捨てられる前に
「そう言えば先ほど、一般人の青年とすれ違いましたが
皆さんのお知り合いですか?
私を観て酷く怯えていたので心配なのですが」
「ああ、サム君か」
レノックスが思い当たる一般人の名を挙げると
周りが一斉に騒がしくなった。
これにはトルソも驚いた。
「”愛しの””相棒””会いたい!”」
「サムが来ているのをなぜ教えてくれなかったのだ」
「こうなることが想定できてたからだ」
ため息まじりのレノックスの言葉に
拗ねたふりをするバンブルビーや抗議の声を上げるオプティマス。
「言わなきゃ良かったとは言わせないぞ」
「言わせてください、ラチェットさん」
「”大好きだ~!!”」
「うるさいぞバンブルビー!」
「……」
「小僧が来ているのか」
「あの忌々しい虫ケラが」
騒々しい周りに遠い目をするトルソとラチェット。
一向に話の輪に入ってこなかったメガトロンもサムの名が
上がっただけで寄ってくる。
名前や功績などは知っていたがここまでの影響力があったとは
知らなかったトルソは話題に出した事を心の隅で後悔した。
「サムは勇敢な奴さ。それに優しい」
「……そうでしょうね」
こっそりと耳打ちするジャズに目の前の光景を見ながら
トルソは認めざるを得なかった。
彼がオートボットとディセプティコンを繋げる架け橋に
なったのだろう、と想像をする。
「トルソもそう思うだろう!」
「何がですか」
過去の光景のシュミレーションをしていると、
薮から棒に話を振られたトルソは戸惑い聞き返す。
「サムの話だ」
「”彼の””武勇伝””聞いて””なかったとは言わせない!”」
直感的に面倒な話に巻き込まれた事を直感しながらも、
興奮気味に話す黄色と赤青を無下にはできず、
渋々話を聞くことにしたトルソは会話にテキトウな相槌を
打ちながらこの収拾をどうしようかと考えを巡らせる。
ひとしきり語り終えたオプティマスとバンブルビーは
どうだ凄いだろう!と言いたげな表情でトルソに顔を向ける。
「そうですね。素晴らしい人間であり偉大と言うことが
ひしひしと伝わってきましたよ。大切な方なのですね」
「その通りだ。トルソも彼と話してみるといい。
会話だけでは伝わらない彼の魅力が判るはずだ」
「はい。そうさせていただきます」
「”伝われ、この想い!!”」
もはやトルソの目にはバンブルビーとオプティマスが
親の偉大さを自慢する子供にしか見えなかったが、
楽しそうなので笑顔でその話を聞いていた。
「……トルソ、悪いが彼を迎えに行ってもらえるか?」
「了解しました少佐」
いよいよ収拾つかなくなりそうな空気を察知したレノックスは、
ずっと一方的に話を聞かされているトルソに助け舟を出すのもの兼ねて
サムをガレージに呼ぶよう指示を出す。
躊躇わずそれを承諾し、すぐさまガレージを飛び出して
サムが控える部屋へ向かって足早に向かうトルソ。
階段を上り、廊下に出た彼女は遠くで何やら揉めている2人を
目撃した。歩きながら、カメラをズームして確認すると
それはサムとハワードであった。
すぐに状況が良くない事を悟った彼女は、
歩行モードから走行モードに移行し、
ハワードとサムの間に割り込むように駆けつける。
