。
とにかく、全てのことを知りたかった。
オスカーは深呼吸をすると立ち上がり、箒を手に店内へ入っていった。
大好きな店長に、"店をやめます"と言うために。